【真船佳奈】#1後編 貧乏旅行の5倍のコストでも「ビジネスクラスは最高」【ぼっち旅】
●#1 「ビジネスクラス」というドーピング剤を使う〈後編〉
一気にADに戻った
さて、はるばる乗り継ぎ地の韓国にやってきた。
勘のいい皆さんならお気づきだろう。
NYに行くはずなのに、わざわざ逆方向の韓国に来ている。
航空券を少しでも抑えるために、逆走している。カッコよくいえば、ねじまきのおもちゃさながら一回逆方向に飛んで勢いをつけて、目的地までひとっ飛びする計画である。
とはいえ、乗り継ぎの時間まで12時間。
勢いをつけるにしても、溜めすぎである。
私の悪い所は、なんとかなったことがほとんどないのに「まあなんとかなるだろ」と思ってしまうところだ。
今回も例に漏れず(まあ、なんとかなるやろ、なんてったって私はビジネスクラスの客だからな、フヒヒ)と思ったのが運の尽き、地獄のスタートだった。
仁川空港はマンモス空港。空港内にはリクライニングチェアや、フラットソファーが多数あり、空港泊に優しい空港として知られている。
まず空港内のカプセルホテルへ。満室だった。仕方なく空港のラウンジに行くも、「朝5時まで使えない」と告げられる。じゃあリクライニングチェアで寝ようかな、と空港泊コーナーに足を踏み入れた私が目にしたのは、床まで埋め尽くされた人と、免税品輸送スタッフがその間を縫ってせわしなく移動している絶望的光景であった。
そんなわけで、本日の宿はこちらに決定した。めちゃくちゃ普通の椅子である。明らかに座るために作られている。
さっきまで(いやあ私も偉くなったもんだなあ)と思いながらシャンパンを飲んでいたのに、一気にADに戻った。
(これもネタになるよ!)と言い聞かせたが、明るいわ寒いわうるさいわで全く眠れない。さらにぼっちのため、荷物を守ってくれる人もいない。仕方なく頭の下に持ち物の中で最も高価なパソコンの入ったカバンを敷いて寝ているので痛くて仕方ない。
最終的に耳にイヤホン、目に「蒸気でほっとアイマスク」、首から財布を提げる家なき子スタイルで寝た。まさに同情するなら金をくれ状態だ。顔が寒かったのでマスクで保護した。ほっとアイマスクはリーマントラベラー・東松さんのおすすめグッズであるが、この旅のナンバーワン活躍アイテムとなった。私もそんな素敵なアドバイスができる旅人になりたいが、とりあえず私が言えるのは「やっぱり椅子は寝るために作られていない」ということくらいである。
天国と地獄 行ったり来たり
地獄のような一夜を終え、朝がやってきた。ラウンジがオープンすると同時に逃げ込み、一心不乱にジャムパンをむしり食った。ちなみに韓国の航空会社だけあって辛ラーメンが常備してあるがとても弱った朝の胃には向かない。食べたけど。
予約制でシャワーも浴びられる。鍵をかけ忘れたせいで間違えて入ってきた日本人男性に裸を見られ、その上悲鳴を上げられるという悲しいハプニングもあったが、傷ついた心をマッサージ椅子で癒すことができた。
まさに天国と地獄を行ったり来たりする人生である。その後、14時間の長時間フライトもそれはそれは優雅に過ごすことができた。
機内がステキなアトラクション
こうして夢のビジネスクラス搭乗を果たした私だが、いま振り返ってみても「本当にビジネスクラスは最高だった!」と断言できる。
今までは、窮屈な席に体を無理やりねじ込み、トイレにも十分にいけず、首の痛みをこらえてやっと少し眠れても、目を覚ました時「うわ…全然時間すぎてないじゃん」と絶望するのが常だった。そして目的地に着いた途端、眠りこけて1日を無駄にするだけでなく、時差ボケを引きずってしまうこともしばしばだった。
ところがビジネスクラスでは、フルフラットでしっかりと寝ることができる。好きなだけ飲んで食べて、ガーガー寝る。時差ボケを感じずに到着直後から精力的に動ける。何より、「まだ到着しなくていいのに!」と思ったのは初めてであり、機内がすでに素敵なアトラクションと化していたのには驚き。
「ビジネスクラスアップグレード」というドーピングを行うだけで、びっくりするくらい移動も、その後の旅行も快適になる。楽しい旅行の帰りも「飛行機乗るの楽しみ!」と思えるのはすごいことである。
ただ、今回の旅行の総額が今までの貧乏旅行の5倍くらいの金額かかってたので、次に乗るのはいつになるか分からない。
- やっと次週、NYに降り立ちます。エピソード2「ぼられている方が旅は楽しい」に続きます。タイトル通り、思い切りぼられてきます。
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第2回【真船佳奈】#0後編 映えない、孤独、飲食店難民、ぼっち税…ぼっち旅デメ
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第3回【真船佳奈】#1前編 なぜ私が「ビジネスクラス」での旅行にこだわるのか【
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第5回【真船佳奈】#1画像 「ビジネスクラス」での旅行にこだわるわけ【ぼっち旅
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第6回【真船佳奈】#2前編 初歩的なぼられ方をしてNYの通行人全員が詐欺師に見