「こじらせママ」がミレニアル女子に伝えたいこと

ココナッツオイルの輸入販売でブームの火付け役となった食品会社「ブラウンシュガーファースト」代表の荻野みどりさん(36)。ゼロから会社をつくりあげた彼女だが、4つの大学を中退、転職を繰り返し、結婚・出産・離婚を経験。まさしく激動の人生を歩んできた。自ら「こじらせママ」と称する荻野さんに、悩めるミレニアル女子である私(29)が体当たりで話を聞いてきた。

私、なくすものがないんですよ。強さがあるんです。

――荻野さんの20代を振り返ると、4つの大学を中退した後、百貨店の婦人服売り場の販売員、パソコンの販売員、ウエイトレス、ヨガスタジオの店舗開発管理など数え切れないほどの仕事を経験されていますね。

 人に経歴を話すとびっくりされますが、私の中ではすべて繋がっています。結局、20代は「自分探し」をし続けていたんだろうなと思います。

 私の天職は何だろう、私は何をしたらいいのだろう。とにかく興味ある分野に行ってみて、集中してやってみて、「あ、ここじゃない。違う」と気づいて。また次に行くということを繰り返していました。きっと私にはもっと没頭できること、もっとやりたいことがあるのではないかと思っていました。

――その中で、ココナッツオイルに注目して事業にしたのはなぜですか?

 25歳で結婚して、2011年、29歳の時に娘を出産したのですが、産後数カ月くらいから娘に発疹ができたり、便秘が続くことがありました。母乳で育てていましたから、私の食に原因があるのではないかと思って。あらためて食の大切さを実感したんですね。そこで2011年9月に、安心とおいしさを両立するお菓子を販売するビジネスを始めました。

 その後、バターに代わる良質な油を探している時に出会ったのがココナッツオイルでした。当時、海外セレブの間では愛用している人がいましたが、日本ではまだ知られていませんでした。「これは売れる」と確信し、2013年3月に「有機エキストラバージンココナッツオイル」という名前で商品化にこぎつけました。

――ココナッツオイルは大ヒットして、ブームになりましたね。職を転々としていた20代から、会社経営者として成功を収めるまで来られたのは、なぜだったと思いますか。

 私、なくすものがないんですよ。自分を守ってくれる学歴もないし、自分を守ってくれる社歴もないんです。もうむき出しで勝負するしかなくなったから、強くなることができた。

 それに、これまで色々な経験をしたからこそプラスになったこともあると思います。アパレル業界を経験したおかげで商品のブランディングについて冷静に考えることができましたし、23歳の時に社会人入試で入った駒澤大学で社会学を学んだことで、物事をいろんな立場があることとそれぞれに正義があること、そして全体を俯瞰して考える視点を持てたように感じています。

 あとは、職を転々として苦労したこともあり、「自分にとっての必要最低限」を問い続ける模索する20代を過ごしました。そのおかげで、自分の内面的な幸せや興味関心、自分がどうありたいかというのがとてもシンプルなんです。なにが自分にとって心豊かな状態なのか?をわかっているというのは最大の強みかもしれません。

 悩んでいる20代の人は、自分が何者なのか?という認識がグチャグチャしているのかもしれません。自分の「役割」が整理できていない人が多いのではないかと感じます。

本当に結婚したいのか、子どもを産みたいのか。「役割」を整理する 

――「役割」の整理、ですか。荻野さんの場合は、どうだったんですか。

 例えば、結婚をした瞬間に妻や嫁という役割が生まれます。そして妊娠すると、今度は母という役割が増えますよね。

 私も、完璧ではないけれども、正しいとされる妻や嫁、そして母になろうとすべての役割を同時に頑張ろうとした時期があります。けど、どんどんモヤモヤが溜まっていくんです。

 特に、私は妻や嫁としての自分に悩んでいました。周囲からは「内助の功」を期待されていると勝手に感じて、できていない自分を卑下していた。でも、妻の役割を果たし、嫁として尽くすことにワクワクしないというのが本音でした。

 無意識のうちに、いろいろな「役割」を薄皮のようにまとってしまって、自分が何者であるのかわからなくなっていた。それに気づいて、「役割」を整理することを始めました。

 その結果、私は人に依存して生きていくことにあまり幸せは感じられず、自分で動いて、仕事をして価値を生み出していくのが好きなんだ、ということに最終的に気づいたんです。考えながら夫にも打ち明け、話し合いを繰り返した結果、2016年、離婚という結果に至りました。結婚して9年目、娘が5歳の時です。

――「役割」を整理した結果、妻や嫁であることをやめたんですね。

 すべての「役割」を均等に頑張ろうとしても大変なんです。どの「役割」が苦しいのかを見極め、優先度を下げたり、場合によっては捨ててもいいと思います。

 そもそも結婚したいのか、子どもを産みたいのか。周りがした方がいいっていうからした方がいいと思っているんじゃないのか。ミレニアル女子の皆さんこそ、「役割」の棚卸しをしていた方がいいと思っています。これから先、自分が纏う可能性のある「役割」について書き出してみるのもいいでしょう。

 先にきっちり考えておくと、結婚もパートナーを間違えない(笑)。「自分はこういう人間だけど、一緒に走れますか?」と言えた方が幸せだと思います。こじれる前に手を打つことのできる時期がオススメ。自分がどうしたいか、その判断を常識や他人に任せないで、わがままになっていいと思います。

――荻野さんが今描く夢や目標を教えてください。

 子どもたちの未来に心豊かな食を残すことが、生涯を通してやりたいことです。あとは、もう2人子どもを産みたいですね。まずはパートナーを探さなきゃいけないけどね(笑)。

1988年東京生まれ。慶応義塾大学文学部卒業後、朝日新聞に入社。新潟、青森、京都でも記者経験を積む。2016年11月からフリーランスで活動を始め、取材、編集、撮影をこなす。趣味はジャズダンス。
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