女優 川上麻衣子(52歳)

川上麻衣子「子供ができなくて、養子縁組を考えたこともありました」

女優 川上麻衣子(52歳) 人生って、いろいろある。なんかうまくいない、私、このままでいいのかな……。でも、いろいろあるからこそ楽しい。女優の川上麻衣子さんは、14歳でデビュー。一躍人気女優となりますが、そこにとどまらず、かといってがんばりすぎず。常に豊かな時間を過ごしてきました。子どもが欲しかったけど、できなかった。でも、それってしかたないんじゃない? さらりとそういってしまえる背景には、幼少期を過ごしたスウェーデンの人たちの、自由な生き方の影響があったそうです。

 現在の活動は女優をメインに、ガラスデザイナーの仕事が2〜3割ぐらいでしょうか。私たちの年代が演じられる昼ドラマや2時間ドラマがどんどん減り、連続ドラや大作映画は若い人向けの作品が中心でしょう。海外だとダイアン・キートンのような女優が、50 代、60代のリアルな女性を演じる映画があるんですけどねぇ。なので最近は、お母さん役が増えたかな。

 私、女優の仕事だけだと不安で仕方ないんです。狭い世界なので、世の中が見えてないんじゃないかと思って。「3年B組金八先生」(1979~1980年)に出演していた当時も忙しかったけど、実生活で学校という別の場所があったからバランスが取れていたんです。
でもそれが終わって、27、28歳の頃かな? 2時間ドラマを月に4本ぐらい掛け持ちしていてとにかく忙しかった。撮影が終わって息抜きに呑みに行った時も楽しいし充実感もあったけど、同席するのは同業者ばかり。このままでいいのかな?と。

不妊症ってことになるのかな? 自然にまかせていたら妊娠できなくて…。

 それで結婚をきっかけに、仕事の量を減らしました。30歳の頃です。今だったら全然遅くはない年齢だけど、当時の感覚だと、出産を考えたら今かなと思ったんです。周囲からは「早いうちから妊活をしていた方がいいよ」と言われましたが、自然に任せていたんです。ところが1年以上経っても子供ができなくて。そうなると不妊症ってことになるんですよね?

 真剣に養子縁組を考えたこともありますよ。ところが養親(ようしん)になるのって、いろいろ条件があって、けっこうハードルが高いんですよ。少子化が問題になっていますが、制度が整ってないなとつくづく思いました。

 ただし、子供を授かっても女優を辞めようとは思いませんでした。私自身、何かしていないとダメな性分というのもありますけど、スウェーデンで育ったことも大きいと思います。両親はスウェーデンの文化や社会に影響を受けて、現地留学してインテリアデザイナーになったんですけど、家事の分担は当たり前。一昔前の父親の世代ですよ。女性のみならず障害を持った人も、皆が自立して生きる社会を見てきましたから。

 結局、結婚生活は4年。それからもそれなりに恋をして、46、47歳ぐらいまでは子供を産むチャンスがあるかも? と思ってましたけど……もう体力的に無理でしょうね。

ペットの問題は気になります。命との向き合いの問題ですから

 ガラス工芸との出会いは、ちょうど結婚していた頃。やり始めたら難しくて、奥が深い。終わりが見えないから、飽きっぽい私でも続いているのかもしれません。50歳の節目となった2016年には、私がデザインしたガラス製品とスウェーデンの小物を販売するお店「SWEDEN GRACE」を東京・谷中にオープンしました。

 時を同じくして、猫好きが集まって「にゃなか」というコミュニティーサイトも開設しました。そこで「にゃなか」の「市長」を名のっています。谷中といえば猫の街。私も3匹の猫と暮らしているのですが、殺処分問題やペットショップでの販売など、日本社会のペットとのつきあい方について思うことがあります。命に対する向き合い方の問題ですから。私なりに思うことを発信していけたらなと思っています。

 自分がやりたいことを思い切り出来るのは、体力的にあと10年、60歳ぐらいまでかなと思っています。ただ、最近、店に立っている79歳の母を見ていると、年齢は関係ないのかなとも思います。人と接し、現金を扱う客商売の人たちに元気な人が多いことを実感している毎日です。

好きを仕事に