【Dr.尾池の奇妙な考察04】「エッチポテンシャル?」と、ドキドキした話
●Dr.尾池の奇妙な考察 04
「性差別」は論点が単純すぎる
こんにちは、尾池です。研究をしてまして、工学博士です。
最近、LGBTに関する議論を新聞やネットでよく見かけますが、読むたびに感じることがあります。失礼ながら、妙に退屈なのです。
LGBTの議論で登場するキーワードは主に「性差別」「同性婚」「少子化」ですが、たとえば「性差別」は論点が単純すぎます。生物学的な性別と、文化的なジェンダーがいっしょくたに議論されていることが多く、途中からなんの話か分からなくなります。
「同性婚」について寛容的(な感じのする)表現に「個人の自由だが、伝統は守られるべきだ」というものがあります。LGBTはその伝統よりもずっと前からあるのに、といつも思ってしまいます。LGBTは遺伝子由来の必然的な「性」の一つです。言ってみればこの世に性が誕生した太古からLGBTは存在しています。
子作りだけが生命をつなぐ手段ではない
「少子化」に至っては、そもそも生殖機能は生命の手段であって目的ではありません。たとえば、貨幣は価値創造に対するいわばお礼の道具。勉学は価値創造の準備にすぎない。同様に、子作りも世代交代のたくさんあるプロセスの一つにすぎません。
私たち人間に限らず、動植物は皆、遺伝子以外の何かも引き継いで世代交代しています。それを知識と読んだり、ミームと呼んだりしています。まるで全員が子作りをしなければならない表現は、戦略のないネコのサッカーのようです。
しかしこうした一見退屈な議論は考えてみれば当たり前かもしれません。性がグラディエントという認識は、理系でも大学で生物をとっていなければ常識ではないでしょう。しかしLGBTはもともと存在していたのです。後からやってきた男らしさ女らしさに理解を求めようとしているのだから、目新しい解決策など出てくるわけがありません。
そういえば化学にも「性」がある
化学で性と言えば、酸性・アルカリ性ですが、これをpH(ピーエッチ)と表現したデンマークの生化学者セレン・セーレンセンは(以下の内容を意図したかどうかは別にして)とても面白い。
このpHを教科書で初めて目にした男の子の多くは「エッチ?」と反応したはずです。やがて専門的にpH(Potential of H)を学ぶに至っては口にこそ出さずとも「エッチポテンシャル?」と思ったはずです。
Hはもちろん水素。宇宙で最初にできたもっともシンプルな元素で、すべての物質創生の始まりがこのHでした。Hですべてがはじまったと言えます。そしてHの量で性質が決まることにセーレンセンは気が付きました。
セーレンセンはHがもっとも多い状態を0として「酸性」、もっとも少ない状態を14として「アルカリ性」、中間を7として「中性」と呼び、この液性を知る上で便利な15段階の度合(物理量)をpHと名付けました。
ここで面白いことにリトマス試験紙では酸性が赤色で、アルカリ性が青色になっています。これはもうセーレンセンが「酸性を女性、アルカリ性を男性にしてみるがよい」とネタ振りしているとしか思えません。
ということでPotential of Sex、pSexを考えてみます。(読みはピーエスイーエックスです。ピーセックスではありません。)
pSex=0〜6を女性とし、7付近を中性、8〜14を男性とします。そして自分は何pSexだろうか、と考えます。私はやや女性寄りなのでおそらく10pSexくらいでしょう。体調によっても変化するかもしれません。いや、気分で変化している時もあるような気がします。
つまりpSexは決まった数値ではなく「振り幅」があるようだ、という発想になります。生物によっては温度や環境によって、雌雄を切り変えるものもいるほどです。彼らはこの「振り幅」が大きい種族と表現できそうです。
今回のまとめ
私たちのpSexも、年代や環境によって変わり、しかも振り幅まであるかもしれない。私たちはこれほどまでに不確定な性別にいつまで縛られているつもりでしょうか。性など、あってないようなもの。明確に存在するのは私たち一人一人の生命の中にある「こうありたい」という多種多様でエキサイティングなイメージだけです。
尾池博士の所感:男女の二種性認識のギャップを解消できるのは論文ではなくtellingかもですね。
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