telling, Diary ―私たちの心の中。

つくりおきは多忙のバロメーターだった できたてのご飯で癒しを感じた日

なまめかしく妖艶な表現力で性別問わず見る者の目を釘づけにするポールダンスのダンサーであり、注目のブロガー、ライターでもある“まなつ”さん。彼女が問いかけるのは、「フツー」って、「アタリマエ」って、なに? ってこと。 telling,世代のライター、クリエイター、アーティストが綴る「telling, Diary」としてお届けします。

●telling, Diary ―私たちの心の中。

つくりおきは多忙のバロメーターだった できたてのご飯で癒しを感じた日

芸術の秋、運動の秋、そして食欲の秋。
一番好きな季節は夏ですが、秋冬にしか食べられないものに好物が多い私です。

この時期は知人から松茸が送られてきたり、もう少ししたらりんごがもらえたり。
夜、仕事に行く前に妻とご飯を食べるのですが、献立がどんどん秋冬らしくなってきました。
あったかい料理もそろそろ美味しい季節。
夏には食べる気にならないシチューやお鍋の出番がついにやってきそうです。

今はパートナーと交代で料理しますが、独り身だった時は手抜きのオンパレード。
今でこそ、毎日つくりたてのものをそのつど食べていますが、以前はほとんどがつくりおき。
一度に大量につくって、何日も食べられるものを常備していました。
豚汁、カレー、ミートソース、けんちん汁、麻婆豆腐……。
汁物があればご飯を炊いて納豆か目玉焼き。カレーなどご飯にかけられる系なら尚よし。
急に人が来た時に出せるようなものをつくって冷凍したりもしていました。
とにかく朝から深夜まで働いていたので忙しく、そのつど調理する時間がなかったのです。

そして、心の余裕もありませんでした。
タッパーに入れておいたものを解凍して、お皿に移さずそのまま食べていました。
洗い物も1日の終わりにするのがやっと。
健康のため、外食をできるだけしたくなくて頑張っていたけど、メンタルはギリギリ。
たくさんつくったものをずーっと食べても飽きはしないのですが、食事がまるで作業のよう。

なので、たまに時間ができてゆっくりつくってゆっくり食べると、心が癒されました。
できたてのご飯ってそれだけで美味しい。
時間や今日のタスクを気にすることなく食べると、ちゃんと味がする!
一回ずつつくってたら、冷蔵庫がつくりおきでいっぱいになることもなくスッキリしている。
もしかしてこのほうが、人間らしい生活なのでは……とそこでやっと気づきました。
休みの日はできるだけ冷蔵庫整理、そしてつくりたてのご飯を食べるように。
あとあと知ったのですが、インドのアーユルヴェーダでも、できたての食べものを食べるよう推奨されているそうです。
何千年もの歴史が進めるなら、きっと熱々の食事には「なんかすごいパワー」があるのでしょう。

「つくって置いとかないと日常が回らない」ほどスケジュールを詰め込まない。
フリーランスなので忙しくしようと思えば、いくらでもできる。
「ご飯いっぱいつくらなきゃ」と焦燥感にかられるたら、詰め込みすぎのサインだと思うようになりました。
今は妻もいるし、自分の時間も欲しいので、ほどほどのスケジュール感でやっています。
大量につくるのは炊き出しみたいで楽しいので、今でも時々します。
前と違うのは、心の焦りがないこと。

いっぱいつくっていっぱい食べられるねー!と隣で笑ってくれる妻がいるので、毎日楽しい。
妻からもご飯からも「なんかすごいパワー」をもらっています。

続きの記事<何かを楽しむのに遅い時はない、木を植えるなら今>はこちら

ポールダンサー・文筆家。水商売をするレズビアンで機能不全家庭に生まれ育つ、 という数え役満みたいな人生を送りながらもどうにか生き延びて毎日飯を食っているアラサー。 この世はノールール・バーリトゥードで他人を気にせず楽しく生きるがモットー。
まなつ