「科捜研の女」沢口靖子と大久保佳代子の対比と久しぶりのどもマリ。歴史の重みが科捜研の強みだ

沢口靖子主演「科捜研の女」第20弾がスタート。1999年に始まり、今回また現行連ドラ最多シリーズの記録を更新しました。沢口靖子演じる榊マリコは科学を武器に、凶悪かつハイテク化する犯罪に立ち向かう法医研究員。刑事・土門薫(内藤剛志)とのつかず離れずの関係“どもマリ”も見どころのひとつです。シリーズ20の1話に登場したのは、大久保佳代子。「マリコになれなかった女」の意味とは。
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10月22日に「科捜研の女」(テレビ朝日 木曜夜8時)がスタートした。同一人物による主演、同曜日、同時間帯放送として最長記録を保持するこのドラマも、なんと今回でSeason20。オープニングは主人公・榊マリコ(沢口靖子)を過去→現在の流れで振り返る映像だ。リアルな歴史の重みは長寿シリーズの醍醐味である。

“科捜研あるある”とともに登場した大久保佳代子

「あの~、私、人を殺しました。10年前に人を殺しました。逮捕してください」

今回のゲストは大久保佳代子。彼女が演じる星名瑠璃は10年前、非常勤講師として勤めていた女子校の生徒・河合範子(里吉うたの)を山岳部の登山練習中に死なせてしまったと自首してきた。早くも“科捜研あるある”の登場だ。最初から怪しい言動をしている者は大抵が真犯人ではなく、それどころか悲しみを背負って生きている人が多い。つまり、瑠璃はそういう女性なのだろう。

でも、なぜか彼女は早く逮捕されたがった。その理由は時効だ。自首したものの殺意を否定している瑠璃。時効が成立されるまでに過失致死で逮捕され、罪が確定すれば、後になって傷害致死や殺人罪で裁かれることはない。今回の土門薫(内藤剛志)は鋭かった。
「つまり星名瑠璃、あんたは早く逮捕されることで罪状ロンダリングを狙った、違うか!」(土門)

いろんなロンダリングがあるものだ。「罪状ロンダリング」なんて初めて聞いたよ! でも、腑に落ちない。そもそも、彼女が自首しなければ事件そのものが蒸し返されなかったはず。黙っていればよかったのだ。

快楽殺人者に土門がサンドウィッチマンばりのツッコミ

ここで浮上するのは、範子の当時の担任教師・渡辺順吾(池下重大)。最近、瑠璃に会っていた渡辺は「10年前に範子を殺害した」と告白されたというのだ。
「信じられませんでした! 彼女が河合さんを殺したなんて。そしたら、証拠を見せると言い出して。『これが凶器だ』と、埋められたザイル(登山用のロープ)を見せられて」(渡辺)

語るに落ちたり。京都府警と科捜研はザイルを凶器だと考えていなかったし、瑠璃も同様だ。しかし、渡辺が凶器と口走ったザイルには被害者の血液が付着していた。真犯人は渡辺である。

それにしても、自分の罪の証拠になりかねないザイルを、なぜ渡辺は10年も処分しなかった? それを問われた渡辺は「できるはずないだろ、(河合を)殺した大切な記念品を!」と声を荒げた。
「渡辺さん、意味がわからない。わかりたくもないが。逮捕だ」(土門)

渡辺は殺人に使ったザイルを「記念品」呼ばわりする変態、シリアルキラーだった。1話目からこれかよ……。そんなヤバい男に対峙した土門が「ちょっと何言ってるかわからない」とサンドウィッチマンばりにツッコミを入れた姿は、カッコ良さ爆発。しかし、これほどの快楽殺人者がよくここ10年は再犯しなかったものだ。もしかしたら、瑠璃のことは殺すつもりだったのかもしれない。

大久保佳代子にあて書きしたような脚本

ここで残る謎は、なぜ瑠璃が自首をしたかということ。再会した瑠璃と渡辺は男女の仲になった。そして、瑠璃は渡辺に結婚を迫った。すると、渡辺は「自分は殺人犯だから結婚できない」と告白した。
「そのとき思ったんです。重過失致死や業務上過失致死なら、もうすぐ時効だって」(瑠璃)
だから、自分が身代わりで自首して渡辺の罪をきれいにする。そして、自分が執行猶予になれば結婚できると計算したのだ。さすが現代社会の教師、刑法に詳しいな……。

こういう役どころを演じる大久保には定評がある。昨年5月放送「緊急取調室」(テレビ朝日)でも男の身代わりに罪を被る役を演じていたし、大久保自身も数々のクズ男との交際歴は有名だ。まるで、大久保にあて書きしたような脚本だった。

1話タイトル「マリコになれなかった女」の意味とは?

瑠璃は自分の名前にコンプレックスを抱いていた。
「星名瑠璃って、まるで美人女優が演じる映画の主人公みたいですよね? でも、私にスポットライトが当たったことなんて今までの人生で一度もなかった」

渡辺が犯人だとわかった後、瑠璃はこう語っている。
「私、身代わりで自首しようと思ったとき、なんか自分の人生が急にドラマチックになった気がして、今までの人生でやっと自分にスポットライトが当たったと思ってしまって……」
取調室でマリコと会ったときには「あなたの名前も映画の主人公みたい」と言った彼女。スポットライトへの渇望が言葉からこぼれ落ちまくっている。

実は、教師時代の瑠璃は生徒から人気を集める先生だったらしい。だが、本人はそれに気付いていなかった。
「スポットライトはきっと、浴びているほうは気付かないのかもしれないわね」(マリコ)
そう語るマリコの後ろ姿を見ながら笑顔になる土門。「お前にはスポットライトが当たってるぞ」と言わんばかりだ。

マリコと瑠璃は、2人とも自分にスポットライトが当たっていることに気付いていない。でも、少なくともマリコは光を求めて一線を越えるようなことはしない人だ。日々を必死に生き、気付かないままにスポットライトを浴び続ける。
この日の「科捜研の女」のタイトルは「マリコになれなかった女」だった。そういうことか。

次回はこちら:「科捜研の女」2話。マリコと土門のエールで明日からも頑張れる「普通の人なんてどこにもいない」

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
福井県出身。平成生まれ。キモ癒しイラストレーター&YouTuber。 YouTubeチャンネル「ワレワレハフーフーズ」
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