17歳差の結婚でも大丈夫。理論的な分析でキム兄と向き合う西方凌さん
●夫婦の取扱説明書 03前編
結婚のボトルネックを、みずから取り除いた
――木村さん監督の映画「ニセ札」に、西方さんが出演なさったのが、交際のきっかけなんですよね。どうして恋愛に発展したのでしょう。
西方凌さん(以下、西方): 最初は、男性という意識はまったくなかったです。木村さんはとにかく厳しかったから、撮影中は毎晩のように一人で泣いていたくらい。「女優は、10人の客がいたら10人に『抱きたい』と思わせたら勝ちだ」と言われていたんですけど、最後のシーンを撮っているときにいきなりストップがかかって。近づいてきた木村さんに、耳元で低く「……あと2人や」とささやかれたとき、突然ドキッとしちゃったんです。そのときはじめて“男”を感じました。
――確かにドキドキしますね……。そのあとは?
西方: そのころ木村さんは、3度目の離婚をされたばかり。まずはガールフレンドの1人になって、2年くらいかけて彼女の座につけたらいいな、と考えました。でも、その計画が順調に進んで(笑)、数カ月後にはお付き合いがスタートしました。
――入籍まではどんな経緯だったんでしょうか。4度目の結婚で、木村さんは慎重になっていたと思います。
西方: まず、私はわりとすぐに宿命を感じて、結婚を考えはじめたんです。ぽっかり空いている“家族”というピースを埋めて、彼を幸せにしてあげるのが自分の使命だ、という気がしました。
だから、プロポーズは私から。最初は流されたけれど、数カ月おきに何度か繰り返して、合計4回伝えました。私、目的を遂行するためには、ありとあらゆる手段を尽くすタイプなんですね。だから「1カ月以内に結婚の意思を伝える」「2カ月以内に最初の返事をもらう」みたいに、頭の中で結婚までのTodoリストをつくって進めました。
3回目にプロポーズしたときのタスクは、ボトルネックを解消すること。そのために、彼がこれまで離婚した理由が私にも当てはまるのかを洗い出してみたんです。そうしたら、それまでの離婚に共通の原因が見えてきて。
――すごく理論的。原因は何だったんですか?
西方: 過去の結婚は、木村さんが「俺が相手を幸せにしてあげなくちゃ」ってプレッシャーを感じすぎてしまっていたみたいなんです。だから「私はあなたに幸せにしてもらおうと思ってないし、むしろ幸せにしてあげます!」って言いました。彼が指輪をくれたのはその一週間後。最初のプロポーズから、3年半くらいかかりましたね。
ケンカのビフォー・アフターを比べて、改善点を見つける
――17歳の年齢差はつらくならなかったんでしょうか?
西方: 健康面の不安はあるけれど、それはもう仕方ないですよね。コミュニケーションという意味では、いやな年齢差はまったく感じません。もちろんジェネレーションギャップはありますよ。こないだも、2人で娘にムーミンの歌をうたってあげたら、お互い全然違う歌だったりして。私にとってムーミンの彼女はフローレンだけど、彼にとってはノンノン。元カノじゃん! って笑っちゃいました。
――では、結婚してから迎えた危機はありますか?
西方: 結婚してすぐのとき、彼が常にむすっとしていることで私もイライラして、一緒にいても全然楽しくない時期がありましたね。いま振り返れば、環境の変化でナイーブになっていただけなんですけど、当時は理由がわからなかった。だからまずは、彼のどこが好きだったのかを思い出して、いまと比較してみたんです。私、彼の面白いところが好きだったんですね。なのに、以前は笑っていた冗談でも、最近は笑えていない自分に気がついて……。また二人で笑い合うために、まずは自分のほうから笑ってみよう、と考えました。
それで翌朝は、とことん笑顔で優しくしたんです。もちろんイヤだったけど、もう、そういう場面を演じる気持ちですよね(笑)。彼にコーヒーを淹れて、にこにこしながら「おはよう、よく眠れた?」って。すると彼がぼろぼろ涙をこぼして「なんでそんなに優しいの?」って……。私ももらい泣きして、関係を修復できました。ケンカのビフォー・アフターを比較することでなんとか対策できたけど、「自分は悪くない」「相手が勝手にイライラしてる」って思い込むのが、一番危ないんですよね。
- 【取材後記】
思い込みにまどわされたり、理解できないまま立ち止まらず、原因を究明して対処する。パートナーとの関係も、理論と実践が効いてくると思いました。後編は、不妊治療と出産後の関係についてお聞きします。
●西方凌さん プロフィール
1980 年生まれ。愛知県出身。短大卒業後、左官職人として働きながら日本テレビ系恋愛トーク番組『恋のから騒ぎ』に出演。第9期生として「左官屋」の愛称で親しまれた。2004年よりタレントとして活動を開始。CM・PV・雑誌に活躍の場を広げる。2011年によしもとクリエイティブ・エージェンシーに移籍。2012年 5月に、タレントの木村祐一氏と結婚。
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