有村架純×林遣都「姉ちゃんの恋人」6話。観覧車での真人の独白「うまくしゃべれない、ごめん」まで4分13秒

有村架純主演のドラマ「姉ちゃんの恋人」。ホームセンター務めの桃子(有村架純)は両親を亡くし、弟3人を養う”肝っ玉姉ちゃん“。同じ職場の配送部にいる真人(林遣都)に恋をし、とうとう告白! しかし真人はかつて自分が有罪になった事件について話し、付き合えないことを伝えます。二人の恋はこのまま終わってしまうのでしょうか‥‥。

保留、反対、ばか担当。桃子を取り巻く人々の思い

過去に起こした事件について桃子(有村架純)に告白し、「付き合うことはできない」と伝える真人(林遣都)。しかし桃子は諦められない。

真人が犯した過去の犯罪という壁にぶち当たった桃子は、さまざまな人々との対話を通じて、ますます真人への思いを強くしていく。かんたんには解決できようもない悩みだからこそ、反応はさまざまだ。ただ全てのシーンで、彼女が周りから深く愛されているのが伝わってくることだけは共通している。

●保護司として真人と接していた菊雄:保留
5話で真人の母、貴子(和久井映見)にわざわざ伝えに行ったときと変わらず、桃子にもどうしていいかわからないと伝える菊雄。そんな菊雄に桃子は「私が自分で決めるから、おじさんは私が決めたこと応援して」と伝える。

●桃子の親友、みゆき(奈緒):反対
みゆきは真人の前科を知り、まっすぐ桃子を見て「反対する」と言う。「こういうとき、親だったら絶対反対するの」「その人を説得するには、納得させるには、幸せになるしかない」。二人の友情が伝わってくる。

●同僚、日南子(小池栄子)と沙織(紺野まひる):(内容は知らないけど)応援
桃子が何に対して落ち込んでいるかも、ましてや真人の過去についても知らないまま、「2種類の仲間がいると幸せになる。なんでも打ち明けられる人と何も聞かずにばかやって一緒に笑ってくれる人」と話す日南子は「私たちはばか担当だ」と桃子を囲む。

桃子の3人の弟たちは真人の過去を知らないまま、真人と偶然出会う。屈託なく自分たちのことを話し、「姉ちゃんのどこが好き?」と問う3人のシーンには心癒される。

真人、4分超えの独白

真人は悟志(藤木直人)に「仕事を辞めるな」「絶対に逃げるな」と諭され、再び桃子と話し合うことに。桃子に誘われ、観覧車の中で自分が犯した罪について、恋人が犯されそうになって夢中で相手に向かっていったこと、しかし恋人は取り調べで襲われたと言わなかったことなど、真実を話す。

観覧車での真人の独白、話し始めてから「うまくしゃべれない、ごめん」と話し終えるまで4分13秒。この間、目に涙を溜めながら、感情を時折こぼしながらも静かに話し続ける真人。無言で聞く桃子。二人の役者にとって、きっとこのシーンは難しく、かなり気合の入ったものだったろう。そして見事に演じきり、真人と桃子のまっすぐさと桃子の強さが伝わってくるいいシーンが生まれた。

二人が乗ったであろう葛西臨海公園の観覧車は調べたところによると1周17分かかるそう。桃子の願いを聞き入れて真人が独白し、二人がお互いの気持ちを改めて確かめあっても十分間に合う。

「コーヒーを渡す」というあるある

冒頭、桃子と真人の様子を目撃した悟志は真人に膝カックンしたり、フォークリフトを汚したりして和ませようとする。真人に「ふつうのできないですかね。温かくて甘い缶コーヒー買ってきて『飲めよ』みたいな」という言葉にこたえて、別の日に悟志が真人に渡したコーヒーは「鬼甘」。

5話のラストでホームセンターの倉庫で真人から初めて彼の罪について聞いたとき、真人は甘いコーヒーとブラックとの2缶を用意し、桃子に選ばせた。そこで桃子は甘いコーヒーを選んだ。6話で菊雄と話すとき、桃子はいつものコンビニでブラックと甘いコーヒーとを買ってきて、ブラックを菊雄に渡した。確かに甘さに助けられることはある気がする。姉ちゃんのために弟たちが作ったかぼちゃコロッケも甘みがありそうだ。

「コーヒーを渡す」というドラマにありがちのシーンが、あえて繰り返し用いられ、互いを思い合う表現になっていた。そんななかで、桃子とみゆきの会合ではブレずに500mlのストロング缶なのが好ましい。

真人は晴れて「姉ちゃんの恋人」になった。ここから何が二人を待っているだろうか。

■「姉ちゃんの恋人」

1:有村架純×林遣都「姉ちゃんの恋人」1話。コロナ禍の今と似ている!2020年の私たちのささやかな幸せ

2:有村架純×林遣都「姉ちゃんの恋人」2話。家族だからこその気持ちと反対の会話

3:有村架純×林遣都「姉ちゃんの恋人」3話。誰かに気にかけられる、その瞬間があることが幸せ

4:有村架純×林遣都「姉ちゃんの恋人」4話「年を重ねたことを劣化とかいいやがって、冗談じゃないから」

5:有村架純×林遣都「姉ちゃんの恋人」5話。聞いてほしいこと、言えないこと。草野球シーンは林遣都の腕の見せどころ

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
漫画家・イラストレーター。著書に『ものするひと』『いのまま 』など。趣味は自炊。
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