【Dr.尾池の奇妙な考察03】「透明感」の正体に出会える特異点があった
●Dr.尾池の奇妙な考察 03
解明されているのにあいまいな「透明感」
こんにちは、尾池です。研究をしてまして、基礎化粧品などもつくっている工学博士です。肌の美しさの話になると決まって登場する「透明感」。よく耳にしますが、説明はなんだか難しい。しかし、研究者の間では、それなりに解明されています。
透明感は光によって生じます。光が肌表面だけで反射せず、テカらず、適度に内部へ透過し、肌の水分率は30%前後で、メラニンは多すぎず、ケラチンは酸化劣化されておらず、均質な内部で散乱し、血流で赤みを帯びた一部の光が表面へ戻ることができると透明感が生じる、ということが分かっています。
そして透明感を上げる道具として血行促進の炭酸ガス入浴剤、メラニン抑制のビタミンC、ケラチンの酸化防止アミノ酸、キメと水分率にセラミド、赤み補正のファンデーションにテカり防止の脂肪酸吸着ナノファイバー。データに基づいたこうした技術は実際に驚くべき効果を発揮しています。
ところがです。これだけ分かっているのにもかかわらず、実生活の中で透明感は依然としてあいまいなままです。研究者たちもいまだ満足せず、顔全体から受ける透明感まで調べられているほどです。こんな声もよく聞きます。「結局、透明感って何なのでしょうか?」と。
明快な問題を解決してくれる場所
「結局、透明感とは何なのか」。
私は思考がまとまらない時、よくトイレに向かいます。気分転換もありますが、考えすぎたあげく、なんだか逆に答えから遠ざかっているように感じるからです。その点トイレは、問題と解決策が宇宙でもっとも近づく場所です。
私たちはある時きわめて明快な問題を抱えてトイレに向かいます。そして一歩一歩確実に近づく解決策。ドアを開け、トイレに座る。問題は解決策に見事にはまり、ドッキング。問題は雲散霧消し、爽快感だけが残ります。
そしてトイレで気がつきました。そもそも透明感を感じているのは目以外に無い。そして目とは「見るための器官」にすぎない。ということは透明感とは「何か見えそうで見えない」度合ということになる。
いままで「見えているもの」に固執しすぎていたのかもしれない。そうではなく、むしろ気にするべきは「見えていないもの」ではないか。
「透明」は見えない
透明感とはよくできた言葉だとトイレに座ったまま唸りました。仮にすべて見えているとすれば、それを透明感とは呼ばない。それは「透明」である。透明感と言うからにはそこに「見えていないもの」が存在する。それを直感的に、そして見事に「透明感」と表現している。
ではその「見えていないもの」とは何だろうか。それは一つしかない。私たちの「能力」以外に考えられない。私たちは間違いなく、肌の向こう側に透けて見える能力も含めて、透明感と呼んでいる。
能ある鷹は爪を隠す、という。私たちは能ある鷹にあこがれる。これはつまり、いつ何をどれくらい隠せばよいのか分かっている鷹にあこがれているに違いない。
さらに理解が進むことに、透明感は美しさをさらに修飾する魅力になっているということだ。美しさとは見えている環境バランス。
参考:「なぜ私たちは恋をするのか、生粋の理系男子が論理的に考えてみた」
そこに蓄積されていく見えない能力。私たちは日々、外面を整え、内面を鍛え、それを内に秘め、一日一年を生活している。その「見せない度合い」が美しさをさらに際立たせる透明感という魅力になる。
透明感を維持する一日のうち、見せない度合いを唯一緩めることができる生活の「特異点」。実はそれがトイレだったのだ。これに気が付いた時、ブラックホールの特異点に気が付いたホーキングもこうだっただろうというくらい、トイレの中でしばらく立つことができなかった。
今回のまとめ
トイレは一日の特異点。そして正月は一年の特異点。一年を通じて見えることのない運命という秘め事をおみくじでわずかに垣間見る日。そしておみくじ程度に秘め事をわずかに垣間見て、それはそっと心に隠したまま一年を送る。これも人の透明感という魅力につながっているはずです。
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