「危険なビーナス」2話。怪しい吉高由里子。「私の正体は誰でしょう?」と問いかけているみたい
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- 前回はこちら:「危険なビーナス」1話。ややこしい家系図を説明します、顔と名前だけでも覚えていってください
第2話も視聴率12.5%と好調の「危険なビーナス」。複雑な家系図や、主人公・伯朗(妻夫木聡)を取り巻く人間関係の説明など、ややこしかった第1話から一転、第2話はVS勇磨(ディーン・フジオカ)というシンプルな構図だ。これから1話につき1人ずつ焦点を絞る方向で進んでいくのだろうか、かなり見やすくなった。
何が驚いたかって、原作にないドラマオリジナルシーンの分量だ。2話だけ見たら9割近くがそうだったんじゃないだろうか? 原作の核になる部分は大切にしながらも、既読者も未読者もまとめて混乱させてしまおうという気概を感じる。ドラマオリジナルキャラの“鍵を握ってます”感も凄まじい。
ちなみに原作者の東野圭吾はドラマ化について、「(原作には)面白いピースがたくさん詰まっています。それらをオモチャにしていろいろ遊びたかったのですが、小説ではミステリ要素を重視したため泣く泣く我慢をしました。その分ドラマの制作陣、役者さんたちには、思い切り好きなように遊んでもらいたいです」とコメントをしている。
そもそも吉高由里子が怪しい
タイトルの「危険なビーナス」とは、伯朗を振り回す楓(吉高由里子)のことだ。伯朗の弟・明人(染谷将太)の妻を名乗ってはいるが、その正体は謎。1話のラストで伯朗は楓を信じると決意したばかりなのに、その決意がグラグラ揺らぐ。
牧雄(池内万作)がエスカレーターから何者かに突き落とされるも、楓は不自然なほどに冷静だった。すぐに矢神家へ向かい、止まっていた車のボンネットの温度をチェックし、誰かが降りたばかりだと推理する。他にも、なぜか連絡が取れない時間も多いし、勇磨の車にGPSを付けろと伯朗に指示した時なんて「日本の警察の捜査では違法らしいんですけど、お義兄様は一般人ですよね」と含みを持たせる。わざと伯朗に「私の正体は誰でしょう?」と問いかけているみたいだ。
ドラマオリジナルキャラたちも怪しすぎる。看護師・杏梨(福田麻貴)は、寝たきりの康治(栗原英雄)の前で医師の隆司(田口浩正)と何やら不倫らしき動き。ただ単に隆司と妻・祥子(安蘭けい)の関係を壊す役なのか、それとも隆司を通して遺産を狙っているのか? どちらにせよ、重要な鍵を握っている感がすごい。こちらもオリジナルキャラである矢神家使用人・君津(結木滉星)もまぁ怪しい。牧雄が突き落とされた時も直前まで車を使っていたし、ただ話を円滑に進めるためのキャラとしては、存在感が強すぎる。公式ホームページの人物紹介には、「波恵(戸田恵子)の指示で楓の素性を探っている」とあるが、どうもそれだけには止まらなそうだ。
ディーン・フジオカと妻夫木聡が並ぶ違和感
嫌味なくらいに豪華な作りで、家具ひとつひとつが高級感に溢れる矢神家。幼少時代を過ごしているにもかかわらず、伯朗はそんな矢神家が似合わない。連れ子ということで邪険にされた過去もあり、矢神家にいるときの伯朗はいつも伏し目がちで、動物病院にいる時よりも声の通りが悪い。
一方の勇磨は、矢神家がよく似合う。背筋を伸ばして低い声を押し出すように発声、俺はこういう家で育ったという自負が見える。そんな勇磨は、伯朗にとって“ザ・矢神家の人間”だ。矢神家へのコンプレックスの正体は、ほぼ勇磨と言ってもいいくらいだ。一方、勇磨からすると伯朗は、見下して楽しいオモチャといったところだろう。伯朗は勇磨を「お前」と呼んでいたが、それはせめてもの抵抗だ。
そんな2人なので、ツーショットが絶妙にチグハグしている。今話は2人での会話のシーンが多かったが、伯朗は独り言のように喋り、勇磨は命令するように語りかける。勇磨が広い部屋を大きく使うのに対して、伯朗は全くうごかない。舞台演技と映像演技を別々にやっているくらい噛み合っていない。2人の溝の深さと、伯朗の劣等感が垣間見えるやりとりだ。
しかし、そんな2人が、騙し騙され、決着かと思ったらまだ裏があって…というスリリングな展開を繰り広げる。戦うと決めた伯朗は、矢神家で縮こまっていた時とは違い、しっかりと勇磨の目を見て言葉を放つ。これは第1話のラストでも見せた姿、楓を守る時にだけ見せる姿だった。
オリジナル展開だらけの「危険なビーナス」。東野圭吾が言う小説では表現できなかった部分がどのシーンなのか、それともそれすらも飛び越えて新しいストーリーを生み出しているのか。ある意味、原作既読者の方がハラハラする第2話だった。
次回はこちら:「危険なビーナス」3話。ディーン・フジオカの前で妻夫木聡が乙女に?大っ嫌いなのに本音が出ちゃう
■危険なビーナス
1:「危険なビーナス」1話。ややこしい家系図を説明します、顔と名前だけでも覚えていってください
日曜劇場「危険なビーナス」(日曜21時~)
原作:東野圭吾 『危険なビーナス』(講談社文庫)
脚本:黒岩勉
音楽:菅野祐悟
プロデューサー:橋本芙美、髙丸雅隆、久松大地
演出:佐藤祐市、河野圭太
主題歌:back number 「エメラルド」
https://www.tbs.co.jp/kikenna_venus/
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