誰もがバタつく。女子の29歳問題、どうするよ。
●本という贅沢。34 『ほんと、めちゃくちゃなんだけど 完璧ではないわたしのしあわせの見つけかた』(ルーシー・ヴァイン著、森慎太郎訳/CCCメディアハウス)
いま振り返っても、29歳の一年間は、ひどかった。女子の友人たちが一人残らず“わちゃつく”、阿鼻叫喚の一年だった。
私たち女の体って、29歳になった瞬間、一斉アラートがなるように遺伝子設計されてるんじゃないか。そう思うくらい、誰もが突然、それまで感じたことのない焦りにとらわれ情緒不安定になっていた。20代最後の、あの一年。
東に「7年付き合っても結婚を切り出さない彼がいる」という友人あれば、行って「次にいけ、次」と言い、
西に「不倫相手がなかなか奥さんと別れてくれない」と荒れる友人あれば、行って「引導を渡してこい」と諭し、
北に「手持ちのカードが全部消えた」とうろたえる友人あれば、行って仲間と合コンのセッティングをし、
南に「婚約相手の母親からいびられる」と泣く友人あれば、行って「今ならまだ引き返せる。別れろ」と伝え……。
私たちは、自分の29歳問題はもちろんのこと、友人たちの29歳問題も自分ごとのように一緒にバタつき、このクライシスを共に乗り切ってきた。
『ほんと、めちゃくちゃなんだけど』を読みながら、当時のことを鮮明に思い出した。6月に呼ばれた4件の結婚式のせいでご祝儀貧乏になりながら、二次会ではいつも誰かのわちゃついた人生の話について、ああでもないこうでもないと、同じ戦場で戦う同志を支え合っていた、あの時期。
国が違っても同じなんだな。この本の主人公のエリーも、私たちも、女子は女子であるだけで、決めなくてはいけないことがたくさんある。
シングルはシングルなりに。既婚者やママも既婚者やママなりに。自分と違った道を選んだ人たちと比べたり比べられたりしながら、自分を肯定して進んでいかなきゃならない。
この本を読んだ、今ならわかる。
29歳は、手放すものと手元に残すものを点検する時期だったんだ。20代に置いてくるもの。30代になっても持ち越すもの。それらを棚卸しすることは、自分を見つめ直すことにほかならない。就職活動の時のように、情緒不安定になった気持ち、いまならわかる。
そしてもうひとつ。あれから12年経ったからこそわかること。
それは、どんなに友人同士でアドバイスし合い、支え支えられたりしたとしても、結局のところ――
自分で自分の道を決めた人が一番強いし、しあわせだってこと。
私たちは、この本の主人公のエリーのように、めちゃくちゃにわちゃつきながらも(いや、わちゃついたからこそ)、自分が何を大事にして、この先の30代以降を過ごすかを決めることができるんだな、と思う。
30代も40代も悪くない。
そう思える時間を過ごすために。エリーと一緒に「もう、めちゃくちゃ」するといいと思う!
- 担当編集者の田中里枝さんは『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』なども担当した、翻訳の良書を手がける方。この本は、翻訳家さんがコンペで募集され、その選考過程や課題が逐一Twitterで中継されたことでも話題になりました。今時のリアリティある女子トークを訳した森信太郎さんは、主人公のエリー同様ミレニアル世代。これが翻訳家デビュー作となったそうです。
それではまた来週水曜日に。
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