モラハラと愛のあいだ 05-3

「妖怪男ウォッチ」ぱぷりこさん:モラハラ夫の暴言の中に「成長の糧」はない【モラハラ07】

最近、「モラハラ」という言葉をよく耳にするようになりました。具体的にどんなことをされたり、言われたりするのか、根底には何か深い問題があるのでしょうか? 望ましい解決法とは? そんな課題に取り組む特集「モラハラと愛のあいだ。」第5回は、「妖怪男ウォッチ」「なぜ幸せな恋愛・結婚につながらないのか 18の妖怪女子ウォッチ」などの著作が人気のぱぷりこさんが、全3回にわたって相談者ライターMの相談をお焚き上げしてくれます。今回は最終回。

●モラハラと愛のあいだ05-3

理性的なところもある。だが、現実認識がゆがんでいる

 前回は、「つらい現実が自分を成長させてくれる」というストーリーを信じる人の心理とリスクを紹介しました。

 Mさんは、「いい作品ができるのが先か、身体が壊れるのが先か。私が自分の成長に納得するのが先か、心がぶっ壊れるのが先か。」と書いているように、つらい環境にとどまり続けるリスクをある程度は認識していると思います。ですが、「成長に納得するのが先か」と書いてあるあたり、やはりMさんは「モラハラによって成長」することを期待しているし、現状維持しようともしています。

 Mさんは、モラ夫の発言の中に「成長するための刺激」を見出そうとしています。ですが、モラ夫は自分が仕事でうまくいかないコンプレックスとストレスを、Mさんにぶん投げているだけです。ウンコを投げつけてくるゴリラに対して「私を成長させてくれる…感謝…圧倒的感謝…」と思えますか?「このウンコの中に、私の生活を豊かにしてくれるダイヤモンドが埋められている…」と思えますか?どちらもC(炭素)を含んでることぐらいしか、共通点はありませんよね?

 まことに残念ながら、ウンコはウンコです。ウンコの中に「成長の糧」を見つけようとしたり、「ずっと続けていればウンコがダイヤモンドになるかもしれない」と期待することは、もはや妄想のレベルに達しているといっても過言ではありません。

 Mさんの文章を読んでいて厄介だと思ったのが、「リスクもひどい現実もわかっている」と理性的であるように見える部分と、「ゴリラのウンコは輝くダイヤモンド」という超現実の妄想部分が、シームレスに入り混じっていて見分けがつきにくいところです。さらりと読んだだけでは「ここまでつらいとわかっていてそれでも離れられないというなら、もう好きにさせてあげればいいのでは?」と思ってしまうかもしれません。

 しかし、Mさんは理性的なところもありますが、明らかに現実認識が歪んでいるところもあります。

モラハラは成長の糧ではない。仕事だけに集中しよう。

 この問題を指摘したうえで、私からの提案は2つ。

 1つは「モラハラで成長」というストーリーを手放すことです。モラハラは、「成長のために必要な刺激・ストレス」を大幅に逸脱しており、成長の刺激になるどころか、深刻な悪影響を与えます。常にマインドシェアをとるため作業量が減り、集中力を削ぎ、寝不足になり、成長どころではなくなります。もはやここまで「自分がつらい」とわかっているのなら、「ゴリラのウンコは輝くダイヤモンド」という超現実の妄想部分も捨てましょう。ね。悪いこと言わないから。

 もうひとつは「仕事だけに注力すること」です。Mさんが苦しんでいるのは「いろいろわかってるつもりなのに、モラハラ夫と離れたくない理由がわからない」ことです。愛なのか?執着なのか?成長への期待なのか?どれなのかわからないなら、まずは「成長への期待」の仮説を検証しましょう。

 一時的に夫とすっぱり物理的に距離を取り(まだ離婚はしなくてかまいません)、仕事に集中して「夫の刺激ウンコなしで成長できるかどうか」を確認してみるのです。もし夫のウンコ刺激がなくても成長できるのなら、「仕事のためにモラハラ夫と一緒にいる」神話は崩れます。もしそれでも夫と別れたくないなら、なにか別の理由があるということです。そしたらその時、また考えればよいでしょう。仮説をひとつずつつぶしていけば、いつかは答えにたどりつけると思います。 

続きの記事<「モラハラ被害に遭っている」という現実を自覚して、痛みと向き合って
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●ぱぷりこさん 恋愛ブログ『妖怪男ウォッチ』を書いている外資OL。恋愛市場にひそむ「妖怪男女」の見分け方を書いている。趣味は恋愛文化人類学、PDCAサイクル、お焚き上げ。

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書籍 『妖怪男ウォッチ』(宝島社) 『なぜ幸せな恋愛・結婚につながらないのか 18の妖怪女子ウォッチ』
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モラハラと愛のあいだ。