出版社勤務(38歳)

婚活中に乳がんが発覚。その後、彼と出会い結婚した

出版社勤務(38歳) 婚活を開始したと思ったら乳がんが発覚。身内にがん経験者はおらず、まだ30代の私がなぜ? 初期の乳ガンは生存率が90%なんて言うけれど、その90%に自分が入れるかなんてわからない。 乳がん告知された翌日に今の夫と出会い、その後結婚した女性にお話を伺いました。

婚活と乳がん検査が同時スタート

当時36歳だった私は、都内の出版社に勤務しながら独身生活を謳歌していました。しかし30代も半ば、さすがに結婚への焦りも募り始めたところで結婚紹介所に入会しました。

ちょうど同じ時期、職場の健康診断を受診しました。今まで大きな病気とも無縁だったし、いつも通り淡々と検査を受けて終わるはずでした。それなのに、後日結果が届き、軽い気持ちで見ると乳がんの項目に「要再検査」のチェックが付いている……。

世間では、ちょうど市川海老蔵さんが小林麻央さんの乳がんを公表した時期でした。私が通う乳腺外科にも予約が殺到する中、数回にわたる検査が続きました。

最終的にガンの確定診断がついたのは健康診断から3カ月後。ステージ1でした。まさかの事態にショックや恐怖に襲われるも、今の体の状態、今後の治療やお金、仕事、親や周りに何と伝えるか、など瞬時に四方八方考えることもいっぱい……。

世間では、乳がんって初期だと少し安心みたいなイメージあるのではないでしょうか。でも、自分が当事者になると、初期だろうがなんだろうが、がんはがんです。5年生存率90%って言われたって、その90%に入れるなんて誰が言ったの? 確証はあるの? って、思いますよ。

親は落胆、上司の表情がみるみる変わって‥

告知を受けた日のことは忘れられません。田舎の母親に結果を告げると「何であなたが……信じられない……」と、激しい落胆ぶりが電話越しからも伝わってきました。

夜は夜で会社の大規模なパーティの幹事を任されていて、友だちも招待しているし、取引先も大勢来るし行かざるを得ませんでした。無理に笑顔を作って接待し、シャンパンを喉に流し込みました。

後日、上司に乳がんを報告しました。「話がある」と声を掛けると、なぜか結婚の報告だと勘違いされ、会議室のドアを開けたら上司がニコニコして待っている。その状況で乳がんの話をしたときの、みるみる変わっていく上司の表情が、今でも脳裏に焼き付いています。人をそんな顔にさせてしまうほど、大きな事態なんだとあらためて自覚しましたね。

告知をされた翌日に、彼と出会った

検査をしながらもゆるゆると婚活は続けており、彼と初めて出会った日は、乳がんの告知を受けた翌日でした。とてもとてもデートの気分ではないけれど、何回か日にちを調整した上でのドタキャンは失礼だし、約束通り会うことに。せめて会っている数時間だけは明るく振る舞いました。

3回目のデートで、彼から結婚を前提としたお付き合いを申し込まれました。そのタイミングで、私も勇気を出して体のことを話したんです。

「乳がんになりました。まだ3回しか会っていないので、今ならまだ引き返せますよ」

しかし、彼の答えは「会った時から決めていて、僕の気持ちは変わらない」と。
驚きましたね。今まで長く付き合っていた人が病気になったわけじゃない。まだ数回しか会っていない相手ですよ。その場でそうは言ってくれても冷静に考えて欲しい。その後も会うたびに確認するも、何度聞いても「僕の気持ちは変わらない。体のことも含めて僕が支えていきます」と、彼の答えは変わりませんでした。

もし再発したら?子どもは?

彼とは散々話し合いました。今後の手術や治療のスケジュール、結婚して乳がんが再発した場合、彼が家事をメインで行う可能性があること、仕事は休職もしくは退職も想定し、収入が減ることも考えられるなど。

そして一番のポイントは子どもです。手術後5年間は薬を飲むことになっており、子どもを望むなら計画的に一時薬を止めて妊活をする。しかし薬を止めたからと言って必ずしも生理が復活するとは限らず、そのまま閉経することもあり得る。子どもがいない人生になるかもしれないが、覚悟はあるかと。彼の答えは、
「子どもよりあなたと一緒にいられることが一番大事だから、子どもはいてもいなくてもどちらでもいい」と。
その言葉にすごく安心し、彼との結婚を決意しました。

その後、発症から2年経過しました。薬の副作用として少し疲れやすい、太りやすいということもありますが、仕事も辞めることなく働いています。お酒も時々飲みますしね。当時の彼が今は夫となり、幸せに結婚生活を送っています。

11人に1人は乳がんになる時代

みんな自分はガンなんてならないと思っているかもしれません。私だって疑いもしませんでしたから。でも、現実は11人に1人は乳がんになる時代なんですよ。

今だって、ふとしたときに再発や転移の不安を感じます。人によってはガンになると鬱になる人もいるようですが、気持ちはよくわかる。私もまだ治療のさなかだし、この病気になるとずっと付き合っていくんですよね。それでも、自分自身やまわりの環境を見直すきっかけをもらえた、と考えるようにしています。これからも自分と人生と向き合いながら、治療を続けていきます。

(写真はイメージ画像です)

東京生まれ。千葉育ち。理学療法士として医療現場で10数年以上働いたのち、フリーライターとして活動。WEBメディアを中心に、医療、ライフスタイル、恋愛婚活、エンタメ記事を執筆。