今必要なのは、働き方より「遊び方改革」!極意を達人に聞いてきた

「働き方改革」法案も可決され、日本全体がもっと働きやすい社会になる…かというと、なかなかそうもいきません。「働き方改革の前に、遊び方改革が大事」と語るのは、メンタルヘルスコンサルタントで組織開発の専門家として活躍するランスタッド(株)EAP総研所長・川西由美子さん。自らも10年前から遊び方改革活動を組織コンサルタントに取り入れている、「遊び方改革」の元祖提唱者だという川西さんに聞いた、楽しく人生を生きるための考え方とは?

「働かせ方」に問題アリ

telling,編集部(以下――)最近、「働き方改革」という言葉をよく聞きますが、この言葉についてどう思われますか?

川西:そもそも、いま言われている「働き方改革」って、企業側が社員の働かせ方を考え直す、「働かせ改革」でもあると思うんですよ。
20代前半にメンタルヘルスコンサルタントとして、ある企業でストレスを抱えた方が、どのようにすれば、パフォーマンスが出るか、カウンセリングを行いました。すると、ほとんどの方が目の前の仕事をこなすのみで仕事にモチベーションや、意義を感じておらず、またプライベートでも遊ぶ時間がないという問題を抱えていることに気づいたんです。「これは個人ではなく、組織がおかしい。組織自体を直さないとだめだ」と、経営陣に提言したら、「あなたは病気になった人のケアだけをしていればいい」と。

自らも遊び方改革を実践している川西さん。エネルギッシュです!

 それで、30代半ばのときに、日本の組織を元気にする方法を学びたいと思って、フィンランドに渡りました。本当にカルチャーショックでした。ワークライフバランスが当たり前に実践されているので、「ワークライフバランス」という言葉すらなかったんです。

仕事、自分、家庭

――ええっ!そういう単語がないんですか?

川西:そうそう。しかも、「ワーク」と「ライフ」の2つではないんです。仕事、自分、家庭の3つの軸があるんです。家庭より前に自分があるからこそ、充実して仕事ができる、という考え方。16時に仕事が終わったら、かっこよくスーツを着た女性たちがバーでシャンパンを飲んでたりして。そして18時になったら切り替えてサッと家に帰るんです。
日本とはあまりにも違いますよね。それで、企業主導の働き方以前に、個人それぞれが自分のことを豊かにすることが大切なんだ! と気づいて、「正しく遊ぼう」と考えるようになったんです。

――それが、川西さんが提言している「遊び方改革」なんですね。

川西:そうです。例えば、ウキウキする予定があったら、その前って頭が冴えたりしますよね? 遊びに行く予定があったら、そのために段取りしたり、予定をやりくりして仕事を全力で終わらせようとしたり、健康管理だって気をつける。「18時以降のライフが充実してる人は、自分でいきいきと、しかも効率的に働くことができてるんです。

 そもそも何のために働いているのかといったら、「楽しく生きたいから」じゃないですか! ずっと会社にいるより、違うフィールドに遊びに行くことで視野も広がって、いい事ずくめ。日本には、「遊び方改革」が絶対に必要なんです。

周りの目をうかがってしまうときは…

――とはいえ、無駄な会議も多かったり、非効率な働き方をしている職場って、まだまだありますよね。自分の仕事が終わっていても、早く帰りづらかったり……。

川西:わかりますよ。でも、おかしいと思ったら言わなきゃ。みんな、習慣化しているものについて、ある種諦めていて何も言わない。意外と、言ったら変わることって多いんですよ。

――上司に意見するなんて、と思う人も多いかと。

川西:実は、多岐にわたった遊び方を持っている人は、芯が強くなれるんです。しっかり遊んでいる人は上司を説得できるようになる、これ本当ですよ。上司に好かれるために仕事をしているんではなくて、会社、組織を良くするために働いているんだ、という姿勢を見せていくこと。これが大事です。

あとは、会社側の意識改革も重要ですね。しっかりと情報共有して、お互いの信頼度を上げるんです。私の場合は、勤務形態は在宅勤務もOKのスーパーフレックス。以前は上司と毎月ミーティングをしていたんですが、日々の情報共有をメールや社内チャットなどで細かく行うことで、対面でのミーティングは3カ月に1回程度になりました。不安を与えないだけの情報を開示しているからこそ、信頼関係が築けていると思っています。

信頼関係が結ばれると、会議なんて必要ない。実は上司の側が、どんなことを知りたいかわかっていない人が多いんです。上司の頭の整理をしてあげることからはじめてもいいかもしれません。

――「逆マネジメント」ということですか?

川西:そのとおりです。
意見を通す時にもちょっとしたコツがあります。どうしますか? という漠然とした聞き方ではなく、イエス・ノーの2択で答えてもらう。また、こちらの意見を言うだけだと嫌がられたり、拒否されたりしてしまいます。①やりたいこと(意見) ②意見する理由 ③この意見を言う意味、の3つを伝えると、相手の頭の中も整理されます。

客先より、社内のコミュニケーションの予定を優先

――コミュニケーションを密にするために、他に気をつけるべきことはありますか?

川西:私は部下とのミーティングは、半年先くらいまで予定をおさえてしまうんです。その後にお客様とのアポを入れていきます。

――そんなに先まで! 社内のコミュニケーションは、取引先とのアポに比べて優先度が低くなりがちですが……。

川西:それはダメです。1回のコミュニケーションの重要度がわかっていないですね。そもそも、お客さんとのアポを理由にして逃げたりしている場合もあります。ちなみに、大切なのは、会議も重要ですが、仕事の進捗報告のみでなく、仕事の意味や意義、自分の考え方などを上司と密にコミュニケーションをとることが大切なんですよ。どうしてもダメな日は、事前に伝えてあとでフォローアップを受けるなど、社内の情報をとる努力を怠らないようにしてください。

続きの記事<五感を刺激して、意識を変える。「遊び方改革」の極意とは>はこちら

●川西由美子(かわにし・ゆみこ)さん
ランスタッド株式会社EAP総研所長。企業・スポーツ界、病院、学校などで「ココロの健康管理」に関するコンサルテーションを行う。企業再生・再編時に活用される手法「リチーミングコーチ」の資格をフィンランドにて取得。ストレス対策の専門家としてテレビや雑誌など多数のメディアに出演している。

朝日新聞バーティカルメディアの編集者。撮影、分析などにも携わるなんでも屋。横浜DeNAベイスターズファン。旅行が大好物で、日本縦断2回、世界一周2回経験あり。特に好きな場所は横浜、沖縄、ハワイ、軽井沢。
これからの働き方