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外車ディーラーに訊く「車を買いに行ったら夫にだけセールスされた」問題【怒り12】

Twitterで先頃、夫婦で一緒に“妻の”車を買いに行ったら、ディーラーが夫にしかセールスせず「軽視されたと感じた」といったツイートが話題になりました。実際の商談の場は、どんな雰囲気なのでしょうか。ディーラー側からの意見は? 外車ディーラーのYさん(32歳・男性)に、話を聞きました。

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外車ディーラーはお客さんと仲良くなりたい

Twitterで先頃、夫婦で一緒に“妻の”車を買いに行ったら、ディーラーが夫にしかセールスせず「軽視されたと感じた」といったツイートが話題になりました。実際の商談の場はどんな雰囲気で、ディーラー側にはどんな事情や意見があるのでしょうか。外車ディーラーのYさん(32歳・男性)に聞いてみました。

まず、僕たちは、できるだけ車を売り、そして、お客さんといい関係を築きたい。
そう思って仕事しています。
というのも、日本車と違って外車は故障が多い高級外車のディーラーは、点検やトラブルで年に何度も会わなくてはいけない。だから、目先の売上だけを見るのではなく、お客さんと良い関係を築くことが大事だと考えているディーラーは多いと思います。お客さんのご夫婦のうちどちらかを軽視しようなんて、絶対に思ったりしない。

そんな前提があった上でも、ご夫婦で来店された場合、男性側に話しかけることが圧倒的に多いです。
それには、自分の経験に基づいた理由があるんです。

外車ディーラーが夫にまず話しかける理由

どうして、高級外車を売る際に、夫側に話しかけるのか。それには2つの理由があります。

理由1:妻に話しかけるとキレる夫がいる

奥様に話しかけると、「オレが稼いだ金で買うのに、妻に説明するとは何事か!」と怒る方、今までに何人も遭遇しました。奥様に話しかけると、自分が蔑ろにされたと感じるタイプの方なんでしょうね。女性に対して差別的な態度だと感じて「奥様は大変だろうな」と思いを馳せたりしますが、キレられては商談になりません。旦那さまを立てるという行動をとっておけばこの地雷を避けることができるんです。

また、似たケースで、奥様に話しかけると「色目を使うな」と言われるケースも多々あります。ですので、不要な誤解を受けないよう、特に自分と同世代のご夫婦には、男性側メインでお話するように気をつけています。

理由2:男性の方が車が好きなケースが多い

車好きな女性はもちろんいらっしゃいますが、今まで自動車を販売してきた中で、車の魅力に興味を持ってくださるのは男性の方が多い。なので、商品の魅力をより理解してくれると予想される男性側に説明をすると、より商品の良さが伝わりやすい。結果、理解度が深まって買ってもらえる可能性が上がるんです。

また、車に興味のない奥様に「俺はこの機能を理解できて、使いこなせてすごいだろ」とドヤ顔で気持ちよさそうに説明したいという男性も多いです。だから夫婦でご来店された場合は、男性側にメインで話しかけた方が「経験上無難」なんです。
奥様に説明をして、旦那様が拗ねるというリスクの方が圧倒的に高い。

「ひっかけ問題」で試されているように感じる

「男は車が好き」「説明は男にするもの」「男の方が稼いでいる」
その固定観念が、僕の中にあることは認めます。そして、それが今のままではいけないということも、理解できる。
ただ、僕たちは車を売るために、お客さんの気持ちをできるだけ損ねたくないという気持ちが強いです。
だから、今までの経験に則って接客をしてしまう。それが、僕のセールススキルの低さと言われればそれまでだけど、夫婦や友達でも言わなきゃわからないことはたくさんあるのに、初めて会った車のディーラーにマジョリティではない価値観を見抜いてくれと求めるのは難易度が高すぎると思う。なんか、ひっかけ問題を出されて、試されているように感じます。

偏見はない方がいいのはわかっています。でも、自分がちょっと理解されてないなと思ったら、わかってもらうまで、伝える努力もしてほしいなと。

例えば、僕が自分の化粧水を買うために、妻と一緒にデパート化粧品のカウンターに行くとしたら、はっきりと理解してもらえるまで「世間とは違うかもだけど、化粧水を買いたいのは僕なので、説明をお願いします」と伝えると思います。

世の中の偏見があることを理解して、勘違いされる側がしっかりと伝える。それは酷かもしれないけれど、今、世の中の価値観が変わっていく途中段階ではそれが求められると思うし、そうすれば誰も傷つかずにすむと思うんです。
もちろん、聞く耳を持たないような、固定観念から抜け出せないダメなセールスもいるので、そういうヤツには鉄槌食らわせていいと思いますが。

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