フリーランス・マーケッター(39歳)

新しい形で仕事を始めて、自信や誇りを取り戻した感じです

フリーランスのマーケッター(39歳) 10年以上携わったマーケティングの仕事が好きだったけれど、妊活を機に退社。今は子どもとの時間を大切にしたいから、就職はしないで、自分らしく働く方法は? フリーランスで始めたマーケティングの仕事に、これまでとは違うやり甲斐を感じています。

 大学院で広報戦略を学び、家電やアパレル、外資系ヘルスケアメーカーでマーケティングを担当してきました。妊活に専念するために会社を辞めたところ、思いがけず、すぐに妊娠。子どもは、もうすぐ2歳になります。今はフリーランスでマーケティングの仕事を始めたところです。

ブリトーを迷わず買えるようになりたい!

 妊娠中から出産後まで、1年半ほど無職でした。お金を稼いでいないと、日常の10円のやりくりが気になります。
 夫婦二人の頃は、朝食にコンビニのブリトーをよく食べていたんです。でも、無職だと、ブリトー1個250円、二人分で500円……それは贅沢かなと思って、隣にある6枚165円の食パンを手にしていました。
 だけど、「ずっとそういうふうに買い物するの? 欲しいものではなく、安いものという基準で」と、ふと思って。それはわびしい。小遣い程度でいいから稼ぎたい、ブリトーがさっと買えるようになりたい!って。

 でも、フルタイムで働こうとは思いませんでした。子どもが愛おしくて、今は一緒にいたいから。それがしたくて会社を辞めたのだから、会社員に戻るのは意味がない。
 じゃあ、私には何ができるだろう? フレシキブルに働けて、私がお金を稼げることって? やっぱり、マーケティングしかないと気がつきました。

「やります」と宣言したら仕事が来て、ネットワークが広がった

 出産した翌年、「今年は目標を立てて動いてみよう」と決めました。今の私は何も持っていないので失うものはない、何をやってもプラスになると思ったんです。目標は「今週は名刺を何人に渡す」「1カ月にセミナーに2つ参加する」など。
 区で開催された「私らしく働こう」というセミナーに参加したとき、そこで「マーケティングをやります!」と宣言したら、その後「探している人がいるよ」と声をかけていただいて。また、セミナーで知り合ったママたちに、いろいろな人を紹介してもらい、新しいネットワークが広がりました。

思いもしなかった人たちが、気軽に声をかけてくれる

 フリーでマーケティングをやっている人は珍しいので、重宝されるようです。会社で専門職を採用する余裕はない、気軽に専門家に頼んでみたい。そうしたスポット的な依頼がきました。需要があったんですね。
 思いもしなかった方々が気軽に声をかけてくださって、驚いています。保育園の運営会社では商品開発のマーケティング、また起業したばかりの方とは市場でのポジショニングやターゲットなどを一緒に考えています。アーティストの方からは、「自分の作品をどう世の中に発表していくか」といった依頼も。

 会社員時代のマーケティングは社内で行っていたこともあり、閉ざされたイメージでしたが、今は広がりや自由さを感じます。
 フリーランスですから、やった分だけ報酬になります。それにプラスして、相手に喜んでいただいているのをダイレクトに感じられます。それは、会社員のときには味わえなかった達成感。やり甲斐があります。

営業もギャラの交渉も、全て自分でやる。それも楽しい!

 仕事の営業もギャラの交渉も、全て自分でやらなくてはならないのですが、それも新鮮で楽しい。「自分で稼いでいる感」があります。
 先日、子どもの預け先がどうしても見つからなくて、クライアントにおそるおそる「連れて行っていいですか?」と聞いたら、「全然かまわない、大丈夫よ!」と言ってくれて。あれ? 自分の都合で働けるんだ、って。こういう働き方は想像していなかったけれど、今の自分にぴったりです。

 おかげさまで、ブリトーを迷わず買えるようになりました(笑)。「今日は280円のでもいいよ!」って、心の余裕もできたりして。新しい形で仕事を始めて、失いかけていた自信や誇りを取り戻した感じです。

恵比寿にて

女性向け雑誌編集部、企画制作会社等を経て、フリーランスの編集者・ライター。広報誌、雑誌、書籍、ウェブサイトなどを担当。不妊体験者を支援するNPO法人Fineスタッフ。
フォトグラファー。岡山県出身。東京工芸大学工学部写真工学科卒業後スタジオエビス入社、稲越功一氏に師事。2003年フリーランスに。 ライフワークとして毎日写真を撮り続ける。
街頭インタビュー