「多様な働き方」を考える03

私たちから始める、新しい働き方ー多様な働き方03

働き方の選択肢が増えてくるなかで、これからどんなふうに働いていったらいいのか。そのヒントを探るべく、働きやすい社会づくりを推進している、一般社団法人at Will Work代表理事の藤本あゆみさんにお話を伺っています。 最終回は今、注目されているワークスタイルや、働き方を変えるためにできることについてお聞きしました。

●「多様な働き方」を考える03

会社や仕事を変えなくても、働き方は見直せます

 自分らしい働き方を実現するには、色々な働き方にチャレンジしてみることが大切です。けれども、他にどんな働き方があるのか選択肢を知らないと、アプローチを変えることは難しいでしょう。ここで、いくつか事例をご紹介したいと思います。

 会社員とは違った働き方をしてみたい場合、フリーランスや独立・起業などの選択肢があります。女性に対する起業支援が活発になっていることもあって、会社を設立する、ブランドを立ち上げるなど、事業を営む女性も増えています。
 フリーランスも、これまではクリエイティブ職や士業など、才能や資格が必要なイメージがありましたが、最近では業種も広がり、総合職・事務職系のフリーランスが登場し始めました。

 また、今の仕事を続けながらダブルワークをすることもできます。副業やプロボノなどです。
 副業もITやWEBサービスの発達に伴い、バリエーションが増えてきました。最近は、収入源を増やす以外に、本業では得られない経験ができる、仕事の幅が広がるといった側面も注目されています。
 プロボノは、ラテン語で「公共善のために」を意味する「pro bono publico」から生まれた言葉。本業で得た専門的な知識やスキルを、地域の団体やNPOなどに無償で提供するボランティア活動です。副業と同じく知識や経験の幅が広がることに加え、社会貢献ができることからもこうした働き方を選ぶ人がいます。

 今、勤めている会社で新しい仕事を始めることもできます。社内プロジェクトへの応募や新規プロジェクトの立ち上げなどです。私がat Will Workを立ち上げることになったのも、前職のGoogleで関わった社内プロジェクトがきっかけでした。普段と視点を変えてみて気付くことは多いはずです。

 また、会社も仕事内容も維持したまま、仕事のやり方を変えるアプローチもあります。
 たとえば、リモートワーク。メールや電話などを活用して、社屋とは異なる場所で働くスタイルです。在宅ワークを試してみるだけでも新たな発見があるでしょうし、実家にUターンしたり、地方に移住したりして、働く環境をガラッと変えることもできます。

 それから、休暇のとり方を見直すこともできます。
「ワーケーション」をご存知ですか。これは「ワーク」と「バケーション」からなる造語で、休暇中に旅先で仕事をするワークスタイルです。長期休暇の取得を断念させないために生まれた取り組みで、この制度を利用すれば世界一周をしながら働くなんていうことも可能です。
 ほかには、仕事を一時お休みする「サバティカル」という制度もあります。これは1ヶ月〜1年ほどのまとまった休みをとり、その期間を新たな学びや体験にあてるというもの。豊かな経験を得た後は自ずと仕事への取り組み方も変わってくるでしょう。

 ここに挙げたのはほんの一例ですが、様々なアプローチがあることがお分かりいただけたと思います。これらを参考に、自分の場合はどんなことができそうか、ぜひ考えてみてください。

このひと言で、あなたの会社も動かせるかもしれません

 新しい働き方の事例を知ると、自分もやってみたいと思うものです。ですが、企業側で体制が整っていなければできないこともあります。たとえば、リモートワーク。
 その場合、既に制度が整っている企業へ転職するのも一つですし、会社内で置かれている立場や職場の状況にもよりますが、会社と話し合って、新しい働き方を始められる可能性もあります。

 会社と話し合う場合には、コツがあります。
「やりたいから、やらせてください」ではなく、「新しい働き方を始めると、自分だけではなく、会社や組織にとっても良いことがあります。上手くいくかどうか、試験的に自分が新しい働き方を始めてみます」と提案してみるのです。周りを巻き込めるなら、数人でやってもいいと思います。

 良いと言われている制度も、組織によって合う・合わないがありますし、個人にも合う・合わないがあります。本格的に人事制度をつくるとなると非常に時間がかかります。それを整備して1年後に「さあ始めましょう」となった時には、もう状況が変わっているかもしれません。ですから、テストしてみることは、あなたにとっても会社にとっても有意義なことです。
 大事なのは、テストですから、必ず結果を振り返ること。実際にやってみて良かった点や改善した方が良い点を検証します。

 働き方改革というと、根本からスタイルを変えないといけないと思われがちですが、大きく変えるとその分リスクも大きくなります。何の準備もしていないのに、いきなりビッグステップを踏む必要はありません。テストを繰り返しながら、徐々に試していけばいいんです。

自分に合った働き方は一人ひとり、本当に違います

 働き方を見直すきっかけとして、もっと簡単にできるのが「人の話を聞くこと」です。それもなるべく自分とは違う人の話を聞くこと。
 インターネットから得る情報は自分の興味の範囲に偏りがちなので、あえて全然違うものを読んでみる、直接、話を聞きに行ってみるなど、普段とは違う情報をとることを意識してみましょう。

 私たちat Will Workが毎年1回開いている「働き方を考えるカンファレンス」では、「登壇者が同じことを言わないようにする」ことを心がけています。対談をセッティングする時は、できるだけ異なる考え方の人を組み合わせます。これは、結論をつくりたくないからです。

 一つのテーマでも、色々な見方や考え方があります。違う角度からの意見をいくつも聞くことで、「自分の場合はどう考えるだろう?」と考えるきっかけにしてほしいのです。
 自分は何のために働くのか、自分らしい働き方とは何か、明確な答えを持っていなくても、色々な人の意見や考えに触れると、働き方に対する自分の価値観がみえてくると思います。

 世の中には本当に色んな考えかたがあるし、アプローチがあります。だから仕事っておもしろいし、社会って面白いし、人って面白いんです。

 “私らしい働き方”を一人ひとり、つくっていきましょう。

続きの記事<出社義務なし、働き方は自由! それでも成果が上がる会社とは?>はこちら

建材メーカーで6年間、企画・広報・宣伝を担当したのち、企業取材や家づくり・家具などの住にまつわる分野を中心に、各種WEB媒体で活動中。プライベートでは夫と2人暮らし。
これからの働き方