『コントが始まる』最終回でものすごい奇跡が… 春斗(菅田将暉)の「パーフェクトジャッジ」された人生
『コントが始まる』が終わってしまった。
視聴率はそこまで高かったわけではないが、観ている人には深く刺さるドラマだった。春斗(菅田将暉)が言うところの「100人に観てもらえたらそりゃあ嬉しいですけど、1人の人が100回観てくれることも、もしかしたらそれ以上にありがたい」というドラマだ。
ラストの春斗の就職先には、ものすごい偶然が隠されていた。
エピローグのような最終回
物語としては、9話の時点で決着がついていた。最終回の内容は、視聴者の予想通りどころか、公式の予告通りと言ってもいい。これまでに関わった人たちが解散ライブに集合、ドラマで演じた順番にコントを披露し、特に事件が起きることもなく、たんたんと進行してあっさりと終わった。
ライブ後の打ち上げも同じだ。驚きといえば、ファミレスで里穂子(有村架純)の転職のきっかけとなってた女性2人組が偶然店を訪れたくらい。それだってお互いにお礼を言っただけで、そこから新たな展開なんて生まれない。誰かの感情が爆発して解散を撤回したり、テレビプロデューサーがたまたま観に来て、新番組に抜擢する。そんなことが起きる気配もない。こんなに平坦なドラマの最終回なんて久しく観ていない。
まるでエピローグのような最終回。だが、それがちょうどいい。これまでにマクベスが残した物の大切さと儚さを、マクベスが視聴者と一緒にじっくりと振り返る。そして、やってくる新たな生活を一緒にゆっくり受け入れる。そんな最終回だった。
マクベス解散のタイミング
打ち上げ後のラーメン屋で、瞬太が「マクベスってさ、いつ解散?」と2人に問いかけた。ライブ終了後なのか、打ち上げ後なのか、それとも家に帰った時なのか。潤平(仲野太賀)は「ラーメンを食べ終えた後」としていたが、解散を決めた日こそ、マクベスが解散した日だったように思う。
解散決定以降、マクベスの3人はお笑い芸人としての成長と夢を見ることを辞めた。それぞれ次の生活のために頭を使い始め、潤平は実家の酒屋を継ぐ修行を開始している。潤平が解散ライブについて「終わるってわかってると、ライブも面白いな」と言っていたが、それは安堵からくる余裕だろう。
これまでの潤平は、どれだけウケようともスベろうとも「売れていない自分たち」という意識が頭にあるため、楽しむ余裕なんてなかったのだ。それは3人がお笑い芸人だったからだ。それでも予定されていたライブを行ったのは、事務所の人間やファンのため、自分ではなく相方たちのためだ。
とっくにお笑いトリオとして解散していたマクベスだったが、「3人組」としての解散は、ジャンケンが終わった瞬間だったように思う。
「パーフェクトジャッジ」だった春斗の人生
引っ越しの荷造りをする3人は、冷蔵庫を誰が持っていくかで揉める。春斗はジャンケンゴッド、瞬太はジャンケン戦隊グーチョキパー、潤平は香港から来たカンフーの達人、いつものように自分で作り上げたキャラクターになりきり、冷蔵庫争奪戦に挑んだ。
しかし、何度やってもあいこが続いてしまう。あり得ないほど続くあいこは、3人の「終わらないで欲しい」という願いの結果だ。春斗がパーで勝利した時、お笑いではない空気が流れる。瞬太と潤平は、いつもの勝ち名乗りをあげない春斗を「早くやれよ」と煽るが、寂しげな表情は隠しきれない。
「ブシュー!バンバンバーン!これが神の裁きだ。パーフェクトジャッジ!」
声を振り絞った春斗は、その場で泣き崩れてしまう。この後、瞬太と潤平は部屋を出て行き、春斗は、勝ち取った冷蔵庫と風呂無しのアパートに引っ越すことになる。全力でふざけ続けた3人の青春は、ジャンケンの勝負がついたあの瞬間に終わったのだ。
酒屋を継ぐ潤平、旅に出る瞬太、転職が決まった里穂子、芸能マネージャーとなったつむぎ(古川琴音)。注目された春斗の就職先は、単独ライブで最初に披露したコント「水のトラブル」に登場したような水道修理業者だった。
意外なところからの伏線回収、それを聞いて爆笑する潤平、春斗はどこまでもコント人生を送り続ける。しかし、この転職先は、ただの偶然ではなく、運命だった。
春斗が手に入れた冷蔵庫をよく見てみると、そこには春斗の就職先である「水のトラブルGOGOGO」のステッカーが貼ってあることがわかる。つまり、春人はジャンケンで勝ち取ったことで、就職先である修理業者の存在を認識することができたのだ。
まさにパーフェクトジャッジ。春斗の運命は、ジャンケンゴッドによって定められていたのだ。もし、あの時カンフーの達人やジャンケン戦隊が勝っていたら、春斗は水道修理業者に就職していなかっただろう。なんという運命。こうなってくると、あの「バンバンバーン!」もステッカーを貼っている仕草に見えてしまう。
コントだけではなく、じゃんけんの伏線を回収したラスト。しかし、調べてみると、じゃんけんのキャラクターは役者それぞれのオリジナルであり、脚本の段階では「各自演舞」としか書かれていなかったという。つまり、ジャンケンゴッドもパーフェクトジャッジという勝ち名乗りも菅田将暉によるもので、脚本の範疇ではなかったのだ。
緻密な伏線回収が醍醐味となった「コントが始まる」。そんなドラマでこんな偶然がラストに華を添えるとは、やっぱりコントって、人生ってすごい。
- ■「コントが始まる」全話レビュー
1:傑作確定『コントが始まる』を元芸人ライターが解説「マクベス」が車を使う理由、音楽事務所に所属する必然
2:菅田将暉×仲野太賀×神木隆之介『コントが始まる』2話にびっくり。緻密なストーリーなのにドヤ感がない
3:『コントが始まる』3話。もはや伏線回収とかどうでもいい!有村架純の独白じゃない方のシーンも凄い
4:『コントが始まる』4話。真壁先生「解散した方がいいと思うぞ」の真意を元芸人が考える
5:『コントが始まる』5話。菅田将暉も有村架純も神木隆之介もみんなめんどくさい、だからこそ刺さる
6:『コントが始まる』6話。芸人を辞められる潤平(仲野太賀)と辞められない春斗(菅田将暉)の差を考える
7:『コントが始まる』7話「おにぎりとコーヒー」に隠された意味と、それがわからない春斗(菅田将暉)
8:『コントが始まる』8話。大事なことをすっ飛ばしている春斗(菅田将暉)と瞬太(神木隆之介)
9:『コントが始まる』9話。最終回に向けて大事になってきそうな7つの伏線
10:『コントが始まる』最終回でものすごい奇跡が… 春斗(菅田将暉)の「パーフェクトジャッジ」された人生
『コントが始まる』
日本テレビ系毎週土曜よる10時~
出演:菅田将暉、有村架純、仲野大賀、古川琴音、神木隆之介ほか
脚本:金子茂樹
主題歌:あいみょん『愛を知るまでは』
音楽:松本晃彦
チーフプロデューサー:池田健司
演出:猪股隆一、金井紘
https://www.ntv.co.jp/conpaji/
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