「科捜研の女」2話。マリコと土門のエールで明日からも頑張れる「普通の人なんてどこにもいない」

沢口靖子主演「科捜研の女」第20弾がスタート。1999年に始まり、今回また現行連ドラ最多シリーズの記録を更新しました。沢口靖子演じる榊マリコは科学を武器に、凶悪かつハイテク化する犯罪に立ち向かう法医研究員。“科捜研あるある”が炸裂した2話。どもマリからのエールで明日も頑張れそう!

10月29日に放送された「科捜研の女」(テレビ朝日 木曜夜8時)第2話のテーマは、インターネット上で特技、つまりスキルを売り買いするスキルマーケットだった。

「普通の中年」に対する口コミは散々

廃墟に置かれた棺の中から悪魔のコスプレをした男の遺体が見つかり、ポケットの中から「普通の中年」と書かれたURL入りの名刺が見つかった。そのURLはスキルマーケットのサイトのもので、「普通の中年」なるハンドルネームで登録しているのは悩み相談から家具移動まで何でもやるという触れ込みの男・迫田茂夫(村田雄浩)だった。榊マリコ(沢口靖子)らが迫田に接触すると、彼は依頼主から悩み相談を受けていた。

依頼主 「毎日、やる気が出ないっていうか……。もう、会社辞めちゃおうかな」
迫田「いや、ちょっと待って……!」
依頼主 「辞めないほうがいいですか?」
迫田 「う~ん、それはどうだろう……」
依頼主「何かビシッとアドバイスしてくださいよ!」
迫田「あっ……いや、とりあえず栄養(えいよう)をたくさん摂るとええよう……なんて(笑)!」

もしかしたら「レンタル何もしない人」をモデルにしているのかもしれないが、「レンタル~」のほうは話を聞いたりそばにいるだけで大人気だ。でも、「普通の中年」のスキルマーケットでの評価は散々。「ただのつまらないおっさんだった」「スキルなし」と低評価の口コミばかりなのだ。なんか、村田雄浩ってこんな役ばっかりだな……。

しかも、すぐに犯人候補にされる迫田。被害者は迫田がかつて務めていたアパレルメーカーの同期であり、上司でもあった部長の田部井亘(清水昭博)だった。田部井は会社の金を横領した自らの罪を迫田に被せ、それが理由で迫田は解雇されていたという話。つまり、迫田には田部井を殺す動機があった。

「普通の人なんていない」どもマリからのメッセージで頑張れる

1話に続き、今回も“科捜研あるある”が登場である。迫田と田部井が勤めていた会社に土門薫(内藤剛志)が訪れた際、ちょろっと出てきた女性社員・野元杏子(奥田ワレタ)が実は犯人だった。このドラマはいかにも怪しい人物が犯人ではなく、チョイ役のモブが犯人の場合が多い。まさに、今回はそのパターンだ。
実は、会社の金を横領していたのは田部井ではなく野元。彼女が自分の罪を迫田に被せたというのが真相である。しかし、その行いは田部井に気付かれてしまう。野元は田部井から迫田に罪を被せた理由を問われた。

野元 「部長もいつも言ってるじゃないですか。『本当、しょうもない奴だ』って。あんな超普通で何の取り柄もない人、いなくなっても何の問題もないでしょ?」
田部井「迫田のどこが普通なんだよ。あいつのしょうもないところ、あれはあれで立派なスキルなんだよ」

迫田がしょうもないダジャレを言うことで職場全体がリラックスし、肩の力が抜けてアイデア出しが活発になる。「あいつが空気を変えるきっかけをくれる」と、田部井は迫田を評価していた。
「少なくとも、俺のチームにあいつは必要だったんだよ!」(田部井)

土門「自分では気付かなかった力が、時には人を救うことがあるんだな」
マリコ「普通の人……なんて、どこにもいないのかもしれないわね」

今回のエピソードは多くの人にとってエールになったと思う。私自身、「自分は何もできない人間なのでは?」と落ち込んでしまうときがある。でも、冴えない自分を卑下していても、土門が言うように「自分では気付かなかった力が人を救っている」かもしれない。そう考えると、マリコが言うように「普通の人なんてどこにもいない」と思えてくるのだ。

振り返ると、前回の第1話は「自分では気付かないうちにスポットライトを浴びる人」が描かれていた。1話と2話は内包するメッセージが似ている。自分で自分のことはあまり気付けないけれど、実はどこかで誰かが評価してくれている。どもマリの笑顔を見て、「これからも頑張って仕事しよう」と思うことができた。だから、科捜研は面白い。

“無茶振り女王”マリコのおまいう説教「仕事のためなら人をこき使っていいと思ってるでしょ」

1話で行われた殺人はシンプルな構造だったが、今回のそれはかなり手が込んでいた。電飾のオーダーメイド、コスプレの製作、説教など殺人に結びつかなそうなスキルを持つ者にそれぞれ依頼し、計画を進めていくという方法だ。
まずは、田部井に「ハロウィーンイベントで棺の中から参加者を驚かせてほしい」と依頼をし、コスプレ製作者には肩に斧が刺さった悪魔の衣装を作らせた。イベント会場に向かう田部井を説教が得意な“説教マシンガン”が引き止め、変装した野元が田部井の肩に刺さった斧を盗んで逃走。後を追う田部井にバケツで水を掛け、全身が濡れた田部井が棺に入って電飾のスイッチを押すと感電死するという流れである。……まるで、ピタゴラスイッチのような動線だ!
しかし、コミカルに描いているもののよく考えると怖い。だって、悪意のない人に遠隔操作で殺人の片棒を担がせているのだから。インターネットが発達した現代ならではの犯罪だと思う。許せない!

しかも、野元は田部井のみならず、勤務先の社長・相川洋平(行澤孝)も同じ手口で殺そうとした。そこで、マリコは思いつく。電飾のオーダーメイド、説教など野元が頼った技術を安価で販売し、自分たちに依頼させることで野元の計画を妨害するという作戦だ。

このミッションでの一番の見どころは「説教」を担当するマリコだった。パーティ会場へ急ぐ相川を引き止めた彼女は目の前に相川を座らせ、こんこんと説教を始めた。
「あなた、仕事のためならいくらでも人のことをこき使っていいと思ってるでしょ? 後先考えず突っ走ったら、周りが迷惑するんだよ」
「人にものを頼むときは、相手の都合を考えてから頼むのが筋ってもんでしょ?」

科捜研の無茶振り女王・榊マリコによる壮大な“おまいう”(お前が言うな)説教である。こんな巨大ブーメランはいまだかつて見たことがない。マリコにこき使われてきた所長の日野和正(斉藤暁)や風丘早月(若村麻由美)が説教をするマリコを見たら、果たしてどう思うだろうか?

ちなみに、野元の計画は棺を作った職人の丁寧な仕事ぶりによって潰された。
「私が『イケオジ家具職人』です。そのランプには完璧な絶縁加工を施させていただきました」
颯爽と現れたのは宇佐見裕也(風間トオル)だ。ハンドルネームとは言え、「イケオジ家具職人」と自分で言っているのが笑う。だいぶ勇気のいるネーミングだ。でも、イケオジを名乗っていいだけの顔面力が確かに風間トオルにはある。物凄く複雑なトリックを描いていたのに、最終的に宇佐見が全部持っていってしまった感。さすが、風間トオルだ。

次回はこちら:沢口靖子「科捜研の女」料理の鉄人、格付けチェック、海原雄山、激辛アミーゴ……盛りだくさん3話

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
福井県出身。平成生まれ。キモ癒しイラストレーター&YouTuber。 YouTubeチャンネル「ワレワレハフーフーズ」
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