会社の「いま」が辛い方へ。その状況に至った原因は「なに」ですか?
●働きたくないあなたへ 02
「いま」がつらい時、できることは
厚生労働省の諮問機関・労働政策審議会の分科会は12月14日、職場でのパワハラについて法律で企業に防止措置を義務づけることなどを盛り込んだ報告書を了承しました。対策を強化し、パワハラを「許されないもの」として明記します。政府は関連法改正案を来年の通常国会に提出する予定です。
社員の尊厳を軽んじる人や組織には、時として厳罰で臨む必要があります。その対策も整いつつありますが、まだ時間が掛かります。あなたの「いま」が辛い場合、どうしたらいいでしょうか。仕事を客観視して限界を感じたらどうすればいいでしょうか。いくつかの手段がありますので、覚えておいたほうがいいでしょう。
限界を感じたら次の方策しかない
1.労働基準監督署に駆け込む
ブラック企業対策の記事を読むと、「労基署に駆け込め」という人がいます。通常は窓口であしらわれて相手にしてもらえません。運よく監督官と面会できたとします。おそらく、次のように言われるはずです。
「会社に連絡を入れます。依頼があった旨を話しますがいいですね」
監督官は司法警察権を有しており、検察の捜査権と同質とされています。しかし、多くの案件が寄せられるので調査は簡単には進みません。労基署に駆け込んだことは多くの社員に知られることになります。「いま」の辛い状況を改善するにはいたりません。
2.労働委員会に提訴
個別労働紛争のあっせん、ユニオンを通じて労働委員会に提訴しても、命令までに1年を費やすことになります(却下も多い)。労働委員会は公的な組織になるので、権限を行使することができますが審議が進みません。また、労働委員会の命令には強制力はありません。
また、訴訟等に移行すると、訴訟判断を優先することから労働委員会の審議は一切に進まなくなります。不服があり決着しなければ、中央労働委員会に移行しさらに時間がかかります。あなたの「いま」の辛い状況を改善するにはいたりません。
3.労働組合に入会
社内に労組がなければ、外部の一般労組に入会します。管理職、非管理職、アルバイト、契約社員でも入会できます。入会すると、労組から会社宛に団体交渉の申し入れがあります。会社はこれを拒むことはできません。また、正当な争議活動については、刑事上および民事上の免責が与えられることになります。例えば、争議活動によって会社が不利益を被っても罰すことができません。争議活動に対して不利益な取扱いもできません。
あとは、労働者の覚悟になります。会社の前で、実名入りのビラをまいたり、シュプレヒコールをあげながら周囲を街宣することができるでしょうか。当事者の精神的負担もかなりのものですが、これに堪えられる覚悟があるかです。
4.訴訟
民事訴訟では、強制力のある判決が下されます。しかし、長期化するリスクもあり、必ず勝てる保証もありません。労働審判という制度がありますが、審理が最大3回以内のため、迅速な解決が可能です。さらに、弁護士をつけず個人でも提起することができます。しかし、個人で戦うにはそれなりの法律的な知識が必要になります。
会社はどのような手段をとるか
基本的には、なんらかの報復が待っていると考えるべきでしょう。実際には報復をしてはいけないのですが、それは建前です。懲戒、異動、降格、賃金カット、あらゆることを想定しなくてはいけません。どの手段をとっても、会社を相手に争うことになりますので、相当な覚悟が必要です。「いま」を解決する手段は限定されるということになります。
筆者の場合、労使双方の経験があるので、どちらの言い分もわかります。もしまわりに人事経験者がいたら聞いてみるのも一考です。外部の勉強会などに参加するのもいいでしょう。「いま」を客観視するヒントを収集することが大切です。
言い分は各々にあることを忘れてはいけません。あなたに言い分があるように、会社にも言い分があります。それらをつき合わせれば、100%正しいということは滅多にありません。ですから、「いま」の状況にいたった原因に気づかなくてはいけません。「いま」が辛い場合にとれる方策にも限界があることを知らなければいけません。