モラハラと愛のあいだ 06-1

「モラハラ被害に遭っている」という現実を自覚して、痛みと向き合って【モラハラ08】

最近「モラハラ」という言葉をよく耳にするようになりました。具体的にどんなことをされたり、言われたりするのか、根底には何か深い問題があるのでしょうか?望ましい解決法とは?そんな課題に取り組む特集「モラハラと愛のあいだ。」第6回は、弁護士の太田啓子先生から見たライターMさんのモラハラについてお話を聞いてきました。

●モラハラと愛のあいだ⑥

我慢している自覚はないです

――モラハラを受けている人はどんな方が多いですか?

太田 暴言を吐かれても最後の限界まで我慢する、堪忍袋が妙に大きいタイプの方は多いです。

 モラハラをする人は、自分の土俵の上だけで話をします。しかも異常に自分勝手な土俵です。被害者になる人は、そこに乗れてしまうんですよ。そして相手が急に不機嫌な態度や暴言を吐いても反射的にいったん受け入れて謝ってしまったりする。マウントを取られてもマウントし返すという発想がなく、彼がそこまで怒るのは自分に何か問題があるのかもしれない、と考えてしまいます。嫌な事を嫌と言うのが苦手な、優しい、気のいい方が多い傾向は感じますが、誰でも被害者になり得ると思いますよ。

――Mさんは我慢強いですか?

M 私は全然我慢強い性格じゃないですよ。

太田 浮気されたり暴言吐かれて我慢していませんか?

M 我慢している自覚はないです。我慢ってもっとストイックな言葉のような気がして、自分は似合わない。ひどい夫とは思いますが、私自身はそこまで追い詰められてないような

太田 追い詰められているって気づくのが辛いとか?

M あぁ、それはあるかもしれません……

太田 たとえですが、セクハラの被害者も似た認識を持つことがあります。自分が被害を受けている、という現状を認めるのは辛いし惨めでしょう。だから、これは勘違いだと否定したり、娘のように扱われているんだと違うストーリーを作り、自分の気持ちを守るために、被害という現実から目をそらしてしまう。また、実際はすごく我慢しているのに、もう慣れたとか、無理はしていないと思い込み、我慢の自覚に至るのがとても遅い人もいますね。

優等生気質で誰にでも合わせてきた

太田 ずっといい子で育ってきた、いわゆる優等生気質の人もいますね。女性は男性に比べ、気が利くことや誰とでも笑顔で接すること、相手の言葉を飲み込んで受け入れることがポジティブに評価されやすいでしょう。それは長所ではあるけれど、長所を発揮できる相手を選んだ方がいいですね。モラハラする人は、そういう長所に付け込んで、暴言や不機嫌さで相手をコントロールしていきます

M 私は、自分の意見を主張したくても、”こういうことを言ったら我儘かな?”という考えになりがちです。我儘と権利の違いがわからないというか

太田 自分がこうしたいという要求を出すのが苦手だから、言いたくなってもこれは我慢するとこかなって自分を抑えちゃうんでしょうね。

その言動は、『モラハラ』と言う名前がつきます

――被害者本人がモラハラされている自覚がない人もいますか?

太田 パートナーの暴言や態度に「モラハラ」という名前がつくことを知って、初めて自分は怒っていい、傷ついていいと気が付く人はたくさんいます。

 たとえば妻が、夫に何か月も無視されていたというケースがありました。しかし妻側としては、無視のきっかけがよくわからない。怒っている理由を聞いても夫から「自ら察しろ」という態度をひたすら取られ続けるんです。妻は色々な角度から振り返って謝りましたが反応がない。そしてついに妻が限界にきて離婚だということになって、後からやっと夫が説明したところによると、妻は何に自分が怒っているのかわかっておらず、察してほしくて無視し続けていたと言うのです。それならそう言えばいいだけなのに、その時はあえて言わなかったわけです。

 このケースでは、奥さんがモラルハラスメントという言葉をネットで見て、「これだ!私の苦痛には理由もあるし名前がある」と知ることがきたのです。そこで離婚を決意しました。

 殴られたり蹴られたりしたら、さすがに被害者側も暴力を受けていると気づきやすいでしょう。しかし分かりやすい暴力でなくても、相手の言動や態度で精神的にダメージを受けることは多々あるのです。

自分がどうしたいか決められない

太田 モラハラを受けている人の中では、自分で決めることが苦手な人も多いですね。被害者の母親が、娘がモラハラを受けている状態を見兼ねて連れてくるケースもありました。また被害にあっている妻本人が離婚を決意できないから、先生に決めて欲しいと言われることもあります。

 弁護士は離婚をするかしないか決めたら動けますが、決まっていなければ法律以前の話になってしまいます。だから離婚したらこうなると判断の材料は提供し、意思が決まったらまた来てくださいと伝えます。自分が本当はどうしたいかは本人が決めるしかありません。時間はかかっても、自分と向き合うことが大事です。

  • 【取材後記】
     モラハラは遠い世界の話では無く、すぐ隣にある世界、自分が被害者になる可能性だって十分にあると思いました。モラハラは加害者も被害者も自覚のない人がたくさんいると言います。相手の一方通行な言動を受け入れ過ぎて実は我慢していないか。長期化すればするほど正常な判断が鈍るかも?人生は短い。次回はモラハラの被害を受けている方へのアドバイスを、引き続き太田先生にお話を聞いています。

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東京生まれ。千葉育ち。理学療法士として医療現場で10数年以上働いたのち、フリーライターとして活動。WEBメディアを中心に、医療、ライフスタイル、恋愛婚活、エンタメ記事を執筆。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
モラハラと愛のあいだ。