夫婦の取扱説明書

夫婦仲をよくする「のろけ」の効能と作法

「のろけ=ウザいもの」という共通認識。でも、本当にそうでしょうか? ある日、Twitterで見つけた「のろけ会」という企画。その名のとおり、配偶者を大好きな人たちが集まって、のろけまくる会だそうです。褒め言葉が結集すると何が起こるのか、見学してきました。

●夫婦の取扱説明書 05

「旦那が○○してくれない」
「嫁が怖いから帰りたくない」
「産後に夫婦仲が冷え切った」
ネットでも飲み会などでもよく聞く、配偶者の愚痴。言えばスッキリはするかもしれませんが、自分が選んだ結婚相手を否定するだけって寂しい……。「結婚は墓場」ということばにも、真実味が増すばかりです。

そんな“呪いの言霊”とは対照的な“のろけ”。集まって話すと、どんな空気になるのでしょう。

出典:あつたゆかさんのツイッター

https://twitter.com/yuka_atsuta/status/1063058688884109313

このツイートに誘われて、どきどきしながら行ってみると……。

友達や同僚との集まりでのろけても、みんな幸せになれない

私が行った「のろけ会」の参加者は5人で、年齢も性別もばらばら。結婚期間も2カ月~3年と、幅がありました。さらにほとんどが初参加・初対面なので、まずは自己紹介や夫婦のなれそめを話します。最初はちょっと緊張気味でしたが、すぐに打ち解けた雰囲気に。

「昔からの友達や会社の仲間で集まると、未婚の人、結婚したくても相手が見つからない人、結婚しているけど不仲の人など、みんないろんな事情がある。自分がパートナーとの幸せな話をするのは、気が引けてしまいます」
のろけ会への参加理由を、口々にこう語った参加者たち。
「夫と順調かを聞かれ、『順調だよ』と事実を答えただけで、自慢だと受け取られる……」といった悩みもありました。

みんな、のろけることで場の空気を悪くするのは、本意ではないのです。でも、周囲に合わせてパートナーの愚痴を言ったり、ちょっと株を下げて笑い話にしたり、というのも変な話。

思いきりのろけることで、パートナーの長所や自分の愛情を再確認できる

「夫のこんなところが好きなの」「二人ではこんなふうにじゃれてるよ!」などなど、心ゆくまでパートナーについてのろけ合う2時間の宴。

「今日はすごく楽しい! 数年前までは彼氏もいなくて、人ののろけ話を聞くのがつらかった。自分のタイミングやテンションによっては、のろけってしんどいんですよね」という声に、激しく同意する参加者のみなさん。

こうしてありのままを話せる空気は、おそらく「参加者同士にリアルのつながりがない」からこそ生まれる気がしました。知らない人同士だから、恥ずかしがらずに言える。みんなのろけを言う&聞くつもりで来ているから、気を遣う必要もありません。

さらに意外な効果も。のろけて楽しいだけでなく、夫婦のコミュニケーションのヒントが随所に隠されていて、学びあう場にもなっていたのです。

「夫とは毎週、土曜日の朝に30分間ミーティング。今後の年収や働き方などの“事業計画”や、この週末どこに行くかなどについて話し合っています。楽しいコミュニケーションの時間です」
「夫が私のお洋服を干してくれたんだけど、気を遣って裏返してくれた結果、表がしわしわに……。怒ったりしないで、にこにこと『ねぇ、ちょっと見てくれる? この服ね、(表を見せて)こうなっちゃうの~』とやんわり注意したら、すぐに直してくれました」
「子どもを産んだら冷めるのかなって怖かったけど、産後も仲良しだという話を聞いて、将来に希望を感じられた……! 里帰りをしないで、いっしょに子育てスタートするのが、うまくいくカギかなって思いました」

のろけの効能を最大化するには、場所選びが大切

自分の本音を気兼ねなく言えるだけでなく、いい夫婦の在り方までシェアできるとは、なかなか奥が深い「のろけ会」。

主宰したあつたゆかさんは「今回がまだ2回目だけど、今後も定期的にやっていきたいです。夫婦関係をもっとハッピーに話せる人が増えたらいいな、と思います」とのこと。今後は「スキ活」というオンラインサロンを立ち上げ、本格的にこの輪を全国に広げていくそうです。

https://camp-fire.jp/projects/view/110028

ところかまわずのろけるのは、もちろんNG。誰にとってなにが地雷になるかなんてわからないから、「うまく言えば大丈夫かも」なんて思わずに、のろける場所を限定するのが間違いなさそうです。そんなときに、こういう第三者的なコミュニティが役立つ気がしました。

頭ごなしにタブー視せず、ポジティブな“のろけのお作法”を身につける。そうすれば、言いたい人も聞きたくない人も、みんな幸せに過ごせそうです。

ライター・編集者 1987年の早生まれ。雑誌『走るひと』副編集長など。パーソナルなインタビューが得意。紙やWeb、媒体やクライアントワークを問わず、取材記事やコピーを執筆しています。趣味はバカンス。好きなバンドはBUMP OF CHICKENです。
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