「青天を衝け」全話レビュー

『青天を衝け』15話。鼻血&包帯グルグルの草なぎくんに萌え、慶喜素敵エピソード満載

吉沢亮主演NHK大河ドラマ「青天を衝け」。「日本資本主義の父」とも称され、幕末から明治を駆け抜けた実業家・渋沢栄一を主人公に物語が進みます。ようやく「運命の主君」徳川慶喜(草なぎ剛)に仕えることとなった栄一たち。慶喜サマ大好きエピソード満載の15話を振り返ります。

吉沢亮主演、大森美香脚本の大河ドラマ「青天を衝け」第15話。
渋沢栄一あらため篤太夫(吉沢亮)と喜作あらため成一郎(高良健吾)たちが一橋家で働きはじめたのは、京都で新撰組が活発に動き回っていた頃。

長州・土佐藩などの尊王攘夷の志士を新撰組が襲撃した「池田屋事件」など、暗殺・粛正が頻繁に行われており、幕末においてもかなり血なまぐさい時期なのだが、一橋家家中はほっこりエピソード満載だった。
※ややこしいので、本稿では改名後も「渋沢栄一」「渋沢喜作」表記でいきます

慶喜サマ大好きエピソードが次々と

ようやく「運命の主君」徳川慶喜(草なぎ剛)に仕えることとなった栄一たち。慶喜との絡みを期待してしまうが、新入り家臣がそうそう殿様に会えるはずもない。
その代わりの慶喜成分として、周りの家臣たちからさまざまな慶喜エピソードが伝えられた。
前回は泥酔して暴言を吐くなど、闇深な顔も見せていた慶喜ではあったが、家臣たちから語られる慶喜はかなりの愛されキャラ。好かれっぷりがハンパないのだ。

栄一たちに金を貸してくれた面倒見のいい家臣・猪飼勝三郎(遠山俊也)は、花火見物をしようと火の見やぐらの階段を先導していた際、誤って慶喜の顔を蹴ってしまったり、月代を剃る際にカミソリでケガをさせてしまったりと、なかなかのやらかしをしているという。そのたびに切腹を覚悟していたが、慶喜がかばってくれたのだとか。

このエピソードは、のちに渋沢栄一が編纂した『徳川慶喜公伝』からの引用と思われる。
明治維新によって没落した慶喜の名誉を回復することを目的に作られた書籍なので、若干話が盛られている可能性はあるが、この本の中では当時の家臣たちの証言による「慶喜公ステキ!」エピソードが他にも多数紹介されている。

『青天を衝け』における慶喜も、鼻血を出したり、頭を包帯でグルグル巻きにしたりと、ほぼコントの「ケガ人」状態になりながらも、寛大な心で猪飼をかばっており、見ていて「慶喜公ステキ!」とならざるを得なかった(包帯姿の草なぎくんには、さすがにちょっと笑ったけど)。

他の家臣も、慶喜や平岡円四郎(堤真一)が大切にしている農人形を見せてキャッキャとはしゃいでいたりと、自分の推しているアイドルについて語るように「私と慶喜サマ」エピソードで盛り上がりまくり。

栄一たちは、地元・岡部で悪代官から数々の理不尽な仕打ちを受けてきており、封建社会における上下関係を、敵対関係としか見てこなかったはず。
それだけに、家臣たちからメチャクチャ愛されている君主・慶喜に、グッと心引かれていったのではないだろうか。

博多華丸の西郷隆盛登場!

今回、栄一に与えられた任務は、大阪で台場を築く任務にあたっている薩摩藩士・折田要蔵(徳井優)がどんな人物か探ること。
慶喜泥酔事件のせいで、一橋家と薩摩藩の確執が決定的になった直後だけに、かなりピリピリしたミッションだ。

気になったのはやはり、博多華丸演じる西郷隆盛との出会い。
『八重の桜』で吉川晃司が演じていたことを考えれば、まだ違和感はないが、一般的な西郷どんイメージからするとだいぶ線が細い。
しかしこれが意外とハマッていた。豪快でおおらか、九州人だけあって鹿児島弁も堂に入っている。なかなかの西郷どんっぷりだ。

さらに、大阪から京都へと帰る栄一との豚鍋のシーンでは、一般的な西郷どんイメージからは外れたピリッとした姿も描かれた。

西郷から、これからの世はどうなると思うか問われた栄一は、幕府にはもう力がなく、朝廷には兵がいないため、「強い豪速による豪族政治がはじまる」と答える。その際は、幕府に代わって慶喜が国を治めるのがいいと考えているようだ。
この言葉に西郷は敏感に反応する。
「薩摩が治めっとじゃいけもはんは?」
おおらかなだけではない、野心丸出しな西郷どんが垣間見える。
「薩摩の今のお殿様には、その徳はおありですか? おありならそれもよいと思います」

この時期の薩摩藩主は、名君と呼ばれた島津斉彬の息子・茂久(のちの忠義)。しかし実質的に藩の権力を掌握していたのは国父・島津久光(池田成志)だ。
西郷は、斉彬を敬愛していた一方、久光とはまったく反りが合わず、島流しにされたりしている。
斉彬と比べてしまうと腹違いの弟・久光は明らかに小物。「薩摩の今のお殿様には、その徳はおありですか?」という言葉は西郷にグサッと突き刺さる言葉だったはずだ。

西郷も会話の中でちょっと触れていたように、安政の大獄以前は平岡円四郎と橋本左内、西郷隆盛が手を組んで慶喜を将軍にしようと動いていた時期があった。
その際、あまり積極的に将軍になろうとしていなかった慶喜に落胆して、別の形での政権奪取を考えるようになったとも言われている。

ひどいネタバレ・サブタイトル……

豚鍋のシーンで西郷が気になることを言っている。一を聞いて十を知る円四郎について、
「あまい先んこつが見え過ぎる人間は往々にして非業の最期を遂げてしまうとじゃ」
との発言。これは……死亡フラグ!
と思っていたら次回サブタイトルは「恩人暗殺」。『遊戯王』の「城之内死す」なみのひどいネタバレ・サブタイトルだ!
まあ、わりと有名な歴史上の出来事ではあるけど。

ほっこり回だった今回とは変わり、再び血なまぐさいエピソードになりそうだ。

『青天を衝け』全話レビュー第1話はこちら

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1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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