29歳問題も軽く吹き飛ばす、天才・中島らも流「憂うつをやわらげる方法」
●「29歳問題」という問題〈編集部コラム編〉
問題に埋もれて窒息しそうになっていた29歳
29歳当時、世の女性たちと同じように、私も悩みまくっていた。
26歳で結婚と出産を早々にすませ、29歳のときは2人目を妊娠していた。これを話すと、「もう、いろいろクリアしてるもんね」と、「うまくやった側」と認定されているのか、未婚の友達や子どもをもたない女友達は、複雑な表情だった。
でも、人生でいちばん辛かったのは、29歳だった。
- 志半ばで異動し、やりたい仕事はもうできないという焦り
- 異動直後に妊娠し、「やる気がない」と思われたくなくて妊娠を7カ月までひた隠し
- 夫と不仲だったことを誰にも言えない苦しみ
- テレビ「情熱大陸」に出るような「何者か」になれないことに気づいて絶望
今振り返ると、プライドの塊で、当時思い描いていた理想の自分とのギャップに焦っていたのだとわかる。
でも当時は、もがいていた。
「自分は「自分が頑張っていればチャンスはまた来る」とか
「合わない夫とは別れてもいい、結婚や出産がすべてではない」とか
「情熱大陸に出られなくても、自分は自分」とか、
今ならわかるし、今の自分も肯定できる。
でも、そんな励ましを渦中の29歳の女性が聞いても、きっとモヤモヤは晴れない。自分がそうだったように、目の前の問題に向き合うことで精いっぱいだと思うし、悩みに大小はない。それでも、何かいい処方箋ないかな、と思っていたら、大好きな作家の中島らもさんが、こんなことを言っていた。
イヤな気分で、深いため息が出そうなときに、ため息のかわりに「♪てけてんてんてんてん」と六回口に出して言うのです。これはたとえ自分一人のときでも少なからず勇気のいる方法ですが、実際に試してみるとなかなか効果があるので驚きます。
最初の「♪てけてんてんてんてん」を言ったあとには自己嫌悪がより一層深くなって、落ち込みます。三回目くらいの「♪てけてんてんてんてん」で、もうこんなことはやめよう、とくじけそうになります。それが、四回、五回、といくにしたがって、だんだんヤケクソになってきて、六回目の「♪てけてんてんてんてん」のときには『わっはっは、矢でも鉄砲でも持ってこい』みたいな気持ちになっています。「営業部長のワシがそんなバカなことできん」というような人にこそおすすめします。
(1988年5月8日朝日新聞より抜粋)
頑張り屋さんで優秀で、バカをしないあなたにもおすすめしたい。この魔法のことばを29歳だった私に教えてあげたかった。真面目に努力するのもいいけれど、そんな気力も出ないときに、そっと六回。何の解決にならなくても、笑いとばせてしまえば、ある意味無敵だと思うのだ。
てけてんてんてんてん。
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