夫婦の取扱説明書

『妻は他人』作者・さわぐちけいすけ「夫婦になっても甘えない理由」

お互いが依存しない夫婦関係に「理想的」といった声が寄せられている、漫画家のさわぐちけいすけさん。後編は「察してもらおうとしない」「嫌いなことを理解する」といった、夫婦のスタンスについて詳しく伺いました。

●夫婦の取扱説明書 04後編

相手が嫌がることをしないのは、最終的に自分のため

――さわぐちさんの著書『妻は他人』では、相手に察してもらおうとしない姿勢が描かれています。ここがうまくいかないと、やっぱりストレスの原因になりそう。奥様とは、最初からこのスタンスを共有できていましたか?

さわぐちけいすけさん(以下、さわぐち) 交際当初から食い違いは少なかったですが、同棲をはじめるときに、あらためて確認しました。

(C)さわぐちけいすけ/KADOKAWA

察してもらおうとするのって、本当に無駄な時間だと思うんです。中学生くらいからもう、話さないと気持ちは伝わらないし、言葉できちんと表現するのが大事だなと考えていました。でも10代のころは、察してほしいタイプの女の子と付き合ったこともあって……それはやっぱり大変だった(笑)。だから、自分には言葉で表現できるパートナーが合うと思って、無意識に選んできたのかもしれませんね。

――「嫌いなことを共有する」というのも、快適に共同生活を送るためには大切なポイントだと思います。

(C)さわぐちけいすけ/KADOKAWA
(C)さわぐちけいすけ/KADOKAWA

さわぐち: これも、イヤなことを察してもらおうとせず言葉にする、というところからスタートしている気がします。「相手はこれがこうだからイヤなんだ」という事実をまず把握しないと改善できないし、それが自分にとって簡単に直せることなら、さくっと対策して心地よく暮らしたいですから。もちろん、理由もなくイヤなこともあるだろうから、それはそのまま伝えてもらえればOKです。

――相手にイヤな思いをさせないために、はっきり言ってもらってさっさと対策しよう、ということですか。

さわぐち: 相手にイヤな思いをさせないことって、めぐりめぐって自分のためなんですよね。妻の嫌いなことを避けるのは、むやみに不快感を抱かせず、家庭の空気をよくするため。それって、最終的には自分自身も快適になるじゃないですか。そのゴールを忘れないようにしていれば、妻も「私が嫌がるせいで、夫が○○しないように気をつけてる……申し訳ない」みたいに、不要な罪悪感をおぼえずに済みます。

――相手に要望を伝えたり、相手のリクエストで自分の言動を変えたりすることは、おっくうじゃないですか? コミュニケーションコストがかかるというか……。

さわぐち: むしろ、コミュニケーションを最少にとどめるために、先手を打ってる感覚です。あとからケンカすることのほうが、よっぽどコスト。自分の選んだ相手と仲良くし続けたいから、余計なトラブルを起こしたくないし、そのために省エネでコミュニケーションできる方法を探している感じです。

夫婦であることに「慣れ」てもいいけど「甘え」ない

――相手に要望を伝えるとき、ケンカになってしまう夫婦は少なくないようです。お二人は、何か心がけていることはありますか?

さわぐち: うーん……当たり前だけど、相手の言っていることをちゃんと聞くこと。「キッチンのこれが邪魔だからこうしてほしい」と言われたとき、僕は「すみません、気をつけます」以外のリアクションが思い浮かびません。「うるさいな」とか思わないし、万が一そう感じたとしても、今後ずっと一緒に暮らしたい相手に対して、そんな態度を見せるべきではない。夫婦って、甘える関係じゃないと思うんです。家族であるという状態に慣れることと、その関係に甘えてしまうことは別物だから。

――「慣れ」と「甘え」は別物?

さわぐち: はい。二人で生活していくうちに、お互いの行動パターンや好き嫌いがわかってきて、どんな場面でもそれなりの対応ができるようになっていくのは「慣れ」。でも「相手はこれくらいじゃ怒らない」とか「ちょっと揉めてもあとで修復できる」とか考えて、適当なコミュニケーションをするのが「甘え」だと思います。だから、慣れるのはいいけど、甘えちゃだめなんですよね。

  • ●さわぐちけいすけさん プロフィール
    岩手県出身。「妻は他人」をはじめ、夫婦円満の秘訣を描いた漫画がSNSで話題に。夫婦コミックエッセイ『妻は他人 だから夫婦は面白い』『人は他人 異なる思考を楽しむ工夫』に続いて、2018年11月に新刊『妻は他人 ふたりの距離とバランス』(いずれもKADOKAWA)を発売。
    Twitter:@tricolorebicol1

続きの記事<夫婦仲をよくする「のろけ」の効能と作法>はこちら

妻は他人

『妻は他人』
さわぐちけいすけ(著)
出版社:KADOKAWA

ライター・編集者 1987年の早生まれ。雑誌『走るひと』副編集長など。パーソナルなインタビューが得意。紙やWeb、媒体やクライアントワークを問わず、取材記事やコピーを執筆しています。趣味はバカンス。好きなバンドはBUMP OF CHICKENです。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
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