「科捜研の女」5話、牛を巻き込んでイチャつくどもマリ。牛から「人間はめんどくさい」と思われていそうだ

沢口靖子主演「科捜研の女」第20弾がスタート。1999年に始まり、今回また現行連ドラ最多シリーズの記録を更新しました。沢口靖子演じる榊マリコは科学を武器に、凶悪かつハイテク化する犯罪に立ち向かう法医研究員。今回のキーパーソンは牛のマリリン。牧場をめぐるほっこりした恋物語が実はそうでもなかった5話を振り返ります。

11月19日放送「科捜研の女」(テレビ朝日 木曜夜8時)5話のサブタイトルは「牛が見た殺人」。来年は丑年だからということだろうか? ちなみに、今回登場した牛の名前はマリリン。マリコ meets マリリンである。

スポイトを使うように乳搾りしようとするリケジョ・マリコ

5話でわかったのは、京都の科捜研は妙に牛に強いということ。殺人事件の現場にあった被害者のバッグに何かの痕跡が残っており、それを見た瞬間、榊マリコ(沢口靖子)は「これは、恐らく牛の鼻よ」と一発で言い当ててしまうのだ。どうしてわかったの……。

凄いのはマリコだけじゃない。科捜研にはなんと牛の鼻紋のデータベースまで存在する。なんで、そんなものが登録してあるの! 鼻紋は人間にとっての指紋にあたると思うが、ということは前科持ちの牛が登録されていたりするのだろうか……?

今回の事件の被害者は、高級ホテルチェーンの経営者・柊恵子(中原果南)。彼女の靴裏に付着していた餌から「みくら牧場」の存在が浮かび上がった。しかも、牧場長・三倉秀一(夙川アトム)は恵子の小学校時代の同級生である。牧場へ行くと、三倉は乳搾り体験会を実施中。そこで、彼は子どもたちにクイズを出していた。「牛乳がどうして白いのかわかる人?」と三倉が出題すると、熟考する子どもたちを尻目に「はい!」と乱入したのはマリコだ。

マリコ 「牛乳に含まれるタンパク質のカゼインや脂肪球の粒子が外からの光を受けて乱反射することにより白く見えるんですよね」
三倉 「正解です」

お前が答えるんかい! 子どもたちに答えさせない、何でも知ってるマリコ。前シリーズ(シーズン19)10話の寿司学校体験入学回でもそうだったが、質問コーナーがあると何でも回答しちゃう自己顕示欲を抑えられないマリコ。っていうか、そんな正解なら子どもたちには答えられないよ! とにかく、マリコと科捜研は牛に強い。

ただ、そんなマリコも牛の乳搾りは苦手だった。思わず、5本の指で乳を力強く鷲掴みにしてしまうのだ。親指と人差し指で乳房の根元を抑え、中指、薬指、小指の順番で下に搾り出すのが正しいやり方である。
「なるほど、スポイトの使い方とは違うんですね」(マリコ)
乳搾り体験をスポイトと比べて感想を言うあたり、安定のリケジョっぷりだ。ここで搾ったミルクは、やはりルヴァンパーティに出るのだろうか?

モッツァレラチーズ作りに風丘先生を付き合わせる料理下手のマリコ

恵子はみくら牧場を買収しようとしており、マリリンの牛舎内からは血液反応が見つかった。これらの状況証拠から三倉による殺害が疑われたが、彼にはアリバイがある。事件当日の夜、牧場から車で数分の直営カフェでモッツァレラチーズを作っていたというのだ。
だが、このアリバイが崩れ始める。直営カフェの店長・佐川瑛美(秋元才加)はマリリンのミルクで作った生クリームが好評だったため、牛舎に行って勝手にマリリンを乳搾りしていた。つまり、瑛美が抜け出している間の三倉のアリバイはない。というか、この牧場はどれだけマリリンに頼った経営をしているのか……。

しかし、同カフェのモッツァレラチーズを作るには三倉が付きっきりでいる必要がある。マリコと土門薫(内藤剛志)は、当日作られたチーズは実は前もって作られたものなのでは? と予測した。
事件当日のチーズからクエン酸が検出されたため、マリコと風丘早月(若村麻由美)はモッツァレラチーズ作りにチャレンジした。クエン酸を使って乳酸発酵する時間が短縮できるか実証するためだ。っていうか、なぜか一緒に料理させられる羽目になる風丘先生。明らかに解剖医の仕事の範疇を逸脱している。しかし、マリコの計量の仕方が完全に実験のそれなので、風丘先生がいるだけで安心感は桁違いだった。マリコが1人でチーズ作りをするだなんて、考えただけでもハラハラする。
結果、“時短モッツァレラチーズ”を作れることは無事に証明できた。このチーズも、やはりルヴァンパーティに出るのか?

高級腕時計を見逃さない、意外に目利きの土門

実は、三倉は脱税していた。三倉がつける腕時計が高級時計だと土門が気付き、調べてみると150万円もする代物と判明したのだ。それにしても、土門に腕時計の目利きができるとは……。実は、彼もこの腕時計を狙っていたか? 意外な趣味だ。人間には二面性がある。それは三倉も同様だ。
「あんなピュアな顔してこんな高い時計つけてるなんて、なんか悲しい」(亜美)
あんなにマリリンへの思いが強く、恵子から「言い値で牧場を買う」と言われても頑として譲らなかった割に、金には汚いんだな……。

科捜研あるある「殺害された被害者は実はいい人だった」

今回もモブキャラが犯人だった。恵子を殺した犯人は、序盤にチラッと登場した副社長・滝川和彦(奥井隆一)だったのだ。恵子は牧場の買収を中止し、支援をすると言い出す。説得しようと牧場まで追いかける滝川だったが、恵子は頑なだ。
「従えないなら辞めてちょうだい。あなたの代わりなんていくらだっているんだから」(恵子)
いつも口がへの字で「への字社長」と呼ばれるほど冷徹だった恵子。普段からのパワハラがトリガーとなり、とどめの一言で逆上した滝川は恵子を殴打して殺害した。しかも、凶器は三倉が脱税して購入した金塊を隠し入れていた容器。金塊の重さで一撃必殺になってしまったのが不運だ。

悲しみのステージは続く。恵子が買収から支援に方向転換した理由は恋心。恵子はずっと三倉が好きだったのだ。小学生の頃と同じように牛を育てる三倉を見て、恵子は考えを改めた。しかし、顔を合わせるとつい口喧嘩してしまう2人。不器用な恵子はマリリンに相談した。
「ねえ、マリリン。私、これから三倉君に告白する。ちゃんと好きって言う」(恵子)
突然のツンデレ! 殺害された被害者が実はいい人だったという着地点は“科捜研あるある”の1つである。恵子はへの字であり、そしてほの字でもあったということ。

でも、救いがないのは支援される必要もないほど密かに三倉は儲かっていたとう事実だ。カフェの黒字で牧場の赤字を補填せずに、高級腕時計を買うような男だし……。
脱税、パワハラ、牛乳泥棒、殺人者と、善人がどこにもいなかった今回の一件。脱税が発覚して牧場とカフェは危機を迎えるだろうし、殺人事件によってもうホテルは営業できないはずだ。ほっこりの恋物語に着地しようとしているものの、よく考えると事件の内容が悲惨すぎる。

エンディングはマリコと土門がマリリンと戯れる、恒例のどもマリデートだった。ここで、土門はマリリンに愚痴った。

土門 「マリリン、聞いてくれるか? 俺は榊という女にいつも振り回されててな。あいつ、一体どういう子どもだったんだろうな?」
マリコ 「ちょっと土門さん! マリリン、どう思う?」

恵子と三倉の恋物語に便乗し、マリリンを介してイチャつくどもマリ。色んな人に相談されるマリリンは「人間ってめんどくさいな……」と思っていそうだ。

次回はこちら:「科捜研の女」6話。干物だらけの60分「この後、干物は科捜研でおいしくいただきました」

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
福井県出身。平成生まれ。キモ癒しイラストレーター&YouTuber。 YouTubeチャンネル「ワレワレハフーフーズ」
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