怒れる女

「怒れる女」は良い女?厄介な女?道行く人に聞いてみた【怒り14】

女性たちが「怒り」とどう向き合っていくべきかを、様々な視点から考えてきた特集企画「怒れる女」。でも、実際のところ皆さんがどう思っているのかを調べるには、やっぱり「街へ出る」のが一番!ということで今回、telling,編集部は都内各地の繁華街で、ミレニアル女子たちにインタビューを行いました。

●怒れる女 14

「怒り」について街頭でインタビュー

「怒り」と「女」は混ぜるな危険、取り扱い注意のシロモノ――なんて思っていませんか。
女性はヒステリックにならず、怒りをあらわにせずにコミュニケーションをとることが吉とされる風潮は、会社や、夫婦・恋人関係、友人間でもよくみられること。

telling,特集企画「怒れる女」では、「怒り」について専門家や著名な方へのインタビューを行いました。例えば、実業家でファッションデザイナーのハヤカワ五味さんは「女性が意見を言うとヒステリックだと決めつけてしまうラベリングに怒っている」と答え、精神科医の水島広子先生からは「女性の怒りとの向き合い方」についてお話をうかがいました。

では、街ゆく女性たちはどうでしょう。やっぱりみんな、怒りを我慢し、ゆる~くうま~く、この世を“賢く”生き抜いているのでしょうか。
表参道、渋谷、東京、新宿駅の街頭でアンケートを行いました。

撮影:阿部章仁

お話を伺ったのは20人。「怒り」についての質問への答えは、こんな結果でした。

●「最近怒った相手は?」(複数回答可)   

友人:2名
上司・部下:6名
夫・パートナー:4名
親:2名
他人(知らない人や業者など):3名
いない:4名

●「怒りを我慢したことはある?ない?」    

ある:16名
ない:4名

●「怒れる女・怒らない女 どちらになりたい?」  

怒れる女:9名
怒らない女:9名
それ以外:2名

「怒りを我慢したことがある?」の質問には、やっぱり多くの方が「ある」と回答。最近ついた部下に怒りたいけど、チームの空気が悪くなるから我慢したという20代の看護師の方や、同居しているお母さんに一言言いたいのをこらえたという方も……「円滑な解決」に向けてぐっとガマンをする方は多いようです。

そんな中、「怒り?我慢しないですね」とキッパリ言い切ったのは20代のAさん。アルバイト先の職場のボスの仕事ぶりに一言物申したそう。

飲食店でアルバイトをしているんですが、上司に怒りを感じました。管理が穴だらけで、そのとばっちりが全てバイトにきていたんです。言いたいことを我慢したくないタイプなので、他の社員からも見えるグループLINEで、自分が思っていた違和感を伝えました。(20代・女性・飲食店アルバイト)

結果は大成功。管理体制を見直し、上司は以前よりもきちんと部下たちに指示を出してくれるようになったそうです。怒りを表に出すことに躊躇はないのか聞いてみると、こんな答えが返ってきました。

自分の仕事ぶりを信じてる。一生懸命仕事をしている自信があるから、間違ってることや怠けてる人には怒りたい。「怒れる女」でありたいです。我慢したらストレスが溜まるじゃないですか。(同上)

めちゃくちゃかっこいいファイティングポーズ!

インタビューに答えてくれたのは左の女性。一緒にいた同僚も、彼女の行動を称賛!

みんなホントは怒りたい?

「怒れる女」と「怒らない女」どちらになりたい?このちょっぴりいじわるな質問は意外な結果に。どちらとも9票で同数でした。

みんなもっと穏やかに解決してきたいのかと思いきや、実は心の中では「堂々と怒れる人になりたい」と思っている人も少なくないのかもしれません。

一方、「怒らない女」になりたいという20代の看護師の女性は以前、とにかく怒り狂う女性の上司の下で働いていたことから、自分が教える立場になったらそうなりたくないと強く意識している、と話してくれました。

私の周囲では、看護師は30代半ばをすぎると、周りから見て「一緒に仕事するのがめんどくさい」と言われる人が出てくるようになります。経験を重ね、中堅になると、慣れからか威張ってしまう人も少なくない。年次が上がった彼女たちに注意できる人もいません。私も疲れていると後輩にキツく当たってしまうこともあり、そういう時は失敗したなと思うこともあります。 私自身は「怒らない女」になりたいですね。本当に理不尽なことをされたら、怒ることも必要だとは思います。でも、ただキーキー言うのではなく、感情表現プラス言葉で伝えられる人になりたいです。感情論だと、フェアに話せないし、物事が解決しないと思います。(20代・女性・看護師)

他にも、怒りに関する様々なエピソードが集まりました。新入社員のころに上司から執拗なセクハラ発言を受けていたという20代女性が話し手くれた体験談は……

「君みたいなかわいい子がいると取引先の人は喜ぶ」などと言われても「そうなんですね~」と笑顔で受け流していましたが、ある日、上司から会議室に呼び出され「2人きりで会いたい」と言われたのを断ると、「思わせぶりな態度をとっている君が悪い」と逆ギレされました。(20代女性)

怒りを我慢したことで、より悪い結果につながってしまう。考えさせられるお話でした。

一方で、「もう怒ることはやめた」という声も。

「もう怒ることはやめました。ムダなケンカに労力を使いたくない(笑)。言っても変わらないなら、黙ってやり過ごすのがいい。わかってもらおうと思うのは、もうやめました。(40代女性)

「あきらめの境地」といったところなのでしょうか……。

「怒り」の感情を肯定的にとらえてうまく使いこなしていこうとする人、あるいはなるべく怒らず、穏やかに生きていくことを良しとする人。怒りとの付き合い方は、皆さん千差万別でした。

撮影:阿部章仁

「怒らない」は賢いこと?

脳外科医の加藤俊徳先生はtelling,の取材に「怒りは高確率で『負』である」と解説しています。怒りの持続は脳を非効率な状態にしてしまうため、直接的にその怒りを爆発させるのではなく上手にアウトプットすることが必要だそう。

「むやみに怒らない女が賢い女」、ということみたい、だけどだけど……。少しずつ空気が変わってきたこの世界の中で、今、「怒る」ことで相手の心を動かしたり、よく言ってくれたと誰かに感謝されたり、ちょっとだけ物事が良い方に進んだり、「怒りの力」を信じてみたい気持ちもある。扱いづらくて、厄介で、やけど注意で敬遠されてる、そんな怒りの、それでも時に頼もしくて、底力があって真っ直ぐな部分に助けてもらいながら、不器用に一歩一歩進んでいきたいと思ったインタビュー調査でした。皆さんは、どう考えますか?

大学卒業後、芸能事務所のマネージャーとして俳優・アイドル・漫画家や作家などのマネージメントを行う。その後、未経験からフリーライターの道へ。
明治大学サービス創新研究所客員研究員。ミリオネアとの偶然の出会いをキッカケに、お金と時間、行動について真剣に考え直すことに。オンライン学習講座Schooにて『文章アレルギーのあなたに贈るライティングテクニック』講座を開講中。
フォトグラファー。岡山県出身。東京工芸大学工学部写真工学科卒業後スタジオエビス入社、稲越功一氏に師事。2003年フリーランスに。 ライフワークとして毎日写真を撮り続ける。
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