占い師・心理セラピスト(42歳)

占いを始めたころは、他人の人生を通じて自分を見ていました。

心理セラピスト、占い師(42歳) 彼女のセラピーを、1度受けたことがある。誠実に相談者と向き合う姿勢や、サラリーマン時代に悩んだという話を聞き、どんな人生を歩んできたかを知りたくなった。『どうして占いや、セラピーを始めたのですか』。聞き上手の彼女は、話し上手でもあった――

 占い師・心理セラピストとして活動し、10年になります。依頼者の9割が女性で、年齢は10代から60代まで。残り1割の男性は、経営者や管理職の中高年が多いです。男性からの相談内容は……仕事のことばかりと思われるかもしれませんが、いろいろあります。恋愛も。そうそう、恋の悩みの中でも数多いのが「復縁したい」という思いと、どう折り合いをつけるか……。自分の潜在意識を見つめる「復縁セラピー」が好評です。

 占いを始めたころは、他人の人生を通じて自分を見ていました。

 占いやセラピーに興味を持ったのは、仕事との向き合い方に悩んだからです。社会人になって一般企業に入り、25歳で辞めました。結婚したのが26歳。あ、でも寿退社ではないんです。「もっとやりたいことを探そう」と退社し、そのタイミングで結婚が決まった。相手は3歳上のサラリーマンでした。

あの時は「天職を見つけなきゃ」という思いが最優先でした。

 新婚時代、ハローワークの臨時職員として1年間働きました。「結婚したら専業主婦に」とか「早く子どもが欲しい」とは思わなかったなあ。あの時は「天職を見つけなきゃ」という思いが最優先でした。しかし、そう簡単には見つからない……。求職者を支援するうち、「人の役に立てている」と実感できました。それで「これが自分の天職だ!」と。

 そこで、家事をしながら1日8時間、公務員試験の勉強に打ち込みました。人生で一番、頑張りましたね。どう生きていいかわからなかった……。だから、がむしゃらになれたのだと思います。1年間かけて勉強し、一発合格できました。

 合格通知が届いたのが28歳の時。労働関係の仕事ではなかったけれど、「人の役に立てる」と思い、地方公務員になりました。でも、ただ、ただ力不足を感じたなあ。出納課で書類とにらめっこする毎日に、「空回りしている」と思っていました。そして32歳で再び、サラリーマンを辞めたのです。パワハラやセクハラがあったわけではありません。自分を追い詰め、心を病んでしまった。つらかったです。

「何で、こうなったんだろう……」

 理由を知りたいと思いました。公務員を辞める1年ほど前に離婚もしています。自分に余裕がなくなって感情が不安定になり、夫とコミュニケーションできなくなっていました。その時、占いやセラピーに出合いました。そして、派遣社員として働きながら、ノウハウを身に付けていったのです。

 今なら「なぜ自分を追い詰めたのか」が分かります。「形にこだわりすぎていたのだな」と。肩書き、組織、評価、居場所、体裁、期待……。「形」は、目に見えないけれど、自分に圧力をかけてくる。形にはまることができず、順応できない自分を責めてしまっていました。

 駆け出しの占い師・セラピストだったころは、相談者の悩みを聞きながら、自分の生き方を考えていました。しかし、最近は他人の人生を客観的に見ることができています。相談者がベストの道を進むことができると信じ、自信を持って助言できるようになりました。

夫、母、猫といる時間が、一番幸せを感じられます。

 2017年1月に再婚したことも大きかったですね。「天職は何か」を探しながら、少しずつ自分を変えようとし、変化を感じてもいましたが、最後のひと押しになったのは夫でした。11歳下のサラリーマンです。彼は副業をしており、職場以外の人脈もある。既成の概念にとらわれない人です。今、家族……夫、母、猫といる時間が、一番幸せを感じられます。

 占星術で、それぞれの人を占うための天体の配置図を「ホロスコープ」といいます。相談者の生年月日をもとにホロスコープを見ると、中には「恋愛運が最悪」という星のもとに生まれた人もいる。そんな人は、「だから私はダメなの?」と言ってきます。でも恋愛で理想のパートナーシップを求めるからこそ、苦しんでいる。恋愛に喜びを見出そうとするからこそ、悩むのです。

 私は、こういいます。「悩んで当たり前です。それがあなたの生きるテーマですから」と。

富山市にて

北陸に拠点を置く新聞社でスポーツ、教育・研究・医療などの分野を担当し2012年に退社。現在はフリーランスの記者として雑誌・書籍などに執筆。
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