「29歳問題」という問題

モデルLIZAさん「しわを愛せる自分でいたい」

ドイツ生まれ。日本に帰国後もナショナルスクールで育ったモデルのLIZAさん(29)。「確かに日本人の同調圧力は大変よね……」と話してくれました。LIZAさんから老いることに悩む女子たちへ、「まわりの幸せと自分の幸せが一緒だなんて思わないでね」と、心に響くメッセージです。

●「29歳問題」という問題

「同じ意見」は魅力的ではない

小さい頃はドイツ語しか話せなかったし、自分をドイツ人だと思っていました。日本にあるドイツのインターナショナルスクールに通っていましたが、私みたいなハーフもいれば、ドイツで生まれたドイツ人じゃない子もいたり……全員、当たり前のように見た目も考え方も違うんですよね。

友だちと一緒にトイレに行って、手を洗ってる時にパッと鏡を見ると、隣の友人は青い目のブロンドなのに、私は見るからにアジア人。「あ、私はドイツ人とは見た目が違うんだ!」と違和感を持ったのを覚えています。その日は家に帰って「髪を明るくしたい」って親に言いました(笑)。

もう一つ、今でも覚えているのが、討論会の時に「隣の子と同じ意見です」と言ったらすごく怒られたことがありました。「間違ってるか、正しいかは関係ない。自分の意見を言えないと魅力的じゃないんだよ」と教わりました。

そういう意味で、私の同世代の友だちは海外にいる子が多いから「29歳で焦ってる」という話は聞かないですね。「思ったような30歳になれない」という人はいますが、それも「やりたいことがあるのはいいことだ」とポジティブにとらえているように思います。

日本人は人の目を気にしてしまう、気をつかう国民性ですよね。

日本人は人の目を気にしてしまう、気をつかう国民性ですよね。みんなの共通認識の「普通」があって、そのレールを行くことが「正解」っていう。「普通」が1番いいという文化は、まだ親の世代でも残っているし、私たちの世代にもその影響は大きいように思います。

日本人の外見は海外の人からすると、見分けがつかないくらい似ています。極端なお金持ちもいなければ貧しい人も少なくて、世界規模では経済格差も小さい。だから、他人と比べて、うらやましくなって、自分はだめだと思い込んで……と負のスパイラルにはまるような気がします。他人の生活をのぞき見するSNSなんて、やめたほうがいいと思うなあ。

20代での結婚が幸せな人もいるし、ほかの幸せもある。こんな当たり前のことが、あまり差異がないからわからなくなってしまのかもしれない。型にはまれないことが苦しくなっちゃうのかな。

10代のころ、モデルを全員並ばされて、上から下まで体のサイズを書かれたことがありました。当時はわからなくて、なされるがままだったのですが、今思えば悪影響だったなって。その時、私は初めてモデルではなく一人の女性として傷ついた事を覚えています。私が当時、読んでいた若い子向けのドイツの雑誌では自分らしくあれ、自分の体形を愛せ、人と比べる必要がないっと書いてあったからです。隣りにいる人と同じであるべき、同じような道を行くべき、20代のうちに結婚をするべき……と言う考え方だけでは幸せになれない。

若い子に「私を見て」って言える自分でいたい

今私は、50代向けの雑誌にモデルとして出ているのですが、みんな持っている魅力が違う。それぞれの個性を認め合う「大人の雑誌」にかかわれることが、とてもうれしいんです。

まさに憧れの女性が沢山集まっている。私自身、今は昔に比べてよっぽど肩の力が抜けてモデルとしていい表情を出せていると思う。人生経験を積んだことで「この風景なら、こういう女性像がいいのかな」というのも考えられるようになってきました。これが経験の差、ですよね。若い時にはできなかったことだから。

これからの30代、「30代はこうあるべき」じゃなくて、楽しめる自分でいたい。しわが増えて「どうしよどうしよ」って焦るんじゃなく、そのしわを愛せる自分でありたい。若い子をうらやむんじゃなくて、若い子のキラキラした部分を吸収できる人になりたい。

老いることを怖がる若い子がいるなら、「私を見て。嫌なこともたくさんあったけど、なんてことないよ。問題ないよ」って言える自分でありたいな。

続きの記事<モデルLIZAさん「“女は20代”という男がいるなら、選ばなきゃいい」>はこちら

  • ●LIZAさんプロフィール
    1989年、ドイツ・ハンブルク出身。ドイツ人の父親と日本人の母親を持つハーフ。14歳で「JJ」専属モデルとしてデビュー。日本語、英語、ドイツ語を話す。現在はNHK「旅するドイツ語」や「eclat」などでモデルを務める。
telling,の妹媒体?「かがみよかがみ」編集長。telling,に立ち上げからかかわる初期メン。2009年朝日新聞入社。「全ての人を満足させようと思ったら、一人も熱狂させられない」という感じで生きていこうと思っています。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
29歳問題