私は私らしく。

自分と向き合う。30歳からの女一人旅〜カンボジア〜

ここではないどこかへ。仕事に追われる忙しない日常を離れ、ゆっくりと自分と向き合うために。頑張る自分へのご褒美として。5日間のカンボジアへ旅をしてみませんか。

●自分と向き合う。30歳からの女一人旅〜カンボジア〜

ハッピー・バースデー・トゥ・ミー。

 30歳の誕生日。

  小学生の頃の「私」は、結婚して、子どももいて、幸せに暮らしている30歳を当たり前に思い描いていたけれど、残念ながら現実は違う。結婚どころか、付き合っている彼氏もいない。親には会う度に「孫の顔が見たい」と遠回しに言われる。

 しかも、30歳という節目のバースデーだというのに、家でパンツ一丁になりながら、お気に入りの缶ビールを飲んでいる。これはこれで幸せ……。そう自分に言い聞かせるけれど、どこか虚しさを感じているのも事実だった。

 何気なくつけていたテレビから流れる旅番組。旅先は、世界遺産のアンコールワット。

「ここは、天空の楽園と呼ばれる、12世紀に建設された世界最大の石造寺院で……」

 同い年ぐらいの女性レポーターが、カンボジアのアンコール遺跡群をめぐるという内容だ。そう言えば、ここ数年、仕事に追われて、あんなに好きだった海外旅行に行っていない。

一旦あらゆることから解放されたい

「……密林の奥にたたずむ、神秘の地。王朝が滅びて数百年、周囲には数々の遺跡が眠り……」

 レポーターの声をBGMのように聞きながら、考える。

 仕事は、楽しい。入社してもう8年。割と順調に昇格もしているし、後輩も増えたし、“中堅”になってきた自覚と責任感はある。

 けど。このままでいいのかな。そんな思いもどこかにある。結婚や出産、転職、海外留学……どんどん環境が変わっていく同級生を尻目に、私は相変わらず、だ。女子会でよく言われる「変わらないよね」とか「一人で生きていけそう」という言葉が褒め言葉なのか、私にはよく分からない。

「本当にきれい。心が浄化されていく気がする。しばらくぼーっと見ていたい」

 ヨガ、ランニング、料理教室、英会話、フラワーアレンジメント。やりたいことは、とりあえずやってきたし、私としては、比較的人生の満足度は高いのだけれど、最近、他人の目が妙に気になって、つらいときがある。

 きっと私は、一旦あらゆることから解放されたかったのだと思う。
 私は吸い寄せられるように、カンボジアへの旅を決めた。

遠くにやってきたという実感

 出発当日。

 仕事の引き継ぎもあって慌ただしい出発になってしまったが、溜まった有給休暇を利用した5日間の旅が始まった。30歳の独り身でも、たまには長期の休みを取らないと、それはそれで周りに気を使わせる。航空券や宿の手配も面倒だったし、久しぶりの海外旅行だったので、結局、パックツアーを申し込んだ。本当に何にもしなくていいので、とても楽だ。30歳になっても、甘えるときは甘えていいんだな、なんて思ったりした。

 ANAのビジネスクラスのフライトで、“スーパーデラックスホテル”の宿代も、食事代も込みでトータル20万円を少し越える金額で申し込めた。あまりお金は使わないので、そこそこ貯金はあるし、たまには奮発してもいいだろう。

 実は初めてのビジネスクラスだったけれど、出発まで空港ラウンジも利用できたし、機内は食事もお酒も美味しい快適な空間。6時間ちょっとのフライトがあっという間だった。ちょっと一人じゃ勿体ないぐらいの贅沢だ。

 異国の空気を思い切り、吸い込む。あぁ、この感じ。遠くにやってきたという実感を全身でかみしめる。

 プノンペンの街。高層ビル。アジアらしい街の喧騒。セントラルマーケット。所狭しと並ぶ食料品店。独特な臭い。銀板が敷き詰められた寺院・シルバーパゴダ。ココナッツの効いたカレーと、青パパイヤのサラダ。1日1日がめまぐるしくも充実している。

 ツアーには日本語を話せる現地ガイドが付く。彼の名はチョーイと言った。いつもニコニコしていて、少し古い、日本のギャグを言ってよく笑わせてくれた。夕食どき、現地の伝統料理、クメール料理を食べていると、そのチョーイが話しかけてくれた。

「ノゾミさんだけ一人で参加してます。ナンデダロウ〜?」
「あー、いや、友達とか誘ったんだけど、みんな忙しくて。だから一人で来たの」
「そうですか。一人なんて、そんなの関係ネッ! そんなの関係ネッ! はい、オッパッピー!」

 あはは、そんなの、関係ない、か。屈託のないチョーイの笑顔がなんだか忘れられなかった。

心がフッと軽くなる。

 旅のハイライト、アンコールワット。それをこの目で見たとき、私は素直に感動した。

 南北1300メートル、東西1500メートルのお堀に囲まれて、5つの塔や回廊からなる世界遺産。そのダイナミックさに圧倒されながらも、ヒンズー教の神々や古代インドの叙事詩を描いた緻密なレリーフは、ストーリーがあってとても繊細で。特に、遺跡の方角から朝日が昇ってくる瞬間は、インスタ映えとか、フォトジェニックとか、そういうのを通り越して、自然と涙があふれ出た。

 大学生じゃあるまいし、いまさら自分探しの旅に出たわけではないのだけれど、やっぱり自分のスケールを遥かに超えたものを見たら、「自分ってちっぽけだな〜」と思わされた。ちっぽけなのに、周りと比べてあくせくしていた自分がとても恥ずかしくなったけれど、同時に、なんかフッとモヤモヤが軽くなった気もして。

 女30歳、旅の効能は意外にあったのかもしれない。…さて、次はどこに行こうかな。

ANAビジネスクラス利用でアンコールワット・アンコールトムなどカンボジアが誇るアンコール遺跡群をたっぷり満喫!スーパーデラックスクラスホテルにゆったり2連泊する世界遺産アンコール遺跡群とプノンペン5日間の旅(主催:阪急交通社トラピックス)

当ツアーに関するページはこちら

※この話はフィクションです。
※ツアーの料金は出発日によって異なります。

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