「科捜研の女」6話。干物だらけの60分「この後、干物は科捜研でおいしくいただきました」
11月26日放送「科捜研の女」(テレビ朝日 木曜夜8時)6話のタイトルは「マリコvs干物美女」。と言っても、榊マリコ(沢口靖子)が対峙するのは俗に言う干物女ではなかった。
明らかに怪しい店名「草谷(くさや)カフェ」
京都市内のトンネルで有名カメラマン・梶木譲士(栄信)の遺体が見つかった。また、梶木は死の直前にシロギスという魚の干物を食べていることがわかった。事件当日、梶木は人気モデル・水沢キヨラ(矢島舞美)のバースデーパーティーに参加して写真を撮っていた。
パーティーの料理に干物があったかを問うマリコに対し、「私がそんな乾いたものを食べるわけないでしょう」と苛立つキヨラ。当日のパーティーの料理を担当した「草谷カフェ」の草谷ゆり子(長野里美)も「魚は出していない」と証言した。
被害者の名前が「かじき」なのはまだいいが、関係者の名前が「くさや」って、そんなフラグあるかよ! 確実に干物を作っていそうな響き。明らかに事件に関係がありそうだ。
まず、被害者の胃に残っていた干物はどこで食べたものなのかを突き止める必要がある。マリコは「京都じゅうでシロギスの干物を売っているお店を全部あたりましょう」と言い出した。ものすごい労力を注ぐローラー作戦だ。「必ず“干し”を挙げる」という決意か? 前回5話では牛の鼻紋のデータベースが存在した科捜研だが、さすがに干物のデータベースはなかったようだ。っていうか、関係があると言わんばかりの「草谷カフェ」を最初に調べるべき。これはミスリードなのか……?
干物好きをひた隠すモデル像に物申す
魚屋の防犯カメラにキヨラがシロギスを買う姿が映っていた。マリコたちはキヨラの家を家宅捜索する。
キヨラは「ミス・ジューシーフレッシュ」なる異名を持ち、潤いを売りにするモデルだ。当然、「あるわけないでしょ!」と“アンチ干物”を主張した。しかし、そうは問屋が卸さなかった、部屋じゅうを探し回ったマリコは「……あっ! 干物を作るには乾燥が大切。家に中で乾燥させられる箇所がもう1つだけあります」と、冷蔵庫の前に立った。「やめてーっ!」と絶叫するキヨラに構わず扉を開けると、とんでもない量の干物を発見! これが、本当に凄い量なのだ。漁師じゃないんだから。というか、食品を探しているんだからマリコも真っ先に冷蔵庫を調べろよ! あと、冷蔵庫にこんなに干物があるのにどうしてキヨラは強気の態度でいられたのだろう? とにかく、「干物美女」とは干物女のことではなく、自分で山ほど干物を作る美女のことだった。
取り調べでキヨラはこう語っている。
「干物を作ってるなんて知られたくなかったのよ……」
なんでだよ! 干物が好きなんて意識が高そうでいいじゃない。カルシウムも摂れるし、モデルにとって有益でしかない。意外性も面白いし、干物ガチ勢だなんて好感度爆上がりだ。
干物をバカにしている高飛車女とか、いつの時代のモデル像か? なんかこういうところ、『科捜研』は10年くらいセンスがずれるときがあるんだよな……。
「干物」を軸にした見事な会話劇
「草谷カフェ」オーナーのゆり子は育児放棄されていた幼少期のキヨラと梶木を見かね、育ててきた女性だった。食事(干物など)を与え、優しく見守る親代わり。その甲斐あってキヨラはモデルとして、梶木はカメラマンとして成功した。
しかし、近年の梶木は仕事が減っており、仕事を脅し取るため関係者のスキャンダルを隠し撮りするようになった。それをキヨラとゆり子は咎めるが、梶木は聞く耳を持たない。
ゆり子 「譲士が撮りたい写真、いつかまたみんなにわかってもらえる! だから、風に当たって待つの。ほら、干物みたいに」
梶木 「干物なんか貧乏臭くて大っ嫌いだったんだよ!」
キヨラ 「あんたみたいに腐った男、絶対許さないから……!」
干物を軸にした会話劇が見事だ。「あんたみたいに腐った男」とは、梶木が干物になり切れずに腐ってしまったことを暗喩している。まあ、「干物みたいに」と励まされても、「干されてしまわないか?」と逆に不安になりそうだが……。
ライターで干物を炙って食べる被害者
梶木の胃に残っていたシロギスは、彼が自作した干物だった。そして、梶木を殺した犯人はキヨラが所属するモデル事務所オーナーの若葉アユミ(飯島順子)だった。アユミはパーティーで薬物を売りさばいており、その現場を梶木に撮られていた。梶木は写真をネタにアユミに金をゆすったが、直前で心変わりする。
「思い出したんだよ、俺の本当に撮りたいものはこんなものじゃない。だから、このフィルムは警察に渡す」(梶木)
そして、梶木は干していた干物をライターで炙って食べ始める。なんでこんなときに突然、干物を食べたのか……? 薬物の売人を脅しながら、自分は“炙り”をしているし。そもそも、暗室で干物を作るカメラマンってどんな面白キャラなのだろう。
しかし、梶木の人生を振り返ると笑えない。「干物を作る」という行動は「初心に帰って人生をやり直す」という彼の決意を表しているのだから。
ただ、いかんせんタイミングが悪かった。改心したシチュエーションが売人の前である。背中を見せて干物を食べていたら、その隙に後ろから殴って殺された。なんだか、干物を食べるのが怖くなってくるな……。
せっかく心を入れ替えたのに、救いのない最期を迎えた梶木。辛い着地点だ。過去に行った罪は消えないということ? 彼は今までのツケを払わされてしまったのかもしれない。
ただ、キヨラとゆり子の言葉で梶木の心が揺れたのは事実。干物を軸にした3人の会話劇を改めて振り返ると、複雑な気持ちになる。
最後はみんなでもぐもぐタイム
今回、1時間のうちに何回「干物」というセリフを聞いただろうか? マリコの次くらいに干物の出演時間が長い回だった。よく、干物だけでこんなに引っ張ってこられたものだ。
しかし、まだ問題は残っている。大量に買い出した干物をどう処理する? もちろん、食べるのだ。スタッフがではない。科捜研が、である。最後はみんなでもぐもぐタイム。言わば「この後、科捜研でおいしくいただきました」状態だ。
見ているだけで白飯が進む内容だった6話。前々回は激辛ラーメンで、前回はミルク、そして干物と、ここ最近は飲み食いばかりしている科捜研。土門薫(内藤剛志)が不在で寂しくもあったが、同僚たちとワチャワチャするこんなエンディングもたまには悪くない。
次回はこちら:「科捜研の女」そろそろメンバー入れ替え?思い出に浸りすぎ7話
- ■「科捜研の女」シーズン20全話レビュー
- 1:「科捜研の女」沢口靖子と大久保佳代子の対比と久しぶりのどもマリ。歴史の重みが科捜研の強みだ
2:「科捜研の女」2話。マリコと土門のエールで明日からも頑張れる「普通の人なんてどこにもいない」
3:沢口靖子「科捜研の女」料理の鉄人、格付けチェック、海原雄山、激辛アミーゴ……盛りだくさん3話
4:「科捜研の女」4話。悪夢にびびる非科学的なマリコに萌える
5:「科捜研の女」5話、牛を巻き込んでイチャつくどもマリ。牛から「人間はめんどくさい」と思われていそうだ
6:「科捜研の女」6話。干物だらけの60分「この後、干物は科捜研でおいしくいただきました」
7:「科捜研の女」そろそろメンバー入れ替え?思い出に浸りすぎ7話
8:「科捜研の女」8話。マリコ「バクテリアは可能性そのもの。適切な環境で培養すれば、可能性は花開く」
9:最終話「科捜研の女」凍りつくマリコの怖い目、不死身の土門が「どもマリ」の信頼関係を強固に
「科捜研の女」
テレビ朝日 木曜夜8時
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、中尾亜由子(東映)、谷中寿成(東映)
監督:田﨑竜太、森本浩史 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
主題歌:藤川千愛「ありのままで」(日本コロムビア)
出演:沢口靖子 ほか
https://www.tv-asahi.co.jp/kasouken20/
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