『コントが始まる』7話「おにぎりとコーヒー」に隠された意味と、それがわからない春斗(菅田将暉)

『コントが始まる』7話。春斗(菅田将暉)、瞬太(神木隆之介)、潤平(仲野太賀)からなる、お笑いトリオ「マクベス」の解散まで1カ月。「兄妹みたいな関係」と言い合っていた瞬太とつむぎ(古川琴音)の関係にも進展が……。里穂子(有村架純)も新たな職場探しに意欲を燃やし、それぞれの人生が動き出します。

『コントが始まる』7話は、前話の潤平(仲野太賀)に続いて、瞬太(神木隆之介)の新しい生活の基盤ができあがる話。
今作は売れないお笑いトリオ・マクベスの解散に関わる若者たちの群像劇だ。新たにやるべきことを見つけた潤平と瞬太は、物語的にはもうほとんどゴールに近いと思う。
春斗(菅田将暉)のバイト先の社長の言葉を借りるならば、幸せは「おにぎりとコーヒー」の中にあって、その大切さを潤平と瞬太は知ることができた。しかし、春斗はこの言葉の意味がわからなかった。

瞬太は自分の気持ちにいつ気付いたのだろう

「絶対に恋愛に発展しない友人」「兄妹みたいな関係」、そう言い合っていた瞬太とつむぎ(古川琴音)に進展があった。引越し先の家具の相談をするもどこか距離を保ち踏み込んでこない瞬太に、つむぎは苛立ちを覚えていた。

態度の変化に戸惑う瞬太は、つむぎの気持ちに気づく。ゲームセンターの「ぷよぷよ」のランキング表を使い「SOFA BLACK」と、伝えることのできなかった家具の好みを伝えた。これにつむぎは「キスガロクモシタワ」と携帯にメッセージを送る。逆から読むと「私も黒が好き」という意味だ。

くっつきそうでくっつかない。キスかと思えば、ソファの話。「ぷよぷよ」や逆さ文字を使ったオシャレなやりとりも、ゆっくりと歩み寄る2人らしくてどこかもどかしい。そんなふわふわとハッキリしない空気の中、瞬太はいきなりキスをして、予告通りに「サプラ~イズ!」とおどけた。

以前から瞬太に好意を寄せているのがみえみえだったつむぎだが、瞬太の気持ちはどうだったのだろう。いや、消去法で選んだとか、自分のことを好いてるからとか、そんな邪な気持ちではないのは重々わかっている。だが、つむぎを好きと自覚したのはいつなのだろうか。きっと「おにぎりとコーヒー」みたいなことなんだと思う。

「おにぎりとコーヒー」

春斗がバイト先の社長(阿部亮平)にさりげなく社員の募集について聞いてみた。しかし、不況により社長の答えは春斗が求めているものではなかった。次に春斗が聞いたのは、社長がいつも食べているおにぎりと甘いコーヒーの相性についてだった。

「合わねえけど、余ってるから仕方なく飲んでんだよ。人生ってそういうもんだろ」

仕方なく、とは言っているものの、この言葉には自分に残された物と向き合う気構えの大切さが隠されている。相性がいいとか、周りにどう見られるかは関係なく、自分にとって大切かどうかを考える。社長は、合おうが合うまいが、おにぎりとコーヒーが好きなのだ。

瞬太にとって、就職先(まだ決まってはないが)の焼き鳥屋もつむぎも、おにぎりとコーヒーと同じだ。お笑いという理想は追えなくても、自分を受け入れてくれる大将(伊武雅刀)の存在には感謝しかない。「年上好き」という自分の思い込みをやめて自分の気持ちと向き合った時に、つむぎはかけがえのない存在だったのだ。

潤平も同じだ。実家と向き合い、家業の酒屋と向き合う。彼女の奈津美(芳根京子)には変に背伸びをせずに、彼女を信頼してありのままを受け入れてもらう。お笑いを失って初めて、近くにある物を受け止める覚悟が決まったのだ。きっと瞬太と潤平は、おにぎりと余った甘いコーヒーを大切に頂くことができるはずだ。

マクベス解散後の新しい居場所を見つけた2人と違って、春斗はやりたいことも大切な人も見つけられないでいた。社長のおにぎりとコーヒーの話について春斗は、「絶妙にピンっとこないすねぇ~」と発言していたが、きっと今自分に何が残っているのか理解出来ていないのだろう。

大切な人については里穂子(有村架純)が候補に上がるが、果たして新しくやるべきことは見つかるのだろうか? 僕は解散しても春斗だけ事務所に残るのではないかと思っている。

マクベス4号の正体は?

とはいえ、潤平と瞬太も、今の生活から離れることに不安を覚えているのは間違いない。3人は人生で1番大切な物をお笑いと位置づけたわけで、それよりも大事なものが一つもなかった。だから一般社会とかけ離れた生活を苦と感じずに楽しめた。

だが、マクベスが解散すると全てを失う。お笑い芸人になる夢だけでなく、お笑い漬けの同居生活もこれでおしまいだ。キャラになりきったジャンケンも、何気ないやりとりもない。怖いのは空虚だ。一度手放してしまったら、2度と戻ることができない。

この恐怖に初めから気付いていたのはきっと瞬太だ。解散が現実味を帯びてやっと他の2人も気づき始めた。だから一緒に生活する時間を大切にし始めた。寝る前に喋るのをめんどくさがっていた潤平は、忙しくてもできるだけ家に戻ると伝える。春斗はガラにもなく売ってしまう車の洗車を名乗り出て、3人は車の思い出ベスト1を発表することにした。

潤平がガス欠になった思い出を語り、春斗が瞬太とのケンカを振り返る。瞬太が自分の思い出を語る番になると、一瞬の間が生まれてしまった。3人は、瞬太が話した終えたら楽しい時間も終わってしまうと感じたのだ。大盛り上がりの中で、奇妙な間だ。涙を誘うようなその空気を、春斗は「別に気にしてませんよ」といわんばかりに、「瞬太は?」と話を振った。

しかし、違和感は拭いきれない。瞬太の思い出話に時間の流れる早さを感じ、車の大切さを思い知らされた春斗は涙を我慢しきれない。里穂子は春斗をマクベス1号と呼んだが、4号はこの車だったのだ。そして1番最初にマクベスから旅立つのも、思い出を共にした車だった。

車と里穂子の行方

車との別れと並行して進んだのが、里穂子の再就職だ。奈津美に転職エージェントを紹介してもらい、新たな職場に意欲を燃やす。中古車屋で元芸人の先輩のマッカラン千葉(鈴之助)は、「中古車を買ってくれる人はその魅力をわかってくれる人。きっといいオーナーが見つかるよ」と言っていたが、これは里穂子の再就職についても同じことが言える。

販売価格28万円の中古車と、28歳で再就職に励む里穂子。これはうまいこと話がリンクしそうな気配だが、里穂子が「私にだって買う権利ありますよね?」とか言い出してあっさり買い取りそうな気もする。そしたら、どれだけマクベス好きなんだよ気持ち悪いなって笑えるけど、3人はちょっと泣くだろう。

企画、動画制作、ブサヘア、ライターなど活動はいろいろ。 趣味はいろいろあるけれど、子育てが一番面白い。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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