沢口靖子「科捜研の女」料理の鉄人、格付けチェック、海原雄山、激辛アミーゴ……盛りだくさん3話

沢口靖子主演「科捜研の女」第20弾がスタート。1999年に始まり、今回また現行連ドラ最多シリーズの記録を更新しました。沢口靖子演じる榊マリコは科学を武器に、凶悪かつハイテク化する犯罪に立ち向かう法医研究員。設定の情報量の多さが半端ない3話。旨辛料理対決の結末は意外にもスイートだったようで……。

リアル激辛好きの鈴木亜美と海原雄山激似の男が登場

11月5日放送「科捜研の女」(テレビ朝日 木曜夜8時)の第3話が始まると、いつもの科捜研とは異なる光景が飛び込んできた。勤務中に榊マリコ(沢口靖子)らがテレビを見ているのだ。この職場は仕事中にテレビを見てもいいのか……。

このとき、生中継されていたのは“旨辛料理コンテスト”なる番組。同コンテストに出場するチャレンジャーの人選に、また捻りが効いていたのだ。京料理の達人・向山秀人を演じるのは大浦龍宇一で、激辛料理店の店主・堺田茂樹役は波岡一喜。大浦と波岡と言ったらドラマの犯人役の常連である。

さらに、人気料理ブロガー・長谷川希美を演じる鈴木亜美はリアル激辛好きとして有名。Instagramでは「激辛アミーゴ」というアカウントを開設しているし、「有吉ゼミ」(日本テレビ)出演時には激辛料理に“マイ七味”をかけて完食し、辛さに強すぎてその後二度と呼ばれないという遠慮なさを見せている。「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」(NHK)が激辛唐辛子のキャロライナ・リーパーを扱った際も彼女はゲストだった。つまり、アミーゴは筋金入りなのだ。

キャスティングだけではない。同コンテストの司会は「料理の鉄人」(フジテレビ)でリポーターだった太田真一郎だし、審査員を務める料理評論家・富永栄吉(伊庭剛)の格好は完全に『美味しんぼ』の海原雄山だ。そして、堺田の格好は、まるっきり「蒙古タンメン中本」の白根誠社長である。シチュエーションに関しても一筋縄ではいかない。そして、コンテストでは富永が堺田の料理を厳しく批判していた。これがまた、海原雄山VS 蒙古タンメン中本に見えてくるから心配になる。

とんでもない情報量の多さで始まった3話は、富永が自宅リビングで何者かに殺害されるという形でサスペンスへと突入していった。

料理への愛が深い3人が犯人とは思えなかった

富永を殺した犯人は、コンテストを主催した大手コンビニチェーンの担当者・百瀬亮典(国木田かっぱ)だった。コンテストで辛さを抑えるために堺田が用意した牛乳を、向山は豆乳に入れ替えていた。それに気付いた富永は不正の公表を宣言! しかし、すでに優勝者・長谷川の料理の商品化を進めている百瀬はそれを阻止せんと富永と揉み合いになり、富永を殺害してしまったという顛末である。
今回も“科捜研あるある”が発動だ。このドラマはいかにも怪しい人物は犯人ではなく、チョイ役のモブが犯人の場合が多い。途中まで百瀬は完全なるチョイ役だった。しかし、それ以外にも出場者が犯人ではないと確信させる材料はあった。

「(本わさびは)チューブのものとは全く違います。うちは辛味と言えばわさびですから。あまり強烈なものは繊細な味付けを消してしまうので」(向山)
「俺の料理のテーマはずっと旨辛だった。『辛い、辛い』って食べてもらうには『美味い、美味い』って感じさせなきゃダメ。辛さの刺激を求める何倍も美味さを追求する努力をした」(堺田)
2人とも辛さと美味さに対する姿勢は真摯でプロだ。そして、長谷川は向山が辛子と大根で作った涙巻きにすぐ気付き、「わさびの香りが抜けている」と的確なダメ出しをしていた。辛ければいいというわけじゃない。単なる辛さのチキンレースではなく、3人とも料理への愛は深かった。

旨みを理解する料理人たちとは違い、消費者に対する誠実さのない百瀬は辛さしかわからない男だったのだろう。

科捜研で唐突に「格付けチェック」が始まる

向山が長谷川に出した涙巻きの中身はわさびではなく、食用色素で着色した辛子だった。しかし、マリコが出したこの鑑定結果に橋口呂太(渡部秀)と蒲原勇樹(石井一彰)が異を唱える。すると、呂太、蒲原、宇佐見裕也(風間トオル)の3人が目隠しした状態でわさびと辛子を試食し、どちらがわさびかを当てるゲームがスタートした。というか、鑑定を疑っていない宇佐見がなぜ参加させられてるのか……?

しかもこれ、やってることは完全に「芸能人格付けチェック」(テレビ朝日)そのままなのだ。浜田雅功ばりに「わさびだと思ったらAの部屋、辛子だと思ったらBの部屋に行ってください!」と呼びかけたくなってしまう。結果、この問いに正解したのは“一流鑑定官の宇佐見さん”ただ1人だった。
「さすが、違いのわかる男!」(日野所長)
筆者は、極貧ゆえに道端の雑草やたんぽぽを食べていたという幼少期の風間トオルのエピソードを不意に思い出してしまった。宇佐見の“神の舌”は雑草で培われたのかもしれない。

「お前が辛党でも俺が守る」

エンディングは、屋上で語らい合うマリコと土門薫(内藤剛志)のツーショット。恒例の“どもマリトーク”だ。

土門「お前がそんなに辛党だったとはなあ。辛さに強い人間は脳に伝達される危険信号をキャッチしにくいってことじゃないのか?」
マリコ「いけない?」
土門「ハハハハ。いいよ、もう(笑)」

マリコが辛さに強い理由を最後に解き明かしてくれた土門。そして、「いくら危険な目に遭っても俺が守る」という意味が含まれたであろう土門の笑顔。辛さがテーマの3話とは思えない、スイートなエンディングだった。

次回はこちら:「科捜研の女」4話。悪夢にびびる非科学的なマリコに萌える


ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
福井県出身。平成生まれ。キモ癒しイラストレーター&YouTuber。 YouTubeチャンネル「ワレワレハフーフーズ」
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