JUMII TOKYO 代表取締役 前島ゆみ(36歳)

やりたいことを発信していれば、誰かが助けてくれる。

ネイルブランド「JUMII TOKYO」代表取締役 前島ゆみ(36歳) 「忙しい女性の手元を美しく」をコンセプトとしたネイルブランドの企画・運営・販売を行っている前島さん。「好き」を仕事にしている彼女は、8歳の息子のシングルマザーでもあります。ここに至るまでどんなキャリアを積んできたのか、話を聞きました。

未経験から飛び込んだ、ファッション・コスメの世界

 もともと大学の時は、マスコミ志望だったんです。でも大学3年の時に父が亡くなり、母が心配だったので、残業なし、家から近いという条件で会社を探し直しました。それで地元の信金に就職したんですが、入って3日で合わないと気づいてしまって。ファッションが大好きだったんですが、ネイルもダメというお固い職場でした。それでも入ったからには、なんとか1年は続けました。

 その後ファッションの世界に行きたくて、未経験からベンチャーに転職。社員も社長もみんな若くて、すぐにいろいろな仕事を任されました。でもファッションのサイクルはとても早くて、ここで売上を立てていくのは相当難しいぞ、と気づいたんです。

 もう少し息が長い化粧品でチャレンジしてみたいと考えて、社長に化粧品のECサイトをやりたい、とかけあいました。とにかくやってみる精神で立ち上げて、仕入れ、営業、発注、コンテンツの執筆…全部が初めてでしたが、無我夢中で取り組みました。

 そのうち自社ブランドをやりたい、という話になり、益若つばささんとの縁があって、彼女プロデュースのコスメ「CandyDoll」を作って販売しました。様々な仕掛けも功を奏しびっくりするぐらい売れて、つばささんとともにコスメも世の中に知られて。今だったら「ブラック」と言われる働き方でしたけど、充実していましたし、この働き方がなかったら今の私はなかったと思います。

子どもを産んだら自分の時間がなくなって…

 それが変わったのは、28歳で出産したとき。それまではまつげエクステ、ネイル、美容院……自分にかけられる時間もお金も十分あって、キラキラしていました。でも子どもを産んだら、自分のことは二の次。毎日メイクも適当で、自分って何なんだろう、なんてちょっと落ち込んだりもしました。

 そんな時にふと、ドラッグストアでマニキュアを買って、塗ってみたんです。そしたら塗っただけなのに、すごく気持ちが華やかになって、そこからマニキュアにハマりました。いろいろと調べていると、ドラッグストアで売っているものはパキッとした色ばかりで、ちょっとくすんだような色がない。高級ブランドは高すぎる。だったら、自分で気軽に使える、大人女性のためのネイルブランドをやりたい!という気持ちが大きくなっていきました。

 あとは、子どもを産んだことで結婚生活にも変化がありました。それまでは恋人同士だったのが、子どもが生まれると私は子どものことが一番になってしまって。夫との価値観の違いがだんだん大きくなって、結局離婚という結論になりました。

 離婚して、自分で生活費をすべて稼がないといけなくなったので、独立といっても自分一人でやるのは難しい。勤めていた会社の社長に相談したら、業務委託でうちの仕事を続けながら、自分の仕事もしたらいいという提案をくれました。なんでも言ってみるものですよね。その後徐々にブランドが軌道に乗って、業務委託の割合は減りましたが、今でもおつきあいはあります。すごく感謝しています。

やりたいことは、口に出して言ってみる

 今は子どもがいることもあって、メリハリをつけて働いています。たまに、子どもを仕事の打ち合わせに連れて行くこともありますよ。男の子なんですが、私の仕事に興味を持ってくれているみたいで、新しい色の提案をくれたりもします。将来有望です(笑)。

 最近、起業やフリーランスがもてはやされる風潮もありますが、私は「起業したい」と思ったことは一度もないんです。自分のやりたいことを考えていったら、起業という手段にいきついたという方が近いです。

 なんでも、自分のやりたいことを口に出していくことって大切だと思います。世の中って思っているより優しいなって感じます。真剣な気持ちが伝われば、助けてくれる人が現れてくれるな、って思っています。

 ブランド立上げ直後にポップアップイベントをやったんですが、その時に中高の同級生が来てくれたんです。彼女に「中学の時に、マニキュアしてるときって心が落ち着く、って言ってたもんね」って言われました。自分では全然覚えてなかったんですが、実は昔からここにつながっていたのかな、ってちょっと不思議な気分になりました。人生って面白いですよね。

朝日新聞バーティカルメディアの編集者。撮影、分析などにも携わるなんでも屋。横浜DeNAベイスターズファン。旅行が大好物で、日本縦断2回、世界一周2回経験あり。特に好きな場所は横浜、沖縄、ハワイ、軽井沢。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。