キレイの定義

なぜおしゃれするの?のアンサーに共感『だから私はメイクする』インタビュー

メイクするのは、おしゃれするのは誰のため?そもそもおしゃれってしなきゃいけないんだっけ?「美容」について考えていると、そんなギモンにぶち当たります。さまざまな事情でメイクやおしゃれをする女性たちをまとめた『だから私はメイクする』(柏書房)の編著者、劇団雌猫のひらりささん・かんさんのお二人にインタビューしてきました。

●キレイの定義 02

『だから私はメイクする』とは……

私たちはなんのためにメイクし、おしゃれするのか?
完璧な肌を作ることに命をかける「あだ名が「叶美香」の女」、会社の男性からうるさく言われないためにわざとシンプルな服を着る「会社では擬態する女」、自分なりの「かわいい」に近づきたい「整形しようか迷っている女」など、多様な15人の女性たちが「私がおしゃれするわけ」を寄稿した本です。「自分のため」「他人のため」「何かを探して」の3章に分かれた構成で女性たちが紹介されています――

「インターネットでは言えない話」を集めて

――まず基本的なことから教えてください。「劇団雌猫」というのはサークル名なんでしょうか?

ひらりさ: 全員平成元年生まれの女性4人でつくったサークルで、私(ひらりさ)、かん、それから今日はいないですがもぐもぐ、ユッケというメンバーがいます。みんなわりとミーハーというかオタクで、もともと自分の好きな作品の同人誌をつくってる人もいたんです。それでせっかく集まったからなにかできないかなと思って。

かん: 4人で集まって飲んでるときに、「そういやいくら貯金ある?」という話になって、「全然ないよね!」って。「オタクのお金事情ってどうなってるんだろう?」っていう話から、自分たちがお金使ってるから、まわりの人たちも使ってるんじゃないか、そういうこと聞いてみたいなあと。でもネットでは言いにくかったりする。

ひらりさ: だから「インターネットでは言えない話を教えてください」って始まったのが、「悪友vol.1 浪費」です。その後美意識、恋愛、東京をテーマにして合計4冊制作しました。「浪費」は「浪費図鑑」という書籍にもなっています。今回の『だから私はメイクする』は「悪友DX 美意識」がもとになっています。

どのエピソードを読んでも「泣いちゃう」

――「オタク」と「美意識」っていう切り口、新しいですよね。

ひらりさ: 私は少女漫画とかBLをずっと読み漁っていたのですが、いわゆる「時間もお金も二次元にそそいで、自分の身なりは気にしないオタク」という典型的なイメージにそった女子だったんです。だから社会に出てから化粧をしないと、おしゃれしないと、ということに葛藤がかなりあって、自分と同じように悩んでいる人ってきっといるんじゃないかなあと思ってました。

でも「オタク=おしゃれじゃない」、じゃない人もいる。おしゃれな人、おしゃれじゃない人両方がいるけどどう向き合っているんだろう?というところが出発点です。同人誌は「オタクとおしゃれ」にフォーカスして制作しましたが、今回の書籍はオタクかどうかにかかわらず、いろんな人の話をつづってもらいました。

――今回の書籍でお二人が一番印象に残ったエピソードはどれでしょうか?

ひらりさ: 今読んでも全エピソード泣いちゃうんですけど(笑)、一つあげるなら「デパートの販売員だった女」ですね。おしゃれが苦手だった人が仕事上の必要を通じてそれを身につけていって、最初は嫌だったけどだんだん楽しめるようになった、という過程がすごくしっかりしているんです。

かん: ちょっとでもおしゃれを頑張ったことがある人だったら、誰しもが共感できるエピソードだよね。

――かんさんは。

かん: 私はエピソードというより、この本の構成に思い入れがありますね。4人で編集していて、私たち自身が共感できる美意識感やおしゃれの理由なんかをしっかり突き詰めていって。その過程で、社会のためにおしゃれする人たちを取り上げた「他人のために」という章を作ったんですが、そこにすごく思い入れがあります。

なぜおしゃれをするのか、の気持ちに共感できる

ひらりさ: 同人誌のときは自分と向き合っている人がメインだったんですが、「自分のために」「他人のために」「何かを探して」の3章になることで、より普遍的に、なにかを共感してもらえる本になったんではないかなと思います。

――「自分のために」「他人のために」「何かを探して」という章立てになっていつつも、どの人にも共感できる気がしますね。

かん: 例えば「他人のため」にメイクやおしゃれをしているつもりの人も、そのおしゃれで結果自分がハッピーになるんだったら「自分のため」とも言えるんですよね。「自分のために」の章で出てきた「アイドルにモテるために化粧する女」も、実は「アイドル」という他人がいるわけだし。誰しもが章をまたいだ気持ちがあると思うんです。

ひらりさ: そういう、グラデーションが見える人選にしているので、誰にでも共感できるポイントがあるんじゃないかなあと。

後編では、メイクやおしゃれの正解って?について、2人の考えをお聞きしました。

だから私はメイクする

だから私はメイクする
劇団雌猫 (著)
出版社: 柏書房 (2018/10/24)

朝日新聞バーティカルメディアの編集者。撮影、分析などにも携わるなんでも屋。横浜DeNAベイスターズファン。旅行が大好物で、日本縦断2回、世界一周2回経験あり。特に好きな場所は横浜、沖縄、ハワイ、軽井沢。
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