西方凌さん「夫婦間で“昔と変わったね“はNG。変化を嘆くな、進化しろ」
●夫婦の取扱説明書 03後編
感情的にならず、彼に響く「プレゼン」を考える
――17歳の年齢差があるなか、お子さんについてはどう考えていましたか?
西方凌さん(以下、西方): 私は昔からほしいと思っていたけれど、彼にプロポーズしている最中は「子どもはどっちでもいい」と言っていたんです。相手にプレッシャーを感じさせないための口説き文句というか(笑)。だけど結婚してみたら、やっぱり大好きなこの人との子どもがほしくなってきたんですよね。単純に考えて、同じ年齢まで生きるとしてもそのあと17年間、私はひとりぼっちになるじゃないですか。そんなときに、彼の血を分けた子どもがいたら、ちょっとはさみしさが減るかもしれないなって思いました。
――でも、木村さんにとってはちょっと予定外の展開ですよね。
西方: そうですね。とはいえ彼もわりと前向きでしたよ。でも数年間は授からなくて……。これはちゃんと不妊治療をはじめなきゃだめだと、きちんと話し合う時間をとったんです。そこで彼が「あれ? 子どもはどっちでもいいんじゃなかったの?」となって。私ですか? 泣き落としです(笑)、「ほしいに決まってんじゃん~!」って。
でも、ずっと感情的に攻めても仕方ないから、アピール方法もちゃんと考えていました。とにかく、彼がいやだと感じない方向で話を展開すること。「私が幸せにしてあげる」というプロポーズが響いた彼なので、まずはプレッシャーを感じさせない必要があります。彼が子どもを持つメリットをいろいろ考えたうえで「お互いに年を取ったときに、あなたのことを一緒に守るメンバーを増やしたいから、子どもがほしい」と伝えました。その気持ちは、もちろん嘘じゃありません。そうしたら彼も「そんなふうに思ってくれてありがとう」とすごく喜んでくれて、以降は男性機能の検査も含め、全面的に治療に協力してくれたんです。
――感情的にならず、響く話し方を考えた成果ですね……!
西方: 感情のままに話したら、ヒートアップするだけ。「この話をこの順番で、こう伝える」と決めておけば、台本どおりにやればいいと思えるから、冷静になれるんです。相手の反応が悪くても「この台本ではだめだった。作戦を練り直そう」と、落ち着いて仕切り直せます。
――治療をはじめてからお子さんを授かるまでには、どんな時間を過ごしましたか。
西方: やっぱり生理がくるたびに、くじけそうにはなりましたね。しかもデリケートな問題だから、落ち込んでいる私を見て、彼もどう接していいかわからない。そこで余計なトラブルを防ぐために、「こう落ち込んでたらこう言ってね」「こういうときは、何も言わなくていいからおいしいごはんに連れて行ってね」などと、元気なときにあらかじめ対処法を伝えておきました。
それに、妊娠をゴールにしていると、できないぶんだけ気持ちがしんどくなっちゃうんですよね。でも、何のために子どもがほしいのかを考えたら、彼と一緒に幸せになるためなんです。「子どもがいる=幸せ」で「子どもがいない=不幸」じゃない。どうしても授からなければ、彼と旅行にでも行きまくって幸せに過ごせばいいんだってことを、2人で忘れないようにしていました。
夫婦の関係は「変わってしまう」んじゃなくて「変えている」
――子どもが生まれて、夫婦の関係は変わりましたか?
西方: 手のかかる赤ちゃんがいるんだから、どうしても彼の優先順位は下がりますよね。お付き合い当時はかいがいしく尽くしていたから、結婚した直後と出産後など、彼には何度か「変わったね」ってすねられました。でもそのあと、変化に関してルールができたんです。
――変化に関するルール?
西方: 絶対に相手に「変わったね」って言わないこと。「変わったね」って言葉には、変わってしまったことを責めているようなニュアンスがあるじゃないですか。でも“変わった”んじゃなくて“変えてる”んですよ。そのときの環境や年齢、家族構成に合わせて、進化してるんです。だから変化を嘆くんじゃなくて、むしろ家庭のために、お互いどんどん最適化していけばいい。いまは彼も分かってくれて、「俺も変わればいいんだな」って言ってます。
- ●西方凌さん プロフィール
1980 年生まれ。愛知県出身。短大卒業後、左官職人として働きながら日本テレビ系恋愛トーク番組『恋のから騒ぎ』に出演。第9期生として「左官屋」の愛称で親しまれた。2004年よりタレントとして活動を開始。CM・PV・雑誌に活躍の場を広げる。2011年によしもとクリエイティブ・エージェンシーに移籍。2012年 5月に、タレントの木村祐一氏と結婚。
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