「好き」を仕事にする。

経験ゼロの女性が、人気のワンピースブランドを作れたのはなぜ?

アパレル未経験でワンピースブランド「Ayuwa」を起業した渡部雪絵さん。徹底的に働く女性のことを考えてつくられたワンピースが、いま口コミで人気を集めています。何が女性を惹きつけるのか?その秘密について探りました。

●特集「好き」を仕事にする。

自分がおしゃれじゃないから、流行にとらわれない服にしたかった

 もともと自分が「おしゃれ」とは全く思っていなかった渡部さん。金融機関などのいわゆる「お固い」職種についていたこともあり、「きちんと見える」という観点から服を選んでいたそう。そんな時に助けてくれたのが、ワンピース。ワンピースは1枚着るだけでサマになるし、ジャケットを羽織れば客先にも行ける、そして女性らしさを感じさせる万能アイテムです。起業を考えた時に、大好きなワンピースで起業しよう、徹底的に働く女性に寄り添うものにしよう、と考えたそうです。

 おしゃれに自信はないけど、きちんと、華やかに見せたい。できれば、10年前でも、10年先でも長く着られる、流行にとらわれない服を着ていたい。そう思っている女性も多いのでは?「私はまさに、そういう服を作りたいと思ったんです」と渡部さん。アパレルの経験はないながらも、いろいろな人のアドバイスを受けて服作りを進めたそうです。

 ブランド名の「Ayuwa」は、「A Yukie Watabe story」、渡部雪絵という人のお話、という意味。渡部さんの人生のストーリーが今の事業につながっている、という思いが込められています。造語なのでウェブサイトのドメインも取りやすく、「あいうえお」順で並ぶといつも一番最初に来て、目に留めてもらえるという思わぬ効果もあるとか。

見た目より機能重視!でも、それがいい

 「Ayuwa」のワンピースは、とにかく機能重視。きちんと見えるようにはしたいけど、窮屈なのは嫌だ、という思いから、素材はほとんどが伸縮性のあるものばかり。すべての商品が自宅で洗える素材です。ワンピースをあまり着る機会がない人は、1回着たらクリーニングに出さないといけない…と思うだけで、購入するのもためらってしまいがち。家で洗えれば、そんな心理的ハードルも下がります。

 縫製も、縫い目が見えにくいような「おしゃれ」な縫製は糸がほつれやすいので、ちょっと縫い目が見えてもいいからと、しっかり2重に縫われています。それから、スカート部分にはポケットがついています。全体のラインを美しく見せたいなら、ポケットはつけないのが常識ですが、仕事中に携帯だけ持って、とか、名刺入れだけ持って、という時にポケットがあるだけで自由に動きやすい。ここも働く女性の意見を取り入れているポイントです。

 ワンピースには、渡部さんが想定していなかった思わぬ反響もあったそう。「下半身が太めで、自分自身の体型をカバーするためにつけたタック部分が、「スタイルをよく見せる」という効果があると言われたんです」。ぽっちゃりの方だけでなく、細すぎて既製の服が合わないという方からは、タックが立体感をつくりだすため「やっときれいに見えるワンピースに出会えた」という声も届いたそうです。

「ファッションで未来をつくる」

 自身も4歳の男の子の母である渡部さん。子どもを産んで、子どもたちを取り巻く環境や社会のことに目を向ける機会が多くなったそう。国内だけでなく、海外の児童労働などへの問題意識はあるけれど、どうにかしたいなと思っても自分には力がない。だったらやれることから始めよう、と始めたのがチャリティプログラムです。

 1アイテムにつきワンコイン(500円)が、児童の問題に取り組んでいる団体へと寄付されます。オンラインショップでアイテムを購入した際は、購入者自身が寄付先を選ぶ仕組みになっています。「ファッションを通じて、子どもまわりの社会的な問題に触れる機会をつくるために導入した取組み」とのことです。寄付先の団体とは必ず会って、どんな人が運営しているのか、団体の理念などをしっかり確認しているそうです。

 2017年から2018年春までは、「すべての女性にラクして美しくを届けたい」というテーマで、産後に起業した女性3人とともに「ラク美プロジェクト」にも取り組んだ渡部さん。「”キラキラ女子”にはなれないけど、”ぼさぼさ女子”にもなりたくない」、「自分らしく生きるを応援する」など、頑張りすぎないけどきれいになりたいという女性を応援しています。「ラク美プロジェクト」として百貨店へのポップアップショップを展開するなど、徐々に活躍の場も広がっています。

未婚、既婚、子どもの有無、転職や独立の経験者。恋好き、旅好き、おいしいもの好き(缶チューハイ含む)。さまざまなstoryを持つ「telling,」編集部メンバー。
フォトグラファー。岡山県出身。東京工芸大学工学部写真工学科卒業後スタジオエビス入社、稲越功一氏に師事。2003年フリーランスに。 ライフワークとして毎日写真を撮り続ける。
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