「29歳問題」という問題

媚びを売る相手がいないので、年をとることに焦りはありません

なまめかしく妖艶な表現力で性別問わず見る者の目を釘づけにするポールダンスのダンサーであり、注目のブロガー、ライターでもある“まなつ”さん。彼女が問いかけるのは、「フツー」って、「アタリマエ」って、なに? ってこと。 telling,世代のライター、クリエイター、アーティストが綴る「telling, Diary」としてお届けします。

●「29歳問題」という問題

若いということをありがたがるのが多数派

自分が女でありながら女が好きと自覚してから、もうずいぶん経ちました。

20代前半から水商売を続けているので、男性が女性の年齢に対してどれだけシビアな感覚を持っているかは十分知っています。
20歳のホステスと30歳のホステスが同じテーブルにいたら、あからさまに20歳の子がちやほやされる。
ある種の男性にとっては、美しさや聡明さではなくただただ「若さ」が重要なのだということを思い知りました。そうでない人もいますが、若いということをありがたがる人間のほうが多数派のように感じます。

もちろん、自分もその恩恵を一度は受けた側。

「若い、無知、俺が教えてやる」

20歳です、と言った時の彼らの反応には最初こそいい気分でしたが、段々とバカらしくなりましたね。
だって、若いということをちやほやするのと同時に、彼らはいつだって上から目線ですから。
要は「若い、無知、俺が教えてやる」と、完全なる下の立場であるということを楽しんでいるんだなと。

21歳、22歳、23歳……と歳を重ね、若いねー!と言われることはなくなってきた頃。
もうバカにされることはあるまい、と思ったら今度は「そんな年齢までこんな仕事をして、将来はどうするの?」というお説教です。
いい加減にしてくれよ。自分の自尊心が低いのを、より下だと思える相手を見つけて満たすのはやめてくれ、と何度叫びそうになったか。
ここにいると、ありとあらゆる要素で見下される。しんどい。
年齢、性別、職業、生まれ育ち、セクシュアリティ。
自分を明かせば明かすほど、他人は私を憐れみ、時に蔑み、同情し「世間の常識」という余計なものを押し付けてくる。
そんなものは私に必要ない、と言っても彼らは聞かないのです。

さっさと30代になって、もうこれ以上ナメられたくない

私は女が好きで、ポールダンサーで、年齢なんて気にしちゃいないんだ。
周りのポールダンサーを見ると、みんなすごくいい体で個性的で綺麗で輝いていて、最高なんです。
業界の慣習なのか年齢は非公開の人が多いけど、40代なんてざらにいる。
でも、決して世間一般の思う40代の顔と体じゃない。美魔女なんて言葉じゃ足りない。
プロのポールダンサーで長く続けている人は、本当に素敵な人が多い。

歳を重ねることは、老け衰え、異性から求められなくなる恐ろしいことだと思う人もいるでしょう。
私の場合は異性から求められたくないので、自分が30歳、40歳と歳を重ねていくことも恐ろしくはありません。
むしろさっさと30代になって、もうこれ以上ナメられたくないなあとずっと思っていました。
レズビアンの場合、子供を産むということがあまりないので、年齢にかかわらず恋愛をする人が多いように思います。
私の場合はもうパートナーもいるので、恋愛どうこうという部分も気にしていません。
私はまず私のために、美しく健康でいたい。だから運動も続けるし、ポールもする。
誰かに好かれたり必要とされるためでなく、自分で自分の自尊心を満たし大切にするために生きています。

27歳が最高とか29歳はやばいとかちゃんちゃらおかしいね

何歳になっても年齢不詳の美女でい続ける予定なので、世間の価値観は道端の石ころぐらいどうでもいいです。
みんな好きな年齢で好きな人と結婚したらいいじゃないですか。27歳が最高とか29歳はやばいとかちゃんちゃらおかしいね。そんなことで相手を選ぶ方もどうかしてる。
もっと自由に生きようぜ、と思ってるし言い続けたい。
自分に点数をつけることや、市場価値がどうかなんて考えるのやめちゃいなよ。
誰かに好かれることより、自分で自分を好きになった方がのちの人生トータルで考えてお得ですよ。

続きの記事<29歳問題も軽く吹き飛ばす、天才・中島らも流「憂うつをやわらげる方法」>はこちら

ポールダンサー・文筆家。水商売をするレズビアンで機能不全家庭に生まれ育つ、 という数え役満みたいな人生を送りながらもどうにか生き延びて毎日飯を食っているアラサー。 この世はノールール・バーリトゥードで他人を気にせず楽しく生きるがモットー。
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