「29歳問題」という問題

話題の雑誌「S Cawaii!」編集長に聞いた「なぜ、”20代で結婚”を推したの?」

「20代のうちに結婚する方法」という刺激的タイトルで話題となっている「S Cawaii!冬号」。ちょいちょい待て待て、なぜにこんなに「20代での結婚」を推すのか?30代独身じゃだめですか? 岡村明編集長(38)にお話を聞いてきました。

●「29歳問題」という問題

読者の多くが「20代での結婚」を望むなら

――なぜ「20代のうちに結婚する方法」という特集をつくったのでしょうか?

岡村編集長(以下岡村): 特集テーマを決めるには様々な要素がありますが、ひと言で説明すると、S Cawaii!がターゲットとしている読者の多くの子が「20代での結婚」を望んでいると考えたから、ということです。

私たちは日々、読者の子たちが今何を考えているか、何に悩んでいるか、何に興味があるのかといったことを調査しています。発行している本の反響を分析したり、SNSをのぞいてみたり、また実際に毎月20歳前後の女の子30~50人に対面でインタビューもしています。他にも、毎回の300~500件のアンケートシートも参考にしています。その中で、多くの読者が20代で結婚したいという思いが強いことがわかったので、今回の特集テーマとすることにしました。

もちろん、今の若い子で20代で結婚したいという子もいれば、結婚にあまり興味がない、30代で結婚したい、など様々いると思います。ただ、S Cawaii!のターゲットは「20代で結婚したい」という方が多かったということです。

「大好きな彼との結婚」が身近な幸せ

――なぜS Cawaii!の読者は、「20代での結婚」を求めるのでしょう?

岡村:身近で、手に入る幸せとして想像しやすいものが「結婚」なのかなと思います。今は、「幸せ」の選択肢が無限にありますよね。バリバリ仕事して起業する、一流企業で出世する、億万長者に見初められてセレブな生活をする……。その中で、S Cawaii!の読者にとっての身近な幸せが「大好きな彼との結婚」だったんだと思います。

SNSの影響も大きいと思います。今はインスタグラムで、芸能人たちがテレビや雑誌では見せないプライベートな様子も発信できるようになりました。ぺこりゅう(ぺこさん・りゅうちぇるさん)に代表される、幸せな夫婦、家族の形をみてうらやましいと思うのかもしれません。

「20代の結婚だけが幸せ」ではない

――「20代のうちに結婚」は賛否両論を呼ぶテーマだと思うのですが、表現で気をつけたところはありますか?

岡村: 日本全国の書店やコンビニエンスストアに並ぶ雑誌ですので、表現については常に気をつけています。今回のテーマに限らず、誰かを傷つけてしまうことや批判するようなことはないように考えています。ただ、その中で私たちが作っているものはターゲットがある雑誌なので、そのターゲット層には強いメッセージを打ち出していく必要があるとも思っています。

読んでいただければわかると思うのですが「20代の結婚だけが幸せになれる」という意味では一切ありません。実際、誌面に登場するぺこりゅうさんは「一生、一緒にいたい相手なら何才で結婚してもいいよね」と話していますし、はあちゅうさんは30代で結婚(事実婚)されています。中には、「何が何でも20代で結婚する!」と決めて結婚した人もいますが、「20代で結婚」という切り口にしても、多様なメッセージを送っているつもりです。

――意地悪な質問で恐縮ですが、例えば「20代で結婚しないと女は終わり」というようなタレントさんがいたら、どうしましたか?

岡村: 前後の文脈にもよりますが、インタビュー時にそういった発言が出ても、おそらくとりあげないと思います。繰り返しになりますが「20代の結婚だけが幸せ」と伝える気はありません。だからと言って「20代も30代も40代も50代も60代もどんな年代の結婚でも幸せ」そして「結婚してもしなくてもどっちでもいいよね」というコピーだったら、誰に向けた雑誌なのかわからなくなっちゃうんですよね。今回のS Cawaii!は「20代の結婚」について知りたい読者に向けて作りました。

――反響はいかがですか?

岡村: 売れ行きも好調で、SNSを見ていても「ぺこりゅうかわいい」「結婚の話が素敵すぎる」「私、ゼッタイに結婚する!」など好評です。中には、否定的な意見もありますので、そこは真摯に受け止め、次回への課題としていきたいです。

続きの記事<「男に選ばれなくても幸せになれる時代に、男に選ばれたい」思想>はこちら

  • 【編集後記】

  • 自分たちのターゲットに向けて、共感されるコンテンツを作る。私も同じコンテンツメーカーとして、その大前提はよくわかります。ターゲットを絞るがゆえに、他の層をザワザワさせてしまうのも、ある意味仕方ない。むしろ、誰も傷つかない、正論の「教科書」を作ることで、存在意義が失われてしまうのです。実際に、昨年の「ゼッタイ20代で結婚する!」特集は、完売するなど読者の強い共感を得たそうです。

  • 岡村編集長が何度も言ってくれましたが「20代で結婚をしたい」は、あくまでS Cawaii!の読者の考えるひとつの「幸せ」のかたちです。世の中の「総意」ではありません。

  • それは私たちtelling,も一緒です。毎日たくさんのメッセージを発信していますが、それはこんな考え方もあるよ、の一つの提案です。この考え方以外認めない!ということではありません。「20代で結婚」も「赤の似合う女こそいい女」くらいの気持ちで受け止めてもらえる世の中になるといいのになと思います。40代で結婚も、黄色が似合う女も、どれも全部最高です。

telling,の妹媒体?「かがみよかがみ」編集長。telling,に立ち上げからかかわる初期メン。2009年朝日新聞入社。「全ての人を満足させようと思ったら、一人も熱狂させられない」という感じで生きていこうと思っています。
“29歳問題”