「青天を衝け」全話レビュー

「青天を衝け」7話「お前が欲しい!」恋愛スキル小学生なみの吉沢亮、橋本愛に告白

吉沢亮主演NHK大河ドラマ『青天を衝け』。「日本資本主義の父」とも称され、幕末から明治を駆け抜けた実業家・渋沢栄一を主人公に物語が進みます。7話も前回に引き続き、渋沢栄一(吉沢亮)と千代(橋本愛)の恋愛エピソード。栄一の恋愛スキルは小学生なみ!?

吉沢亮主演、大森美香脚本の大河ドラマ「青天を衝け」第7話。
先週から引き続き、渋沢栄一(吉沢亮)と千代(橋本愛)の恋愛エピソード。しかし栄一のダメダメっぷりは相変わらずなのだ。

恋愛スキル小学生なみの栄一

千代との結婚を認めてもらうため、喜作(高良健吾)が千代の兄・尾高長七郎(満島真之介)に勝負を挑んだという噂が広がり、本人の意志とは関係なく、村では結婚が既成事実化しつつあった。

そんな状況に栄一はモヤモヤするばかり。
千代からほぼ告白みたいなことを言われたときも、やけどを心配され手を握られたときも、「胸がぐるぐるする~!」とアホ小学生のような反応しかできなかったが、今回も小学生のような手で喜作を邪魔をしようとする。
「喜作はいい男だ。しかし、夫となるとどうだんべなぁ~?」
「(千代が)お前と一緒になったらきっと苦労する。お前にはお前の尻をバンバン叩いてくれるような意気盛んなおなごの方が合ってるに!」

小さい男だなぁ、栄一……。
この縁談について千代にさりげなーく探りを入れたところ、
「(家庭の経済事情から)きっとどこか遠くの商売人に嫁ぐことになると覚悟してたんだに。それが喜作さんとこなら安心だ」
という返答。栄一もやせ我慢して「そうだいな、そうだいな、よかった」なんて言っていたが、
「栄一さんとも、中の家の方々ともずっとこうしてお近くにいられるんだから……」
という発言にヒントが隠れてるよ。なぜ気付かない、栄一!?

早すぎるタイトル回収にざわつく

さて、今週の重要なトピックスはタイトルの回収。
これまでサブタイトルが「栄一、○○」に統一されていたのに、突然「青天の栄一」になっていたため予想はついたが、こんなに序盤でタイトル回収しちゃってよかったのだろうか。
人名タイトルはともかく、普通は終盤近くなって「ああーっ、このドラマのタイトルはこういうことだったのかー!」とスッキリさせるのがお約束だろう。前・大河ドラマ『麒麟がくる』は、「いつくるんだ、麒麟?」……と思ったまま最終回を迎えてしまったが。

本作のタイトル『青天を衝け』は、栄一が藍玉を売るため尾高惇忠(田辺誠一)とともに上州、信州を廻っていた時期に作った漢詩「内山峡」の一節から取られている。
前半部分では旅への期待感、山々の雄大さ、道の険しさが描かれ、
「私は青天を衝く勢いで、白雲を突き抜けるほどの勢いで進む!」
ということで山頂へ。後半部分はその絶景を見ながら悟った人生観について記されているのだ。
ドラマ中に現代語訳で引用されていたのは前半部分。漢詩の実写化といった感じで、栄一のモノローグとともに険しい山道〜山頂へ登る。

ドローンの普及以来、空撮映像もだいぶ見慣れた感はあるが、さすがにNHKの本気を感じる超美麗&壮大な映像(4Kで見ればよかった!)。
そりゃあ、こんな場所にきたら悟りも開いちゃうわといった感じだが、ストーリー展開の都合上、山頂で決心したことが「千代に告白する」だったのが……スケール小さい!

確かに、この漢詩を作ったのは千代と結婚する少し前のこと。栄一が国家のため激動の時代に身を投じるのはもうちょっと先なので時系列的には正しいのだが、別にそこでリアリティを追求なくても……。
タイトルにつながる重要なシーンを、微妙な恋愛エピソードとくっつけちゃう必要があったのだろうか。予想に反してこの結婚がドラマ上、メチャクチャ重要なポイントになってくるのかもしれないけど。

「慶喜のような年寄り息子」とは言うけどまだ20歳だよ

江戸パートでは、地震で突然死んだ藤田東湖(渡辺いっけい)に続いて、老中の阿部正弘(大谷亮平)も急死。本作の主軸ではないにしても、幕末の重要人物がサクサク死んでいく。

このふたりはともに徳川慶喜(草なぎ剛)を次期・将軍にと推していた者たち。一橋(慶喜)派の政治力は弱まってしまったが、それでもまだ父・斉昭(竹中直人)、越前守・松平慶永(要潤)、側近の平岡円四郎(堤真一)などなど、慶喜将軍を期待する人たちは目白押しだ。
というのも、現・将軍の徳川家定(渡辺大知)があまりにボンクラだから。異国の脅威が迫る中、どうかんがえても家定では乗り切れそうにない。

実際の家定もボンクラ将軍というイメージが優勢だが、ドラマなどではただボンクラなだけではなく、実は聡明な頭脳を持っていたり、奇行を繰り返すクレイジー将軍だったりと、振り幅大きく描かれがちなキャラだ。

フジテレビ版『大奥』では北村一輝、『篤姫』では堺雅人、『西郷どん』では又吉直樹とクセ強めの役者が演じており、それと比べると本作の渡辺大知はかなり薄味。
ただ、ボンクラかつ猜疑心が強いという、面倒くさそうな将軍っぷりは際立っている。

周囲からの「慶喜をお世継ぎに」の声を、「慶喜のような年寄り息子はいらぬわ!」と突っぱねていたが、阿部正弘が死んだ時点で慶喜はまだ20歳(草なぎくんの顔はだいぶ老けてるが)。「年寄り息子」というほど年寄りではないと思うけど。
まあ家定も33歳なので、「息子にしては年近いよ!」ということだろう。

井伊直弼の太鼓持ちっぷりがたまらない

最後の最後で異様なオーラを放っていたのが、家定と井伊直弼(岸谷五朗)の出会い。
将軍主催の茶会に招かれた井伊は、
「それがしも茶の湯はいささか嗜んでおりまするゆえ……おおうっ、これは珍しい茶菓子!」
と家定お手製の菓子に興味津々。そこで家定は忠誠心を試すかのように、手に持った菓子を直でハムッと食わせる。

「うう~ん、おいしゅうございます!」
餌付けされた犬のような、清々しいまでの媚びっぷりだ。
井伊直弼といえば、安政の大獄で反・幕府勢力を粛正しまくり、桜田門外の変で殺された悪人イメージの強い人物。
ボンクラ将軍と悪人家臣のこの出会いは夢に見るほどのインパクトだった。

ただ、偉い人にはメッチャ媚びる太鼓持ち野郎的な描かれ方をしていた井伊直弼だが、菓子に興味を持ったのは本心からだったと思われる。
地元で穀を潰していた若き日の井伊直弼は、「いささか嗜んでる」レベルではないほど茶道にのめりこみ、著書『茶湯一会集』では茶菓子に対するウンチクも記されている。

今のところ、家定も井伊もボンクラ&悪人というステレオタイプな描かれ方をしているが、井伊の茶人要素をぶっ込んできているあたり、違う側面を描くつもりもあるのでは……とも思わせられる。

今後、慶喜と対立していくことが予想されるふたりだが、従来のイメージから脱却した姿も見られるのかもしれない。

1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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