「多様な働き方」を考える01

私の働き方、改革する必要ある?ー多様な働き方01

"働き方改革、女性活躍の推進と、働き方について考える機会が増えています。今まさに、転職を検討している方もいるかもしれません。選択肢が急速に増えるなか、これからどう働いていったらいいのか。 ヒントを探るべく、働きやすい社会づくりの推進のためにノウハウや事例の蓄積・共有をおこなう「一般社団法人at Will Work」(以下at Will Work)代表理事の藤本あゆみさんにお話を伺いました。

働き方の選択肢がどんどん広がってきている

「副業を認める企業が増加している」「フリーランス人口が増え、経済規模は20兆円を越えた」「テレワーク・デイが設けられた」など、働き方に関する報道が活発ですね。私は様々な企業や団体、個人の事例を研究しているのですが、働き方のバリエーションが増えてきていることを感じます。

 先日は茨城県庁で時差通勤を実施することがニュースになりました。午前7時から午後1時出社まで、計9通りの時間帯から、勤務時間を選択できるようにしたのです。
こうした試みが、地方の県庁で始まっているというのがおもしろいですよね。都心の一般企業が実施すれば、ラッシュの緩和にもつながるかもしれません。

 働き方の選択肢は確実に増えてきています。
今はまだ地域や企業、個人によって温度差があり、働き方が変わってきている実感がないという方も少なくないと思います。でも、皆さんのところにも、新しい働き方が広がっていく兆しがあります。その可能性にはぜひ期待してほしいと思います。

「副業解禁になるから私も」と流行りに乗る前に、自分の生き方を、改めて考えてみてほしいと思います。

なぜ、新しい働き方が必要なの?

 なぜ今これほど働き方に対する注目が集まっているのでしょうか。
まず、人口減少が避けられないなかで、働く人が増える必要があるという事情があります。そして、労働する側も自分に合った働き方を探している。ある種、新しい働き方を求めることが“ブーム”のようになっている状況です。

 自分の経験をもっと活かしたい、能力を広げたいなど、なにか自己実現したいことがある人が働き方を変えてみるのはとても良いことです。試行錯誤しながら自分なりの働き方を見つけていくことは、その人の人生の糧にもなるでしょう。
ただ、こうしたメリットだけでなく、現状では法整備が追いついていない、企業の受け皿が整っていないなど、環境面でまだ課題があることも意識しておきましょう。

 働き方の選択肢が増えるのは歓迎すべきこと。でも、「皆がやっているから、自分も新しい働き方をしなくては」とプレッシャーや疑問を感じる必要はないと思います。働き方は人生、生き方そのもの。時流にのって何となく決める、というようなものではありませんから。
多様な働き方を認める働き方改革の一環として、政府が正社員の副業を奨励し始めています。副業を認める会社も増えていますよね。ただ、「副業で稼ぎたい」と興味をもっている人に伝えたいのが、「自分はどうして稼ぎたいんだっけ?」を考えてみてほしい、ということ。

 「もっと海外旅行に行きたいから」「周りと比べて収入が低いから」「会社以外にも居場所ややりがいを持ちたい」など理由はそれぞれでしょう。では、それは本当に副業をしないと解決できないことでしょうか。今の会社で頑張って昇進するなど、収入アップの方法は他に考えられませんか? 

 答えは一人ひとり、まったく違います。

型や枠にとらわられずに可能性を探してみよう

 私の場合は、人材業界からGoogleに異業種転職したのち、Googleを退職してat Will Workを立ち上げました。同時に、「株式会社お金のデザイン」にも参画し、正社員として働きました。その後、「お金のデザイン」からスタートアップを支援するグローバル・ベンチャーキャピタルの「Plug and Play Japan」社へ転職。ここでも正社員として働きながら、at Will Workで代表理事の仕事もしています。

 業務委託で複数の仕事をかけ持ちするフリーランスの方はいますが、正社員で複数の仕事をもつ例は多くありません。現行の労働基準法では事例が少ないなどの理由が挙げられますが、複数仕事をもつのはフリーランスだけの特権、というわけではないのです。

 私がこの働き方を始めるきっかけになったのは、以前、勤めていた「株式会社お金のデザイン」のファウンダーの一言でした。ちょうどat Will Workを立ち上げるためにGoogleを辞めた頃、「お金のデザイン」に出会って金融に対する人の価値観を変えていくような、新しいプロダクトを世に出していくことに自分も関わりたいと思ったんです。そこでファウンダーに「業務委託で手伝いたい」と話をしたら、彼はこう言いました。
「それって、君が目指す選択肢のある働き方なの?」

 at Will Workが目指すのは、多様な働き方を選択できる社会です。
「業務委託で複数の仕事をもって働いている人は既にいる。それなら、今までにない働き方を試してみるのが、君の言う『選択肢を増やす』っていうことなんじゃないの?」
 そう問われて「その通りだ」と思いました。当時、私には業務委託以外の選択肢がまったく浮かびませんでした。「正社員として『お金のデザイン』で働きながら、『at Will Work』の立ち上げもしてはどうか」と提案されて初めて、新しい可能性に気づいたんです。

 最初は「そんなことができるんだろうか」と思いました。でも、できるかできないかはやってみないと分からない。誰もやったことがないことをやってみたいという気持ちもあったし、「働き方の選択肢を増やそう」と言いながら自分が挑戦しないのもどうだろうとも思いました。

今だからこそ、さまざまな働き方を試せる

 私の場合は周りの理解と協力があり幸い上手くいきましたが、会社や個人によっては「ここまでしかできない」と、仕事の範囲に線引きされてしまうこともあります。うまく働き方の選択肢を広げられたケースと、既存の仕組みにとらわれてしまうケースとが混在しているという意味では、今は過渡期と言えると思います。

 混乱期の今は、ポジティブに捉えれば、新しい働き方をつくれるチャンスでもあります。さまざまな働き方を試せるのは今だから。新しいことを試したいという気持ちはぜひ大事にしてほしいし、心からその一歩を応援したいと思います。

続きの記事<自分らしい働き方って、何だろう ー多様な働き方02>はこちら

建材メーカーで6年間、企画・広報・宣伝を担当したのち、企業取材や家づくり・家具などの住にまつわる分野を中心に、各種WEB媒体で活動中。プライベートでは夫と2人暮らし。
これからの働き方

Pick Up

ピックアップ