「科捜研の女」そろそろメンバー入れ替え?思い出に浸りすぎ7話

沢口靖子主演「科捜研の女」第20弾がスタート。1999年に始まり、今回また現行連ドラ最多シリーズの記録を更新しました。沢口靖子演じる榊マリコは科学を武器に、凶悪かつハイテク化する犯罪に立ち向かう法医研究員。7話は、回想シーン多めの壮大に怪しい雰囲気を振り撒いた、いつもとひと味ちがうストーリー展開が話題になりました。そろそろメンバー入れ替え?それとも……。その裏側にあったものとは?

12月3日放送「科捜研の女」(テレビ朝日 木曜夜8時)7話で、監察医・風丘早月(若村麻由美)の娘で大学生の亜矢(染野有来)が科捜研を訪れた。実はこのとき、科捜研は風丘に秘密である“鑑定”を行っていた。。

亜矢 「これは何の事件の鑑定なんですか?」
マリコ 「それはまだ言えないの」

差し入れより鑑定報告書が大切なマリコ

勤務時の科捜研メンバーの阿吽のやり取りを見た亜矢は「絆って感じ」と、そのチームワークに感心した。

亜美 「まあ、うちの科捜研が今のメンバーになってから5年経つからね」
マリコ 「でもね、亜矢ちゃんのお母さんとは12年よ」

年数を強調するセリフに嫌な予感がする。誰かが卒業する前振りに聴こえてしまうのだ。しかも、榊マリコ(沢口靖子)を師匠と慕う亜矢が訪れている。5年も不動のメンバーのままだったということは、そろそろ入れ替えのタイミングと言えなくもない。亜矢が入り、誰かが抜けるというフラグ……。まあ、このドラマは毎シーズン、思わせぶりな“離脱するする詐欺”が仕掛けられるのだけれど。

亜美 「そういえば、風丘先生ってその頃(12年前)から差し入れ持ってきてくれたんですか?」
マリコ 「どうだったかな……」

差し入れより鑑定報告書のほうが大切なマリコは、細かいことを覚えていない。だって、数カ月前に差し入れしてもらった最中のことは完全に忘れていたから。その最中をきっかけにマリコは事件解決の糸口を掴んだのに、である。

涌田亜美(山本ひかる)は、風丘の差し入れが多くの事件の解決のヒントになってきたと説明する。そこから始まったのは回想シーン。風丘に関するエピソードを振り返るわけではない。風丘の差し入れが解決の糸口になった事件を振り返るのだ。
この回想シーンが異常に長かった。延々続いた。恐らく、60分の尺の3分の2は回想シーンに費やしていたはずだ。あまり思い出に浸られると「やっぱり風丘先生はいなくなる?」と、不安になってしまうのだけど……。

不穏な雰囲気が漂いまくるも……

予告を見た時点から、今回は不安だった。風丘が何か事件に巻き込まれ、ピンチに陥ると匂わしまくっていたからである。事実、不穏な瞬間は幾度も訪れた。

花束を持った宇佐見裕也(風間トオル)が踏切が開くのを待っていると、黒ずくめのフードを被った男が背後から近付いてくる。危険人物ではないのか? 「宇佐見、うしろ!」と叫びそうになったが、結局、この男は何もせずにいなくなった。
風丘が歩いていると、猛スピードの車が勢いをつけて彼女の背後に迫り来る。「風丘先生、うしろ!」と思わず叫びたくなったが、特段、何も起こらなかった。ただ、通過しただけなのだ。歩行者の横を走るのに減速どころか加速したあの車は、一体何だったのだろう? 亡き夫・洋二(石井英明)からもらった風丘のペンダントの紐は意味ありげにほどけていたし。

それらと並行して描かれたのは、マリコが一心不乱に取り組む“鑑定”だ。明らかに買いすぎの山盛りキウイから1つを選び、成分を調べ、それをハンマーで粉砕するという乱暴な工程。物騒である。バックに流れるBGMは意味ありげに不穏だし。マリコは何をしている?

ガッカリしないでほしい。別に何でもなかったのだ。マリコが取り組んでいたのは、鑑定ではなくケーキ作り。鈍器を振り下ろしていたのは、キウイを叩くことでゲル状にしてキウイケーキ(キウイソース添え)を作っていただけだ。宇佐見が深刻な表情で花束を買ったり、カラスの鳴き声の下で日野和正(斉藤暁)がトランペットを練習したり、橋口呂太(渡部秀)がせっせとカードにメッセージを書き込んでいたのは、風丘のバースデイをサプライズで祝うためだった。
料理下手のマリコは調理器具をうまく扱えない。でも、鑑定道具は使える。そんな彼女は科学の力でケーキを作ろうと試みた。だから、鑑定しているように見えたのだ。リケジョを拗らせた、マリコらしい発想!

結果、科学的アプローチで攻めることでマリコは料理下手を克服する。彼女は見事にキウイケーキを作り切ったのだ。ただ、盛り付け方は相変わらずひどい。全然美味しそうじゃないのだ。せめて、お皿に盛ればいいのに……。ここら辺が、いかにもマリコだ。
そうか。調理時に流れていた物騒なBGMは、マリコの料理スキルの危うさを表現していたのだろう。そもそも、いつも遺体を調べる機械でケーキを作るのも不穏すぎるのだけど。そういった諸々が裏返しになり、不穏の匂わせになったということ。

コロナを憂慮した苦肉の策?

今回のマリコはいじらしかった。キウイケーキ作りに全力を注ぐことで、12年分の差し入れのお返しをしようと頑張ったのだから。7話は1時間掛けて壮大に怪しい雰囲気を振り撒きながら、同時に風丘先生の誕生日を祝う特殊回だった。

そういえば、マリコはオープニングでこんなことを言っている。
「今日は私たちにとって忘れてはいけない日」
呂太と亜矢が着ていた服装に注目してほしい。呂太は半袖のTシャツを着ており、亜矢は腕と脚を露出するほどの薄着である。ちなみに、風丘先生の誕生日は8月18日。つまり、この回だけ8月の設定だったのだ。どうりで、日野所長のトランペット練習シーンは、暑さから画面がゆらゆらしていたもんな……。

東映ホームページに7話のこぼれ話が掲載されていた。
「今回の脚本は、コロナで先々何が起こるか分からない(ロケ撮影ができなくなるかもしれない)ので、科捜研で“事件”が起きる話を作ったらどうなるのだろう……という着想からスタートしました。(中略)幸いこれまで、全員健康で順調に撮影できており、杞憂といえばそうだったのかもしれず、手前味噌ではありますが、スタッフにとっては蓄積すべき一つの経験になった第7話でした(&はやくこんな心配をしなくていい状況に戻れますように……)」

言ってしまえば、コロナで撮影できない事態を見越しての苦肉の策のエピソードだったのだ。それを、季節外れのこのタイミングに入れ込んだということ。ロケの規模は最小限に収めるから犯罪は起こらないし、ということは科捜研なのに誰も鑑定しない。残ったのは、風丘に対する12年越しの感謝の念だけである。

でも、事前の予告では風丘の亡夫・洋二が取り上げられるのでは? と煽りに煽っていた。洋二が白骨化して見つかった12年前の事件が本題になると多くの人が思っていたはずだ。何しろ、予告映像では「夫の失踪から19年 風丘早月の不都合な真実!?」のテロップに「あのときとは違う結果が出るかもしれません」というマリコの声が被さっていたのだから。
こちらとしては、思いっ切りスカされた感がある。「あのときとは違う結果」とは、白骨遺体が洋二とは別人ということではなかった。マリコがちゃんとキウイケーキを作れたというだけの話だ(しかも、蓋を開けたらまるで総集編みたいな作りだったのも参った)。

前シリーズもそうだったけど、風丘主役回に限って不吉な煽りをするのはやめてほしいんですけど……。

8話の嵐の前の静けさだった?

気になることが1つだけある。7話のタイトルは「風岡早月、罠に堕ちる」だった。「罠」がバースデイパーティーのサプライズを指しているのは理解できる。では、「堕ちる」は何を意味している? 今回は嵐の前の静けさで、次回のエピソードへの壮大な前振りという気がしないでもないのだ。

7話は、風丘先生に電話をかけた「プリンセス・トシコ」こと新海登志子教授(高橋ひとみ)の意味深な表情のアップがエンディングだった。これも、また匂わせなのかしら……。いや、今夜放送の8話からがようやく本編突入なのかもしれない。

次回はこちら:「科捜研の女」8話。マリコ「バクテリアは可能性そのもの。適切な環境で培養すれば、可能性は花開く」

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
福井県出身。平成生まれ。キモ癒しイラストレーター&YouTuber。 YouTubeチャンネル「ワレワレハフーフーズ」
ドラマレビュー