会社経営(47歳)

雑貨店で世界の女性のWill―ありたい姿―を応援しています。

会社経営(47歳) 東京・白金台に週に2日ほどオープンする雑貨店があります。「女性×はたらく」をテーマに就労支援などのビジネスを手がける(株)Will Labの小安美和さんが運営する「Will Gallery」。世界各地から集まった女性の手による商品は、一つひとつにストーリーが刻まれています。

つくり手とそれを応援する人のストーリーがある

 もともと雑貨が好きで、いつかはお店を持ちたいと思っていたんです。2年前、アフリカ・ルワンダで出会った、カラフルな絵柄のバスケットに一目惚れ。売る予定もないのにたくさん買ってきてしまった。これがきっかけとなり、今では「Will」というオリジナル絵柄も作ってもらっている、Will Galleryの看板商品です。

 カンボジアの女性が作るカラフルなおさるさんの編みぐるみは、手の部分にマグネットが入っていて、冷蔵庫に付けたり、バッグに付けてマスコットにしても。村に働き口がない女性がニットを編む技術を身につけて、自宅でお金を稼げるようになったのです。
 ドロップ型とスクエア型のイヤリング&ピアスは、ミャンマーのタティングレース製。家計を助けるために母から娘へと伝えられた繊細なレース編みで、この美しさに惚れ込んだ日本人女性がアクセサリーブランドを立ち上げて、販売を始めたもの。

 Will Galleryで扱う商品には、つくり手とそれを支援する人のストーリーがあります。私はストーリーと共に、商品を紹介・販売することで、たくさんの女性のWill(ありたい姿)を応援しています。

独立するとき、ぴったりの物件が見つかった

 シンガポールや上海で暮らしていたときに、周辺国を旅しました。マレーシア、インドネシア、タイ、カンボジア、ベトナム、ミャンマー、ラオス……。

 そのときに感じたのは、国や地域による生活水準の差です。都市では豊かな暮らしでも、農村では畑仕事を手伝うために、学校に行けない子どもがいます。算数を習っていないので計算ができない。両親はそれをわかっていても、生活のためにはどうすることもできません。貧困が教育格差、やがて就労格差につながることを実感しました。特に女性は、男性に比べて、その影響を受けやすいですよね。

 こうした現状を事業として解決することはできないだろうか?と思ったのです。30代後半のときに考えた私のライフプランは、40代で出産と起業、50代で国内の就業支援、60代で海外事業を手がける、というもの。

 1年半ほど前に執行役員を務めていた会社を退職して独立するとき、思いがけず、ギャラリーにぴったりの物件が見つかって。予定より随分早いけれど、心のどこかで「今やるべき」と思っていたのかもしれませんね。

実際に自分の目で確かめるため、つくり手を訪ねる

 商品がどのように作られているのか、実際に自分の目で確かめるために、「毎月1カ国、現場を訪ねる」を目標に1年間活動しました。つくり手となるパートナーの開拓です。
 海外の制作現場を訪ねて見えてきたのは、収入もさることながら、「皆で集まってものを作ることが楽しい、つながりができてうれしい」という、女性たちの思いです。

 日本でも、東日本大震災で被災した岩手県の女性たちが集まり、全国から提供されたタオルと糸で「復興ぞうきん」を作っています。コミュニティとしての役割が大きく、そのWillを支援するためにギャラリーで販売しています。
 また、宮城県気仙沼では育児中の女性が働く場を作ろうと、藍染め商品を生産・販売し、藍や幻の染料といわれるパステルを栽培して、気仙沼発のインディゴ商品を海外に発信する事業に取り組む女性もいます。

 そうした、何かをしたい、自分の手で未来をつかもうとしている人の「Will」を応援するのが、このギャラリーなんです。

オープンは週2回。そのときの出会いを楽しんで

 「女性×はたらく」をテーマに活動するうちに、雇用創出や生活支援の向上を目的とした社会起業家の女性たちとつながったことでネットワークが広がり、現在、ギャラリーで扱う商品は16カ国、24ブランドまで拡大しました。
 とはいえ、いくら素敵なものでもニーズがなければ売れませんから、それを判断していく、いわば実験の場でもあります。今は週2日程度、不定期のオープン。そのときにどんなストーリーを持った商品があるか、何にピンとくるか、その出会いを楽しんで欲しいですね。

白金台にて

女性向け雑誌編集部、企画制作会社等を経て、フリーランスの編集者・ライター。広報誌、雑誌、書籍、ウェブサイトなどを担当。不妊体験者を支援するNPO法人Fineスタッフ。
フォトグラファー。岡山県出身。東京工芸大学工学部写真工学科卒業後スタジオエビス入社、稲越功一氏に師事。2003年フリーランスに。 ライフワークとして毎日写真を撮り続ける。
好きを仕事に