これからの副業って?02

図書館勤務×脚本家〜古典芸能好きがつないだ仕事【副業/複業】

菅谷結さん(31)とはTwitterで知り合った。「ゆい」というアカウントのその女性のアイコンの写真は、よく整えられた髪に白い着物を着ていた。何度かメッセージをやり取りして取材を申し込んだが、いつも丁寧に返信してくれて、会う前から好感を持った。図書館で働きながら脚本家として活動している彼女に、「副業/複業」をしているワケを尋ねた。

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●これからの副業って?02

図書館勤務×脚本家〜古典芸能好きがつないだ仕事

――普段は、どんな仕事をなさっているんですか。

 区立図書館で働いています。昨年5月から現場の責任者をしていて、選書はもちろん、クレーム対応、電話対応、危機管理など、図書館にまつわるあらゆることを業務にしています。図書館職員といっても、私は公務員ではなく、図書館運営を担う民間業者の社員という立場です。

――図書館の仕事を選んだ理由は。

 大学時代に週2日ほどアルバイトをしていた流れで、図書館の仕事を始めました。

 最初に勤めた会社は、今とそんなに業務内容は変わらないのですが、人間関係のトラブルに疲れてしまって。2年で辞めました。その後、無認可保育園の先生を経験して、現在の会社に転職しました。私が一番最年少なのですが、ストレスフリーで楽しい職場ですね。

――「副業/複業」としてはどんなお仕事を?

 主に脚本家として活動していて、テレビアニメの脚本を担当していた経験があります。「うさぎのモフィ」というコットンの人形をコマ撮りしてつくるアニメで、脚本の作成から放送まで2年ぐらいかかるんです。しかも200本原案を出しても、通るのは1割程度。なかなか厳しい世界でしたが、とても勉強になりました。

――どうして脚本を書くことになったんですか。

 大学で古典文学を専攻していたこともあって、歌舞伎と落語が好きでした。アニメの脚本のお仕事をいただいたのは、大ファンだった落語家さん主催の交流会がきっかけです。元々、学生時代から趣味で小説を書いていたこともあって、交流会で知り合った映画監督の方に紹介してもらったんです。落語好きという共通点がなかったら、声をかけてもらえなかったと思います。

――歌舞伎と落語が好きだったことが、お仕事にもつながったんですね。

 それだけでなく、歌舞伎と落語の魅力をより多くの人に知ってもらいたいと、ウェブマガジンのライターとしての活動も始めましたし、ボランティアで歌舞伎教室の司会もやらせてもらっています。いずれも知り合いの方にご紹介いただいた活動ですね。

 それと、歌舞伎と落語を題材にした脚本を書いて、自主公演の朗読劇もやっています。古典芸能は敷居が高いイメージがあるので、興味を持ってもらうきっかけ作りになればいいなと。今年で3年目を迎えました。

――「副業/複業」の幅が広いですね。

 人との縁で得られたものをとにかくやってみようという状況ですが、自分としては大きく二つの軸が見えています。

複業の広がりの中に、自分なりの「軸」がある

 一つは、歌舞伎や落語といった古典をテーマにしたもの、そしてもう一つは本職である図書館の仕事に活かせるものです。欲張りかもしれませんが、同時並行でやっていきたいです。

――色々なことに挑戦している分だけ、時間の使い方も難しそうです。

 図書館の仕事は週2日休みで、土日も仕事ということが多いんです。

 実は、今、母と一緒に祖母の介護をしていて。週3日の仕事終わりと休日は施設で暮らす祖母の介護に時間を割いています。「大変だな、行きたくないな」と思っていた時期もあったのですが、今は祖母に触れることで精神的にも救われていると感じます。

 本職、書くお仕事などの副業、そして介護と、毎日分刻みで動いていますね。

――忙しいですね。身体は壊しませんか?

 2年前の夏には大学の夏期講習に参加して司書の勉強をしていたのですが、その時に、過労から重度の肺炎になってしまって、1カ月半ぐらい入院したんですね。自分の限界を考えずに行動していて、周りに迷惑をかけてしまって。

 そのことをきっかけに体調管理には気をつけています。疲れたと思ったら何もしない日もありますよ。

――ちなみに収入面についても、教えていただけますか。

 本職が手取り20万円ぐらいです。副業の収入は数万円なので、決して高くはないんです。でも、それ以上に楽しいですし、これからのキャリアにつながるのかなと思って。前向きにやっています。

――最後にこれからの展望をお聞かせください。

 本職の図書館の仕事では、館長になりたいです。33歳までには館長になって、自分ができる仕事を大きくしたい、全力を注ぎたいという思いが強くあります。

 副業に関しては、今ある仕事を誠実に続けていきたいですね。具体的な目標があるのは、朗読劇の自主公演。大きなホールで公演をやりたいなと思っています。

 これから結婚、出産など人生のライフステージが大きく変わると思うので、未知数なところも多いですが、ご縁を大切に、やりたいことをやっていきたいです。

1988年東京生まれ。慶応義塾大学文学部卒業後、朝日新聞に入社。新潟、青森、京都でも記者経験を積む。2016年11月からフリーランスで活動を始め、取材、編集、撮影をこなす。趣味はジャズダンス。
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