みやぞんが語る、仕事と休みの極意「まずは自分だけ変わっちゃえばいい」

ちょっとお馬鹿なキャラなのに、人間離れした身体能力と天才的なセンスでいつも私たちをアッと驚かせてくれるお笑い芸人・ANZEN漫才のみやぞんさん(33)。日々、超ハードなスケジュールをこなしているはずなのに、どんな時でも元気でニコニコしていられるのはなぜ? もしかするとみやぞんさんの「休み哲学」には、私たちが幸せに生きるヒントが隠されているのかも……。朝日新聞社GLOBE編集部の玉川透さんがインタビューしました。

退社時間をじりじり待っているのが、一番きつい

――日本テレビ系番組「世界の果てまでイッテQ!」でブレークしてから、いまや超売れっ子ですね。ものすごく忙しいと思いますけど、実際、お休みはどのぐらいとれているのですか?

おかげさまで、今年に入ってから半日だけです。丸一日はまだありません。

――ええ!?体調は大丈夫ですか?

それが健康なんですよ。逆に仕事している方が元気になります。じつは昨日の深夜1時から静岡で釣りのロケがあって、その足で東京に戻ってこのインタビューを受けています。アハハハハ。

――過度のストレスから仕事への意欲を失う「バーンアウト(燃え尽き症候群)」になる人が各国で増えていると言われています。日本でも過労死が深刻な社会問題になっていますが、みやぞんさんは無縁そうですね。

ぼくは大丈夫です。睡眠時間もトータルすれば、けっこうもらっています。移動中にちょいちょい短い時間で寝るのが得意になりましたし、「イッテQ」の海外ロケでも長時間フライトも多いんですが、ほとんどの時間は眠っています。

ロケの合間の休憩時間に、船上で気持ちよさそうに海風を受けるみやぞんさん=浅井企画提供

あと、やっぱり楽しいから続けられているんだと思います。ぼくの好きな野球で言えば、炎天下で試合している球児を見たら、なんであんな暑い中でがんばれるんだろって思いますよね。でも、本人たちは野球が好きでやっているから、がんばれる。一生懸命に楽しもうとすれば、燃え尽きることはないと思います。

逆にぼくにとっては、「退社の時間が早く来ないかな」とじりじり待っているのが、いちばんきつい。一生懸命なにかに打ち込んでいて、「よし、やるぞ!やるぞ!」と声を出して勢いでやっているうちに時間が経ってしまう。自分でも「オレ、頑張ったな」と思う。楽しいことだと、そんな風に何時間だってやれちゃいますよね。そこに、いかにして持っていくかだと思います。

――でも、職場環境によっては働く時間を自分でコントロールできない人もいます。どうしたら、みやぞんさんのようにポジティブに考えられるのでしょうか。

そうですよね。そういう方たちは、あの人つらそうに仕事しているなって思われて、周りまでつらくなってしまうでしょうね。そんな時、どうすればいいか。とりあえず、自分だけでも変わっちゃえばいいんじゃないでしょうか。笑顔でニコニコ自分だけ!

そんな人だったら、周りで見ている人も放っておかないと思います。表情だったり、話す言葉だったり、そういうところから変えていくしかないじゃないでしょうか。例えば、会社で同僚が暗い顔をしていたら、「なんか君って暗くて、楽しいね!飲みに行ってみよう!」「ラインのグループを作ろう!グループ名は『暗い』で行こうか!」。そんなバカバカしいことを言っているうちに、明るくなってくるでしょう。

人間って、つまらない方向に行ってしまったら、どんどん不安に突き進んでしまう。ぼくは、それがすごく嫌なんです。自分でかじをとって、不安な気持ちを大丈夫な方向へと持っていく。そこが勝負だと思っています。自分はいったい何のために仕事をしているんだろう。それがたとえ、週末に楽しく過ごすためだっていい。その辺の根本的な考え方が切り替わらなかったら、いくら職場が変わっても、何も変わらないと思います。

Aマイナー、ぼくが開発したんじゃないの?

――仕事といえば、みやぞんさんはギターの弾き語りが得意ですが、いちど曲を聴いただけで楽譜も見ずに自在に弾けると聞きました。本当ですか?

はい。でも、ぼくの知っている曲であれば、ですけどね。まったく知らない曲だと、さすがにちょっと時間がかかります。例えば、サザンオールスターズの「いとしのエリー」を弾いてと言われたら、こんな曲でしたっけ、ああ、あの曲ですね、という具合にすぐできます。

ぼく、ギターは独学で、耳で覚えたので、コードの概念がなかったんです。楽譜を見て、ああこのコードなんだという感じでギターを覚えたわけではないので。むかし、埼玉の立ち飲み屋で流しのまねごとをしていたんです。お客さんに「長渕剛の『乾杯』やってよ」と言われたら、「はい、『乾杯』いきますよ~」てな感じで。そこにたまたまミュージシャンの方がいて、どうして楽譜も見ないのに何でも弾けちゃうのかって聞かれて、「ああそうなんだ、みんなできるわけじゃないんだ」と、そのとき初めて気づきました。

真面目な話、最近までAマイナーのコードも自分で開発したと勝手に思い込んでいたんです。ギターの教本を見たらびっくり。じつは、すでに発明されていたんですよね。そりゃそうですよね、無いコードなんて無いわけですから。知らないもんで、なにも。ハハハハハ。

愛犬ラブちゃんを抱いて、満面の笑みのみやぞんさん=浅井企画提供

仕事って、そんなに悪いものじゃないと思う

――はあ……ある意味、天才ですね。そんなみやぞんさんに、最後の質問です。「休み」という言葉の反対語はずばり、何だと思いますか?

え、反対語?そもそも、それってどういう意味ですか?イヌの反対語って、ネコですか?

――いえいえ。例えば、「暑い」の反対語は「寒い」というような……

ああ、そういうことか……うーん。分かった!「休み」です。「休み」という言葉の反対語は、「休み」ですね!白の反対は白。それと同じようなものです。

――まるで、禅問答ですね。その心は?

休みの反対は休み。だって、いろんな休みがあるじゃないですか。つまり、休みも考え方しだいで、どんな休みになるか変わってくるでしょ?働いていても、心は休んでいるっていうことだってあります。だいいち、働いているときの方がぜんぜん悩まないじゃないですか。例えば、おばあちゃんが亡くなって、ずっと家にいたら、おばあちゃんのことばっかり考えてしまう。でも仕事をしていれば、気を紛らわすことができます。仕事って、そんなに悪いものじゃないんだと思いますよ。 

インタビュー後に得意のポーズをとるみやぞんさん(左)と筆者
  • みやぞんさん プロフィール
    1985年、東京都足立区生まれ。本名は宮園大耕(みやぞの・だいこう)。幼なじみのあらぽんと2009年にお笑いコンビ「ANZEN漫才」を結成。歌ネタを得意とし、ギターの弾き語りを担当。

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