編集部コラム

「やる気のない部下」をどうマネジメントするか

日替わりでお送りしている「telling,編集部コラム」。金曜日担当の中釜です。後輩の一言がきっかけで、「よい上司」について先週書いたところ、「やる気のない部下はどうマネジメントすればよいかを聞きたい」というリクエストをいただきましたので、考えてみました。

先日、「よい上司とは何か」というコラムを書いた。

要約すると、私は上意下達で「上司の言う通りにやりなさい」というやり方にまったく意味を感じていないので、その意味での「部下」はいない。チームのメンバーが自律して働けるような、マネジメントしなくてよい状態を作るのが、最強で最高の上司だと思っている、と書いた。
すると、コラムを読んでくださった方から、こんな感想が届いた。

「本当は優秀だけれど、やる気を出さない人をどうマネジメントするか」への答え

私の答えはひとつ。

「そっとしておく」。

やる気のないメンバー(以降、”部下”と書く)をやる気にさせるのは、とても難しい。足を捻挫している人に、「100メートル短距離走を、10秒で走ってみようよ!」と励ますのと同じくらいベクトルが違い、難しいことだと思っている。

ただ、「そっとしておく」は、「放っておく」とは違う。

部下の状態をきちんと把握したうえで、様子を見るのが「そっとしておく」こと。
「放っておく」は、「やる気がないやつ」とあきらめること、だと思う。

①やる気を失わせている原因を理解する

入社当時から一貫して「やる気がない」状態を貫いている人は、あまり会ったことがない。
どんなにやる気がなさそうに見えても、以前はきっと「こういう仕事がしたい」「こういうスキルを身につけたい」があったはず(「お金のための仕事」であればそれはそれで対処法が明快だ)。
だから、「どんな仕事がしたい?」「どんなスキルを身につけたいの?」をたくさん聞く。そうすると、その部下の理想と現状に、どんな乖離があるかが分かる。

そのうえで、今の環境で部下が望む状態に近づけられることがあれば、環境を変える努力を上司がするべきだと思う。ワガママを鵜呑みにするのではない。チームにとっても部下にとっても成長につながると思われることについて努力をする。

②環境を変える努力をした結果を伝える

努力をしても、自分が社長でもない限り、完全に部下の願いを叶えるのは難しい。それでも、「できることはやった」は伝えたほうがいいと思っている。「やる気がでない」状態は信頼関係が築けていないことが大きな理由だと思っている。だから、「私のことを分かってくれない」という不満が少しでも薄らぐように、「私のことを考えて、願いに対して何らかアクションを起こしてくれているんだな」は、絶対に伝えたほうがいいと思う。

③その人の仕事への評価を伝える

そのうえで、「仕事ぶりをどう思っているか、どんな期待をしているか」も伝える。「評価」と書いたが、「優良可」を下すのではなく、「褒める」のほうだ。
そして、何らかモチベーションが上がることを共通の目標に設定してみる。

この目標は、「この仕事達成できたら、おいしいご飯を食べにいこう」などでいいのだ、とある優秀なチームメンバーは私に教えてくれた。ミレニアル世代の自分にはボーナスを出せるほど裁量はなく、昇級させてあげられるわけでもない。その2つを望む人も、今はそんなに多くない気がする。

それよりも、部下が望む仕事をつくり、それが達成できたら一緒に喜びたい、を伝えて実行してくれる上司が、私はずっと好きだった。幸い、私には「この人のために頑張ろう」と思える尊敬できる上司に恵まれていて「やってみたら」「やったじゃん」という言葉が、査定の紙切れや多くない昇級よりも、ずっとやる気を引き出してくれたことが身にしみている。

④待つ

そこまでしたら、待つ。冒頭のように、怪我をしている人であれば、怪我が治るまで待つように、「疲れている」人は疲れが癒やされるまで待つ。その人が仕事をしないことで支障が出そうなときは、まずは自分がフォローして、それでも支えきれないときは、チームの他のメンバーにカバーしてもらう体制をつくる。
それは、甘やかしではないと思う。育休や産休で休むのと同じように、「やる気がない」ときは「ひと休み」したほうがいいと思うのだ。

やりたくない仕事を嫌々やっても、いい結果は出ない。というか、ミスも増える。ひと休みしてもやる気がでないときは、代わりにやってくれる人を探したり、部署を異動させてあげたりするためにエネルギーを使うほうが、みんなにとっていい。

本音を言える関係だけは、つくる努力をやめたくない

またまた偉そうなことを書いてしまったが、私は会社で「やる気がない部下」を持ったことがない。みんな、やる気に満ちている。奇跡だ。
でも今後、もしそういうことが起きても、「本音を言える関係をつくる」努力はやめたくない。
上司と部下の関係は、ずっとは続かないし、たまたま「上司」という役割をしているだけ。だから、自分も思ったことを言うし、部下にはネガティブな本音でも言ってほしい。

人は、自分の思うようには動かない。期待をしないのではなく、よく話を聞いて、才能を伸ばすための環境を作って見守るくらいしか、できることはないのだ。

 今の私なりの「やる気のない部下への接し方」を書きました。

telling,創刊編集長。鹿児島県出身、2005年朝日新聞社入社。週刊朝日記者/編集者を経て、デジタル本部、新規事業部門「メディアラボ」など。外部Webメディアでの執筆多数。
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