出社義務なし、働き方は自由! それでも成果が上がる会社とは?
訪れたのは、永田町のシェアオフィス「永田町GRID」に入居する、株式会社ベンチャー広報。古いビルをリノベーションしたスタイリッシュな空間に気分も上がります。代表取締役の野澤直人さん、そして今年2月から社員として働く井上千絵さんのお2人にお話を伺いました。前編は、実際にどんな働き方をしているのか?主に野澤さんに、会社のことについて伺いました。
自分の「困った」が起業につながった
――まず、野澤さんが「起業しよう」と思ったきっかけから教えてください。
野澤 僕はもともと小さい出版社で編集者をしていたんです。その時に送られてくるリリースを読んだり、取材依頼を受けたりするうちに、「自分ならもっと広報をうまくやれるんじゃないか」という気持ちが大きくなっていきました。それで、未経験ながらベンチャー企業の広報に転職したんです。
「やれる気がする」とはいえ完全に未経験、ベンチャー企業なので広報担当は自分ひとり。プロの力を借りようと思ってPR会社に問い合わせてみたんですが、「月100万、12カ月契約から」といった提案しかなく……発展途上のベンチャー企業には高すぎて出せません。
結局独学で猛勉強して、試行錯誤しながら7~8年ほど広報として働きました。最終的に会社が年間100件の取材を受けるまでになり、知見が溜まったところで起業しました。かつての自分が困っていたように、手頃な値段でベンチャー企業にマッチしたPR会社を作りたい、と思ったんです。それが2010年、38歳のときでした。
「会社員の時嫌だったこと」はしない
――起業当初から「自由な働き方ができる会社にしよう」と考えていたんですか?
野澤 明確に「自由な働き方」について考えていたわけではないんですが、漠然と「満員電車に乗りたくないな」「毎朝の朝礼って意味あるんだっけ?」みたいなのはありましたね。最初は会社といっても社員は自分だけでしたから、特に明確な意思もありませんでした。3年目ぐらいから社員も増えてきましたが、ルールらしいルールを決めたことはなく、基本、みんな会社には来ません。今は社員10人、男女比は3:7かな。会社員時代に「こういう働き方だったらいいのになあ」と自分が思ったことを、そのまま実践しています。
――自由出社、勤務時間の縛りがない、というのは、かなり社員を信頼していないとできないことですね。
野澤 まさにそこです。「社員を信頼する」というのは重要なキーワード。僕はアウトプットさえきちんとやってくれれば、あとはどう過ごしていてもいいと思っているんです。時間で測ることはしません。
このやり方でトラブルが発生したことは、いままでほとんどありません。他の企業でこういった働き方がうまくいかない理由としては、1、上司が部下を信頼していない。2、部下が自分の頭で考えて主体的に動けない。プロ意識が低い。3、業務のアウトプット(成果)が不明確、が主な理由だと分析しています。
時間ではない。完全に成果で評価する
――アウトプットへの評価というのは、具体的にはどうやって行うんでしょうか。
野澤 クライアントさんに満足してもらえる良いサービスを提供しているか? ということです。うちのPR契約はすべて6カ月ごとに行われるので、半年ごとに更新のタイミングが訪れます。クライアントさんは、担当者の仕事に満足してくれていれば更新してくれる。更新するか否かの継続率と、担当している案件の数が評価になります。
――わかりやすい。でも、シビアといえばシビアですね。井上さん、実際に仕事をしてみていかがですか。
井上 はい、完全に成果主義です。私はすごくこのやり方が合っていますが、向き不向きはあるだろうなと思います。自分で考えてどんどん動ける人に、この働き方は向いていると思います。
野澤 出社義務なしとはいえ、会社なので、困ったことがあったらすぐに僕や同僚などに相談してね、とみんなには言っています。優秀であればあるほど、短時間でクライアントを満足させられる。逆に、慣れない場合には長時間働きすぎてしまう人がいます。労務的にそれは良くないので、定期的に面談をするなど、細かくケアするようにはしています。
それから、新規案件を獲得するための営業とマーケティング担当は僕1人です。社員には得意なこと、本業の広報サービスの提供に集中してもらうようにしています。ありがたいことに、最近はお問い合わせを多数頂いていて、社内リソースの関係から全てを受けられないので、僕は案件のご依頼を失礼のないようにお断りするのが仕事みたいになってますけどね(笑)。
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