モラハラ夫のことは弟だと思ってみる。離婚しないモラハラ対策とは【モラハラ04】
●モラハラと愛のあいだ④
ライターMさんの手記と、事前に少しお聞きした補足事項を踏まえて、私が感じる範囲で、夫の性格を解説し現状を解釈していきます。その上で、Mさんがするべき状況の見方と考え方、そしてそれを踏まえた上での対処法のアドバイスを記していきたいと思います。
手記の中の、夫の言動について解説
まず、こちらの手記の中で描かれている夫の言動について解説します。
●「仕事できないヤツだと思ってたけど、フリーで自分の腕で仕事とってくるのは偉い」という突然の褒め発言
この発言は、その直前に、あなたから10万円もらったり、別の女の子と遊んだりした直後で気分が良くなっていたので、その気分の良さが溢れ出た現象だと思われます。
この夫のような他者への共感能力が低く、自分の損得を基準として生きているタイプの人は、自分が有頂天の時、他者を上から目線で褒めて悦に浸る傾向にありますが、ほとんどの場合、褒めている内容自体には意味はありません。
たとえば、この夫の場合、そもそも自分の妻のどこら辺が偉いだの、偉くないだのには、興味が無いと思いますが、でもそれを褒めれば、褒めてる自分には惚れ惚れします。
●「もう自由恋愛にしたらいい。新しく好きな人ができたら、その人と結婚しなよ。それまではウチにいればいいじゃん。そのかわり、僕も他の女の子と遊ぶから」
これは、完全に彼の本心だと思います。彼は外面の良いタイプなので、これが不適切な発言であることは分かっていますが、この妻に対してはそれを言っても許されると思っており、実際にその後、許されています。
●「もう、モラハラみたいなことはしない」
自由恋愛を承諾させた直後の解放感から、この時点では本当にそう思っていますが、それは、将来を保証するものではありません。
また、この発言から、彼は今まで「自分がモラハラみたいなことをしている」という自覚を持ちながらやっていた、ということが分かります。
●「もう、自由恋愛にしたらいい」という、妻への発言の直後にもかかわらず、その後、妻の実家からの「結婚式はいつするのか」との連絡に対して、彼が愛想よく返事をしている理由
そこでわざわざ愛想を悪くする実益が無いからです。彼はただ、自由恋愛をしたいのであり、仮に結婚式もしたいなら、別に自由恋愛をしながらでもできるでしょ、という程度の認識だと思われます。
●妻Mさんの疑問「彼にとって私は、何なのか。」
現状は「別に何でもない」が一番近いと思います。
自分の状況を客観的に考えてみる
あなた自身「論理的に考えれば、離婚した方がいいに決まっている」と言われているとおりで、離れられるなら離れた方がいいと私は思います。
ただ、もしどうしても共存したいという場合のために、一応、共存するためのあなたの考え方と夫への対応のヒントを書いておきますので、十分に注意しながら、最終的にはご自身で状況を判断してください。
まず、彼は外面が良いですね。それはつまり、彼には他人に対して穏やかに接する「能力がある」ということですね。
にもかかわらず、その彼があなたに対して「だけ」気性が荒いということは、あなたが今まで彼に対して「私には気性を荒くしていいよ」という態度をし続けていたからかもしれません。
つまり、もしあなたが最初からもう少し毅然とした態度を貫いていれば、今頃彼はあなたに対しても、そこまでやりたい放題ではなかったのかもしれないわけです。
ということは、今からでもあなたの態度を変えていけば、徐々に立場は変わるのではないか……。そういうふうに考えてみましょう。
そしてもうひとつ。どの道あなたは今の時点ですでに、生活費も受け取っておらず、事実上「自由恋愛」も受け入れた身分です。
さらに子どもという「人質」もいません。ハッキリ言って、もう既に、彼との関係において守るべきモノはほとんど残っていないと思われます。
もしそうであるなら、冷静に考えてみると現状は、あなた自身が思っているほど、彼を恐れる必要は無いのかもしれません。もしあなたが、今までほど夫を恐れなくて済むのであれば、当然その分、あなたの選択肢は広がります。
対処1:媚びない凛とした態度を貫く
以上の点を踏まえると、今後、あなたがやるべきことが見えてきます。
【今までのあなたの、媚びた態度を転換して「重要人物である」という前提で、凛として夫に接するように徐々にキャラ替えし、のうのうと居座る】
具体的には、まずは、彼への余計なお節介は止め、敵対的な雰囲気を避けながら、あくまでも穏やかに、口数を減らし、声は低く口調も遅くし、少しずつ「凛とした女」へと変化します。アハ体験のようにゆっくりと。
その後は、夫のリアクション次第で微調整を加えながら、彼との間に明確な境界線を引いたまま、毅然として穏やかに、「のうのうと」居座ります。彼以外に生きがいを見つけると、彼に対する毅然とした態度はとりやすくなります。
対処2:関係のイメージを変える
上記のことをやろうと思う時、「弟との同居」であるとイメージすることが助けになると思います。
想像してみてください。
あなたの状況は、相手を「夫」だと思うと傷つきます。ところが「弟」なら傷つきません。そしてあなたがどう解釈しようが、事実として彼は、夫の動きをしていません。
彼が「弟」であるなら、お互い自由恋愛でもあなたは平気です。「いい人がいたら結婚しなよ」と言われても平気。生活費を貰わなくても平気です。結婚式も記念日も不要。あなたがお節介をする必要は無いし、間違っても媚びる必要は無いでしょう。暴言を言われても、あしらえるだろうし、そもそも傷つかない。日々の喧嘩も、あなたの罪悪感も確実に減るでしょう。
「弟」であるなら、あなたが家事をするかどうかも、あなたの勝手です。だってそもそもその弟は、生活費を入れて無いんだから。
そして、もちろん「弟」というのは、敵対関係ではありません。「家族」です。ただ、あなたが支配される関係では無いだけです。
そして、面白いことに、それでも世間からは普通に「夫婦」に見えて、あなたは普通に「人妻」という社会的地位を保持できるのです。
とにかく、人間関係に悩むときは、自分の中で「愛」より「平和」を優先させると頭が整理できます。
覚悟があるほど有利
正直このケースは、現時点で、彼のあなたへの興味がほとんど無いこともあり、対処は簡単な部類ではありません。
でも、あなたには有利な点もあり、それは、現時点であなたは物理的には、いつでも彼から離れられる立場である、ということです。
あなたはすでに、生活費も女性としての尊厳も奪われ済みです。したがって、よく考えれば、仮に今すぐ別れたところで、あなたにはこれ以上の物理的損失はないはずです。
もしそうだとしたら、むしろ「最悪、別れてもいいや!」くらいに開き直れば、あなたの中で「離婚」と「共存」の二本柱ができるので、心に余裕ができ、その余裕自体が、あなたの立場をさらに有利にするでしょう。
続きの記事<「モラハラ夫がいるから成長できる」…それ本当に因果関係ある?>はこちら
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●離婚しないモラハラ対策カウンセラー Joeさん プロフィール
典型的なモラルハラスメントの関係にある両親の元に生まれ、幼少期を過ごす。
その経験を通して、モラルハラスメントをする人、される人の心理を知り、その後徐々に、周囲の同様の環境にある人たちに、モラハラ対処のアドバイスをするようになる。現在は、世の中の「離婚できない事情のある」モラハラ被害者を対象に、モラルハラスメントの被害を受けないためのメソッドを伝えるため、『離婚しないモラハラ対策カウンセラー』として、個人カウンセリングや各地での講演等の活動をしている。
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