夫婦カウンセラーが語る「セックスレスの2人に潜む、本当の夫婦の問題」
●セックスレス
「話し合いで解決」は幻想?
日本のカップルの場合、問題が起こらないことを良しとする傾向が強いです。意見が違ってもなあなあにしたりして、トラブルが起こらないように過ごしていたり。でもそうしてやり過ごしていると、例えば妊娠・出産、家を買う、3年が経過した、恋人の場合だと結婚したなどのイベントがきっかけで、ダムが決壊するように不満が噴き出すことがあります。
人間なのですからそれぞれ違うニーズ、思いがあり、折り合いがつかないことがあるのは当然です。それを「話し合い」で解決していこう、というのが一般的な解決法と思いがちですが、実はそれも「話し合い」という名の「説得」となっていて、片方に納得感がないまま「解決」となっている場合が多いのです。そもそも「話し合いで合意できれば、うまくやっていける」という思考もファンタジーにすぎません。お互い合意できないことがあっても、どう仲良くやっていくか。違いがありつつも、どうやって一緒にやっていくか、という考え方になれるといいと思います。
問題の本質から目を背けずにいられるか
夫婦間にさまざまな問題が起こって、その「しわ寄せ」のような形で出現してくるのが、セックスレスという状態です。セックスは情緒的な関係性の上に成り立っているもの。だから心が通い合っていなければ、中・長期的には関係を持とうと思わない方向に進みます。セックスレスになっているカップルは、やはり2人で過ごす時間、話す時間が短い傾向にあります。
本当の問題がわかってしまったら、夫婦関係が崩壊してしまうのではないか? という不安があり、無意識にセックスレスを隠れ蓑にしているということもよくあります。セックスレスは多くの場合、夫婦関係のしわ寄せですから、元になった本当の問題(関係性の問題)があるはずなのです。
たとえば、ある日、夫がセックスを拒んだとして、それはその日はどういうわけかそういう気分でなかっただけかもしれません。ただ、一方で、夫との関係に以前ほどの充実感がないなあと感じている女性は、セックスがあること=愛情があると信じたいかもしれません。本当の問題は「私のこと、好き?」と聞くことが適切なアプローチかもしれないのに、それにNoといわれたら……と不安になってしまう。だから愛情を直接確かめるより、セックスレスのことを話したほうが安全な感じがしますし、さらには、目に見える問題はないしそこそこ仲良くやっているのだから、セックスレスでもいい関係、と自分に目をつぶらせることになったりします。現実にある問題を掘り起こしてまで、その相手と一緒にいたいか? 愛情はあるか?ということも考えてみてください。
愛情は「興味・関心」につながるはず
愛情とは、興味・関心を持ち続けることなんです。子どもの成長は毎日見ていても飽きないように、大人だって興味があれば、毎日違うな、新鮮だな、と思っていろいろな話をできるはず。例えるならば、趣味の車と一緒です。車は手入れしなければ走れなくなると知っているのに、夫婦関係はメンテナンスなしでも大丈夫、とあぐらをかいている方が非常に多いのではないか、と感じています。あなたはちゃんと、パートナーと話していますか? まずは日々の生活を見直してみてはいかがでしょうか。
- ●西澤寿樹さんプロフィール
1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職
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