夫婦カウンセラーが指摘する「セックスレスになる3つの要因」って？【セックスレス04】

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セックスレスを引き起こす3つの要因

　セックスレスの原因は、「仕事が忙しい」「モラハラ」「性欲がない」「家族になった」……などいろいろと言われますが、私はそれらはすべて無意識の「言い訳」だと考えています。セックスレスになる要因は、シンプルに3つ。「個人の問題」「社会的な問題」「関係性の問題」です。

　このうち「個人の問題」というのは、たとえば何らかの病気などがある場合。性機能不全や、性別違和という性に関係する疾患、以前性被害にあったというようなPTSD、潔癖症など性に関することを回避したい症状、それから性には直接関係ないですが意欲がなくなるという点で統合失調症、うつ病（もしくはうつ状態）なども該当しますね。しかし、私が今までお会いした方の中でも数名なので、数％程度だと考えます。

　「社会的な問題」というのは、「残業時間が多すぎて、結果的に肉体的疲労がある、または実際に行為に及ぶ時間がない」などがこれにあたります。しかし、たとえば残業を月100時間以上していたら全員がセックスレスになるのかというと、そうとは言い切れません。これは背景要因としては相当な影響力があると思いますが、セックスへのモチベーションとの兼ね合いなので、個人差もあり少し曖昧です。

　最後に「関係性の問題」ですが、セックスレスに陥っているカップルのうち、私のクリニックにいらっしゃる方々のほとんどはここが主な原因になっています。ここでキーワードになるのは、「怒り」と「恐怖感（や傷つき）」です。

怒り、傷つき、心を閉ざす

　モラハラ、DVは言わずもがなですが、話し合いの時にいつもいつも論破されたり、怖い一瞬を見た、なども怒りや恐怖につながっていきます。「怒っている」や「傷ついている」というのは自分だけの感覚で、相手に対してなかなか表現しにくいものです。
　人間は、「自分が怒っている」「自分が傷ついた」と考えるより、「あなたの〇〇がおかしい」といった具合に、相手に原因を押し付け、非難する方向に持っていきたくなってしまう。このときは、相手に対して心を閉ざしている状態です。そして、非難を向けられた相手はそのことに傷ついたり、怒りを感じたりして心を閉ざします。心を閉ざしているから、体も閉ざす。結果的にセックスレスになっていきます。

　ほかによくあるケースでは、「頑張って誘ったのに拒否された」場合があります。拒否された方は、拒否した側が想像する以上に心の傷を負います。だから拒否すべきではない、ということではなくて、それでも安心な感じが持ち続けられるかが問題なのです。
　たとえば、「今夜は夕飯に〇〇食べに行こうよ」という提案を拒否されたからといって、深く傷つくことはあまりないはずです。そのことが２人の関係性に影響をもたらさない、という安心感が双方にあるからです。

セックスは「行動」でもあり「心」でもある

　セックスレスの難しいところは、セックスが「行動」であるということです。行動だととらえると、「する」「しない」のシンプルな二択のように思えるので、どうしても浅く考えがちな人が多い。しかし、継続的なパートナーとのセックスは浅い話ではなく、「心」の問題。2人の関係性の深い場所にあるものなのです。

　セックスレスになると、どうしても「セックスレスを治すには」というわかりやすいハウツーを求めてしまうものですが、そんなに簡単なことではありません。「したくない」と思っている相手にセックスをしてもらうのは、夫婦や恋人ではない赤の他人に置き換えたらとてつもなく難しいことだとわかるはずです。ただ、カップルだと「するのが当然だ、するべきだ」という思いがあって、本質が見えなくなっているんですよね。

※後編では、セックスレスが問題の隠れ蓑になっている？ということについて伺いました。

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• ●西澤寿樹さんプロフィール
  1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「＠はあと・くりにっく」（東京・渋谷）で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職。